南沙良が主演を務める映画『愛されなくても別に』が、7月4日に公開されることが決定した。
本作は、『響け! ユーフォニアム』『今日、きみと息をする。』で知られる武田綾乃が、吉川英治文学新人賞を受賞した同名小説が原作。武田の著作の中で、初の実写化作品となる。
“フツー”とはかけ離れた大学生活を送る宮田陽彩(南沙良)は、学校に通いながら朝から晩まで寝る間もなくアルバイトや家事に追われる……母親に金を渡し、世話をするために。母親から暴力は振るわれないし、暴言もない。ただ「愛している」と言う言葉で縛られ、陽彩は緩やかな絶望と人生に対する期待のなさの中で生きている。そんなある日、同じバイト先の同級生、江永雅との出会いによって、陽彩の人生は大きく変わっていく。
監督・脚本を務めるのは、2016年に『溶ける』で日本人最年少での第70回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門の正式出品を果たした井樫彩。映画化にあたり井樫は、「映画にはならないような、劇的とは程遠い、表現という手段からこぼれ落ちてしまうような小さな小さな傷や痛み。それらをこぼすことなく映画に閉じ込めたい、と思いながら制作しました」と語り、「だって、学生の時にわたしは陽彩と同じく“わたしの苦しみは大したことじゃないんだな”と思ったから。でも、苦しみや痛みは、大きさで測れるものではないし、誰かと比べるものではないと今はわかっている。 “愛されなくてもいい”と言いながらも他者の手を取り、握ってしまうような……『心』は一辺倒ではない。愛も苦しみも、とてもグラデーションのあるものだと思うから」とコメントしている。
主演の南が演じるのは、浪費家の母親に依存され、人生に一度も期待を抱いたことのない主人公・宮田陽彩。陽彩というキャラクターについて南は「抱きしめてあげたくなりました」と心境を明かし、作品についても「ただ生きることがこんなにも難しいこの世界で、未来を見ることが出来なくても、今を生き抜く力を持てたら、と強く思えた作品でした」と語った。
また、本作を企画した佐藤慎太朗プロデューサーは、「同年代で同じ時代を生きてきた井樫さんとだからこそ、この映画が作れたと思います。生きていくうえで不安や悩みはつきものですが、登場人物たちの勇気が、誰かに寄り添い、救うことを願います」とコメントを寄せている。
コメント
南沙良(宮田陽彩役)
お芝居している中で、自分が不幸であることを他人との物差しとして用いてしまう陽彩を抱きしめてあげたくなりました。
誰かと出会うこと、何かを失うこと、なにかを信じること。
ただ生きることがこんなにも難しいこの世界で、未来を見ることが出来なくても、今を生き抜く力を持てたら、と強く思えた作品でした。

井樫彩(監督)
あらすじから暗くて重い話なのかと思われがちなのですが、決してそれだけの物語ではありません。
苦しんだり傷ついたりしながら、だれかの手を振り払ったり…ときに手を取ったりして力強く歩んでいこうとする陽彩と雅という、ふたりの人間の物語です。
ふたりに会いに、ぜひ劇場にお越しいただけたら嬉しいです。
佐藤慎太朗(プロデューサー)
社会問題をテーマにした題材はどうしても重たくなりがちですが、武田先生の描くこの物語にはそれだけではなく、作品全体を包み込む不思議なポップさがありました。
原作が持つその独特な世界観を大切にし、なおかつ鑑賞後に清々しさを与えられるような映画にしたいと、井樫監督にこの企画を持ち込みました。
同年代で同じ時代を生きてきた井樫さんとだからこそ、この映画が作れたと思います。
生きていくうえで不安や悩みはつきものですが、登場人物たちの勇気が、誰かに寄り添い、救うことを願います。
■公開情報
『愛されなくても別に』
7月4日(金)新宿ピカデリーほか公開
出演:南沙良ほか
監督:井樫彩
原作:武田綾乃『愛されなくても別に』(講談社文庫)
脚本:井樫彩、イ・ナウォン
企画・プロデュース:佐藤慎太朗
製作幹事・制作プロダクション:murmur
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©︎武田綾乃/講談社 ©︎2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会