本作でVFXスーパーバイザーを務めたのは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(21)、『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』(21)など数多くの大作にも携わってきたマイク・スティルウェル。彼が取り組むプロジェクトではVFXとライブアクション映像をシームレスに融合することを可能とし、ストーリーテリングが向上すると定評があるため、<デス>を創出する上でも非常に重要な存在だったとプスィッチ監督は絶大な信頼を寄せる。
また、同じく、VFXスーパーバイザーを担当したアンドリュー・シモンズも、『ワンダーウーマン』(17)、『ボヘミアン・ラプソディ』(18)、『マレフィセント2』(19)、『ライオン・キング』(19)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)などに携わり、20年以上の経験を持つベテランスタッフ。
撮影前の準備に1年、撮影後のポスプロダクションに1年をそれぞれ費やし、本作は完成した。プスィッチ監督は「<デス>のデザインは私たち3人(前述のスティルウェルとシモンズ)で考えました。恐ろしくもあり、愛らしい雰囲気と外見を探し求めていく中で、“死”の視覚化という役割を、光のような形状に担わせようかと考えた時もありましたが、真実味のある話し方をし、この世のものでありながらも遠く離れた対象とも感じさせる、本質的な不死性と全能性が備わった存在を考え、コンゴウインコに基づくことに決めました。でも、よく目にするコンゴウインコそのものの姿をしていたらリアリティに欠けるだろうとも思ったので、絶滅した鳥たちも含め、さまざまな種類のコンゴウインコの特徴といろんなフォルムの鳥類を掛け合わせ、ユニークな怪物を創り上げました」と明かす。
また、「人間より大きくなったり、掌に収まったりと<デス>は自由自在。そのため、各シーンにおける<デス>のサイズ、見た目を考え、その時々での翼の羽ばたき方、歩き方、威厳があるように見せる為にはどうやって関節を動かすのか…鳥みたいだけど、鳥じゃない動きをするにはどうしたらいのか、多くの議論を交わしました」と苦労の末、畏怖の存在でありながらもチャーミングさを兼ね備える<デス>を誕生させた。
A24のサポートの元、本作で長編映画デビューを果たしたダイナ・O・プスィッチ監督は、クロアチア出身で、現在はロンドンと二拠点で活動している新進のクリエイター。100歳の母を介護する75歳の娘のもとに、コウモリが棲みつくという初の短編映画『Zvjerka(英題:The Beast)』(13)を制作すると、2015年のサンダンス映画祭ほか、30以上の映画祭で上映され、多数の賞を受賞。Adobe Stock Film Fest 2020では、Adobeのストック・フッテージのみを使用し、短編『We Fight but You’re Fabulous(原題)』をオンラインのみで発表。主人公の男性と母親との対話を通し、パンデミックの中にいる孤独とフラストレーションを世界のつながりとして浮かび上がらせた映像もまた、初の長編作品となった本作への確かな足がかりとなっている。先日行われたオンラインインタビューでは、好きな日本人監督として、黒澤明を挙げ、特に『蜘蛛巣城』がお気に入りだと明かし、シネフィルの一面も覘かせた。

チューズデーの母親・ゾラ役には、アメリカが誇る名コメディアンのジュリア・ルイス=ドレイファスを抜擢。プスィッチ監督は、特にドレイファスの代表作で90年代のアメリカで爆発的人気を博し、国民的ドラマと謳われる「となりのサインフェルド」の大ファンだという。「ジュリアはとてもキャリアがあるので、ミニシアター系作品の上、長編映画監督デビュー、しかもロンドンで撮影するという本作に出演してくれるとは思ってもみませんでした。でも、コメディと感動、恐怖とドラマ、そのすべてを直感的にバランスよくこなせる俳優は彼女以外にはありえなかった。唯一の選択肢でした」とダメもとでオファーをしたと話す。

これに対し、ジュリア・ルイス=ドレイファスは「脚本がとにかく魅力的で、すぐに出演を決めました。監督は高い知性と思慮を持ち合わせている人。だから、彼女と一緒に崖から飛び降りよう!と思えたんです」とプスィッチ監督を大絶賛。デビュー作での主演を快く引き受け、これまでに経験したことのない難しい役柄に挑戦した理由について振り返る。コミカルな一面と哀しみとをないまぜとした母親の心情を繊細に演じてみせたドレイファスは、本作で新境地を開拓したと高く評価され、多くの称賛の声が贈られている。
『終わりの鳥』(原題:Tuesday)
監督・脚本:ダイナ・O・プスィッチ(初長編監督作品)
出演:ジュリア・ルイス=ドレイファス、ローラ・ペティクルー
2024年/イギリス、アメリカ/110分/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳:佐藤恵子/G
日本公開:2025年4月4日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開!
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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