世界最大級のオンライン・エンターテインメント・サービスを提供するNetflixは、企画・製作をするNetflixシリーズ「地面師たち」が配信中。
この度、監督・脚本を務めた大根 仁のオフィシャル・インタビューが到着した。
そうですね。2017年に自分の活動範囲内である五反田の土地に絡んだ事件が起こって、あの土地のことは随分前から僕も知っていたんですけど、何というか土地が持つ妙な磁場というか、魔力のようなものを感じていたんです。事件が起きて連日警察やマスコミが集まっている様子も、報道やニュースもチェックしていて、まずはそこで「地面師」というものに興味を持つようになりました。その後も自分なりにいろいろ調べたりもして、でもその時はドキュメンタリーとしては面白いけど、フィクションにするにはハードルが高いとも思っていたんですよ。で、そのあと2019年に出版された、今回の原作でもある新庄耕先生の小説を読んで、まずは単純にすごく面白い、そして実際に起きた事件や犯人たちのフィクション化・エンタメ化が的確というか、これだったら映像化できる!って思って。それで、すぐに企画書を作って、出版社に連絡して、新庄先生と担当編集の方とお会いして……原作が面白いのはもちろんなんですけど、映像化するのであれば、ストーリーの展開や、アクションなど映像的な見せ場を増やしたり、エピソードや登場人物を加えるなど、僕なりのアイデアを熱弁させていただいて、「大根監督に、すべてお任せします」と納得してもらったんです。ただ、そこから……実は何人か、知り合いのプロデューサーの方々に軽く話を持ち掛けてみたのですが、大手の映画会社やテレビ局では、作品の内容的になかなか難しいところがあるみたいなんですよね。それこそ「映像化不可能」みたいな感じになっていたんですけど、そのときにNetflixのプロデューサーにお会いして、企画の内容をお話ししたら「すごく面白いし、うちにピッタリの企画だと思います。やりましょう!」ということになって。そこからNetflixのドラマ・シリーズとして、本格的に動き出したという流れです。
原作小説自体、かなり面白いものでしたが、それを映像化するにあたって、どんなことを意識されたのでしょう?
これは、以前からぼんやりと狙っていたことなんですけど、いつかドラマでも映画でも、ジャンルを混ぜ合わせたものを作りたいと思っていて。ミクスチャーというか、今回の『地面師たち』も、いわゆる「犯罪もの」ではありますけど、詐欺師グループにだまされる大手デベロッパー側の描写が、実はポイントなんじゃないかと思ったんです。原作小説のヒントになった五反田の事件が発覚したときに、「何で大企業が、そんな犯罪者集団にだまされて何十億も取られちゃったの?」ってことを、みんな思ったじゃないですか。そこをしっかり描けば、大企業で働くサラリーマンの世界も同時に描けるんじゃないかと思って。さらには事件を追う警察側も描ける。犯罪もの・企業もの・警察ものって実はこれまで手を出してこなかったんですけど、この題材だったら自分なりのミックスができるかもしれない、観たことのないドラマができるかもしれない。あと、そもそも「地面師詐欺って、どういう犯罪なの?」という、ちょっと知的好奇心がくすぐられるようなところがあるじゃないですか。そういう意味で、僕が尊敬する伊丹十三監督の『マルサの女』のような「知られざる世界のノウハウもの」でもあると思ったんです。
大根監督は、本作の脚本もご自身で書かれていますが、そこではどんなことを意識されたのでしょう?
