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『ブルータリスト』エイドリアン・ブロディが語る、ホロコースト生還者を演じること

ホロコーストを生き延び、アメリカへと渡った建築家の30年にわたる半生を描いた『ブルータリスト』が、第97回アカデミー賞で作品賞を含む10部門にノミネートされた。同作で主人公を演じたエイドリアン・ブロディは、『戦場のピアニスト』(2002年)以来、実に22年ぶりとなる主演男優賞ノミネートを果たしている。

第81回ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞し、第82回ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)、監督賞、主演男優賞(ドラマ部門)の3冠に輝いた本作で、ブロディはホロコースト生還者の建築家ラースロー・トート役を熱演。この度、その役作りと作品への思いを語った。

才能ある建築家の数奇な運命

『ブルータリスト』は、ハンガリー系ユダヤ人の建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)の30年にわたる半生を描く215分の大作である。第二次世界大戦下、ホロコーストを生き延びたラースローは、妻エルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)と姪のジョーフィア(ラフィー・キャシディ)から強制的に引き離されてしまう。

新たな人生を求めてアメリカ・ペンシルベニアへと移住したラースローは、著名な実業家ハリソン(ガイ・ピアース)と出会う。ハンガリーでの輝かしい実績を知ったハリソンは、ラースローの才能を認め、家族の早期アメリカ移住と引き換えに、礼拝堂の設計と建築を依頼。しかし、文化もルールも異なるアメリカでの設計作業には、想像以上の困難が待ち受けていた。

エイドリアン・ブロディ、22年ぶりのアカデミー賞ノミネート

36歳の気鋭の映画監督ブラディ・コーベットが監督・脚本を手がけた本作で、ブロディは『戦場のピアニスト』以来、22年ぶりとなるアカデミー賞主演男優賞へのノミネートを果たした。前作では29歳で最年少主演男優賞を受賞したブロディが、今回も”ホロコーストから生還したアーティスト”を演じることとなった。

 

解禁された本編映像では、建築家の職を失いながらも建築への情熱を失わないラースローの姿が切なく描かれている。日雇いの工事現場で石炭を運ぶ生活を送る中、かつての業績を知った実業家ハリソンとの出会いが、彼に新たな希望をもたらす瞬間が映し出されている。

移民としての経験が結実した役作り

『戦場のピアニスト』でのホロコースト生還者役の経験が、今回のラースロー役の基盤になったと語るブロディ。「ニューヨークのクイーンズ地区で、貧しいながらも両親とアメリカでの生活を築き上げてきました。そしてアーティストとしての声を獲得していったのです」と、自身の家族の経験にも言及。写真家であった母親もまた、幼少期にハンガリーから逃れてアメリカへ渡ってきた移民だった。

この映画『ブルータリスト』が僕には特別な意味を持った現実的な体験のように感じられたのです。同様に、観てくれる多くの人にとって共感できる内容であってほしい」とブロディは語る。「先祖や家族が歩まなければならなかった苦しい道について。現在の位置を確立するまでの苦労の積み重ねについて目を向けてほしい」。

現代に響く移民たちの物語

「不幸なことに、歴史は僕らが望んでいたような変化をもたらしませんでした」と語るブロディは「この映画を観たことで、ラースローのような体験をしていない人でも、または直接的にラースローのような苦労をした人を知らなくても、闘争や告発などその他過酷な状況の母国を逃れることを強いられ、新しい土地でゼロからやり直さなければならない人々について理解してもらえればと思います」とのメッセージを訴えた。

映画批評サイト「Rotten Tomatoes」(ロッテントマト)では批評家93%、観客81%という高評価を獲得。同サイトは「エイドリアン・ブロディによる魂の演技と、監督・脚本のブラディ・コーベットにより完璧にデザインされた『ブルータリスト』は、移民体験に対する壮大なトリビュートだ」と総評している。また、イギリスの大手新聞The Guardianは本作を5つ星で評価し、「素晴らしい!夢中にさせる大作」と称賛を寄せている。

第二次世界大戦下にホロコーストを生き延び、アメリカへと渡った、ハンガリー系ユダヤ人建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)の30年にわたる数奇な半生を、監督・脚本を務めた弱冠36歳の気鋭ブラディ・コーベットが描き出した、215分にわたる壮大な人間ドラマ。才能にあふれるハンガリー系ユダヤ人建築家のラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)は、第二次世界大戦下のホロコーストから生き延びたものの、妻エルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)、姪ジョーフィア(ラフィー・キャシディ)と強制的に引き離されてしまう。家族と新しい生活を始めるためにアメリカ・ペンシルベニアへと移住したラースローは、そこで裕福で著名な実業家ハリソン(ガイ・ピアース)と出会う。建築家ラースロー・トートのハンガリーでの輝かしい実績を知ったハリソン(ガイ・ピアース)は、ラースローの才能を認め、彼の家族の早期アメリカ移住と引き換えに、あらゆる設備を備えた礼拝堂の設計と建築をラースローへ依頼した。しかし、母国とは文化もルールも異なるアメリカでの設計作業には多くの障害が立ちはだかる。ラースローが希望を抱いたアメリカンドリームとはうらはらに、彼を待ち受けたのは大きな困難と代償だったのだ――。

ブルータリスト

監督・共同脚本・製作:ブラディ・コーベット
共同脚本:モナ・ファストヴォールド
出演:エイドリアン・ブロディ、フェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアース、ジョー・アルウィン、ラフィー・キャシディ
2024 年/アメリカ、イギリス、ハンガリー/ビスタサイズ/215 分/カラー/英語、ハンガリー語、イタリア語、ヘブライ語、イディッシュ語/
5.1ch/日本語字幕翻訳:松浦美奈
配給:パルコ ユニバーサル映画/映倫区分:R-15+
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