そもそも僕は、プロットみたいな大きな流れをあらかじめ作らないで、いつもいきなり脚本を書き始めるんですよね。台詞を書かないと、キャラクターが見えてこないから。それと同時に、頭の中で撮影も編集もしているし、音楽もつけていて……それはつまり、自分も「視聴者」ってことなんです。だから、いち視聴者である自分が飽きないような、ドラマならではの展開はもちろん、各エピソードの引っ張りみたいなものも、すごく意識しながら書いていきました。あとはここ数年、自分がいちばん惹かれる映像メディアって海外配信ドラマなんですよね。映画やテレビドラマでは越えられない壁を、容赦なく越えるというか壊してると言ってもいいくらいの作品がいくつもあって。それは映像表現はもちろん、キャラクター描写やレイティングとか尺の長さとかもあるんですけど。だから全世界配信ということも含めて、“自分が観たい日本発のNetflixドラマ”ということはすごく意識しました。しかもこの題材って地面師詐欺っていう特性とか、サラリーマン社会とかも含めてめちゃくちゃ日本独特というか、ドメスティックですよね。「サンクチュアリ -聖域-」も「忍びの家 House of Ninjas」もそうですけど、せっかく世界のいろんな国で配信されるなら、日本で作るNetflix作品は、海外のヒット作をトレースしたようなものではなく、日本独特のドメスティックなものを描くべきというのもずっと思っていて。
そうですね。綾野くんと仕事をするのは今回が初めてだったんですけど、彼の出演作を見ていくと、かなり幅が広いというか、特に最近はどの作品でもすごくきめ細かい芝居をしている印象があって。「芝居」とか「演技」って、言ってしまえば「嘘」じゃないですか。いろんな役を演じる中で、その嘘のつき方がすごく上手いというか、僕が好きな感じの嘘のつき方だったんですよね。そこがイコール詐欺師っぽいというか(笑)。というのも、今回の「拓海」というキャラクターは、ひとりの人間ではあるけれど、地面師グループの「交渉役」として、いろんなキャラクターを演じる役です。また、過去の出来事によって、素の自分を失った人でもあって……その過去も演じなければならないという感じで、ひとつの作品の中でいくつものキャラクターを演じ分ける、すごく難しい役なんですけど、今の綾野くんだったら、きっとそれができるだろうと。
豊川さんに関しては、もう直感で、絶対合うだろうと思って。豊川さんと言うと、多くの人はドラマ『愛していると言ってくれ』とか映画『Love Letter』を思い出すかもしれないけど、僕の中での豊川さんは世間で言う「トヨエツ」ではなくて、豊川さんを初めて観た北野 武監督の映画『3-4X10月』の感情表現が一切無いヤクザの組長であり――あと、原田眞人監督の『TUFF タフ』っていうVシネマの傑作があるんですけど、その作品で豊川さんが、とんでもないアウトローの役を演じていて(笑)。僕の中での最初の刷り込みはそれらなので、豊川悦司をナメるんじゃないよ、実はとんでもなくヤバいんだぞ!ということはずっと思っていて(笑)。なのでハリソンのような単なる詐欺師や知能犯ではない、人智を超えたような、マッドで多層で、全く底が見えないキャラクターは絶対合うだろうと。綾野くんと豊川さん以外の地面師グループのメンバーも、全員僕の中では第一候補だったので、全員すごくハマっていると思います。
「ハリソン」と「拓海」、そして北村一輝さん演じる「情報屋」、小池栄子さん演じる「手配師」、ピエール瀧さん演じる「法律屋」……地面師グループの「チーム感」が、とにかく最高でした(笑)。地面師グループのメンバーについては、声とフォルムのバランスをすごく考えました。みんな特徴のある声なんですが、ひとつの場にいると和音のように、全部の音を鳴らしても違和感がないんです。ビジュアル的にもチームとしてのバランス、つまり“見た目のハーモニー”を意識しました。
北村さんとは十数年前に一度仕事をして以来、「またやりましょう」と言っていたのですが、なかなかチャンスがなく、今回の役はピッタリだと思ってお願いしました。小池栄子さんとは、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』以来の共演で、久々でしたが、ダークになりがちな犯罪者集団の中で、彼女の「華やかさ」が必要だと思いお願いしました。栄子さんは多方面で活躍しているため現場での対応力が高く、基本的に芝居もとんでもなく上手いです。豊川さんと栄子さんがW主演した『接吻』という大傑作映画があり、この2人の共演をもう一度見たいという個人的な希望もありました(笑)。
瀧さんについては、意外かもしれませんが、役者・ピエール瀧を自分でキャスティングしたのは今回が初めてです。映画『モテキ』には出てもらいましたが、あれは「ピエール瀧」役だったので。今回、音楽を担当した電気グルーヴの相方である石野卓球さんも言っていましたが、復帰してからの瀧さんは、芝居も顔もすごく良いですよね。特に顔に関してはもう唯一無二、ワールドクラスです(笑)。
瀧さんは読書家で、いろんなことをよく知っていて、難しいことをユーモアを交えてさらっと話せるんです。だから瀧さんにお願いするならこういう役がいいなと思っていました。
質問: 実際の現場では、どんなことを意識しながら撮影していったのでしょう?
回答: 犯罪ものだからといって、ダークで重い映像ルックではなく、全体的にリッチでラグジュアリーかつPOPなものっていうのは、結構意識しました。特に、こういったジャンルのものにおいては、そこがすごく重要だと思うんです。実際に起きた事件を参考にしつつも、100億円という前代未聞の巨額詐欺を描いたクライム・サスペンスなので、美術や小道具はもちろん、ロケ地選びに至るまで、かなりこだわりましたけど……リアリティの追求はいつものことですけど、今回は嘘をつくところは徹底して嘘をつきましたね。特に地面師チームの描写とか。そういうリアリティとファンタジーのバランスにいちばん気を使ったんじゃないかと思います。
追加コメント: 詐欺で使う偽造書類や免許証やパスポートなどは完璧に偽造しましたよ(笑)。今回の美術・小道具チームはその気になれば地面師詐欺ができると思います(笑)。ちなみに、ハリソンが集めているヴィンテージ・ウイスキーも全部本物で、あの棚ひとつで合計4000万円ぐらいするらしいんですけど(笑)。手に汗握るクライム・サスペンスでありながら、東京五輪招致後の土地価格の高騰や地面師という社会的な問題も扱っていて……大根監督のフィルモグラフィー的にも、ドラマ『エルピス』のあとに本作がきたのは、すごく良い流れだと思いました。
大根監督まとめコメント: そうかもしれないですね。ここ2、3年は『いだてん』とか『エルピス』とか、自分発信ではない作品に参加できたことが、キャリア的にもスキル的にもステップ・アップになったと思っていて。それこそ『いだてん』で「VFXってこう使うのか」ってことをすごく勉強させてもらったし、『エルピス』の渡辺あやさんの脚本には間違いなく影響を受けているし、あのドラマでやった映像のルックと言いますか、「このカメラを使うとここまでやれるのか」といったことや、レンズやグレーディングのことなど、技術的なこともたくさん学ぶことができたんです。そういう意味で、これまでのいろいろなものが積み重なった上で、今回の作品ができたなっていう感じはすごくしています。
次のターゲットは過去最大の100億円不動産。地主、土地開発に焦りを見せる大手デベロッパーとの狡猾な駆け引きが繰り広げられる中、警察が地面師たちの背後に迫る。騙す側と騙される側、そして地面師を追う刑事。三つ巴の争いは、度重なる不測の事態の果てに、狂気と欲望にまみれた地面師グループの間に亀裂を生じさせ、拓海の「過去」とハリソンの「因縁」を浮き彫りにしていく…。
“地面師”とは
地面師とは、他人の土地の所有者になりすまして売却を持ちかけ、偽造書類を使って多額の代金を騙し取る、不動産詐欺を行う集団のことである。地面師詐欺は、戦後間もない混沌とした社会情勢や、役所内の混乱期に全国で発生した。1980年代後半から1990年代初期にかけてのバブル時代には、土地の価格が高騰し、都市部を中心に多発。だがその後、不動産取引に必要な書類の電子化が進んだことによって、他人のなりすましが困難になり、鎮静化したように見えた。しかし2010年代半ば、東京オリンピック招致決定を機に、土地の価格が上昇し、管理の行き届かない土地や、所有者の不在など、表面化しにくい土地を中心に、再び地面師事件が発生するようになった。地面師詐欺は、リーダー、交渉役、情報屋(図面師)、法律担当、偽造書類作成者(ニンベン師)、なりすましのキャスティング(手配師)など、複数人で行われ、緻密かつ高度な犯罪テクニックが必要とされる。
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