映画

『MIRRORLIAR FILMS Season6』公開初日舞台挨拶

『MIRRORLIAR FILMS Season6』が、12月13日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国の劇場で2週間限定 上映中。
2020年より始動した、伊藤主税、阿部進之介、山田孝之らがプロデュースする『MIRRORLIAR FILMS』(読み方:ミラーライアーフィルムズ)は、メジャーとインディーズの垣根を越えて映画を作り上げる短編映画制作プロジェクト。これまでにSeason1〜5では俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなどが監督した42本の短編映画を劇場公開。著名クリエイターの作品から一般公募作品まで、多彩な短編映画が集まっている。シーズン7には監督として加藤浩次、加藤シゲアキの参加が決まっており、注目クリエイターが続々とプロジェクトに加わっている。

この度、公開を記念して12月13日(金)に公開記念舞台挨拶が実施された! 本イベントには、『男と鳥』より浅野忠信監督、阿部進之介、田中一平、『カフネの祈り』より増田彩来監督、伊礼姫奈、『サン・アンド・ムーン』より企画、監督、脚本、出演を務める岡本多緒監督、『FAAAWWW!!!』より鬼木幸治監督が登壇した。

映画上映後、大勢の観客が集まった会場のステージに立った本プロジェクトプロデューサーの阿部は、「今日、初日を迎えることができてとてもうれしく思います。今日ご覧いただいた作品は、2本が秋田市で撮影したもの。あとの3本は一般公募で応募していただいたすばらしい作品なんですが、皆さんいかがでしたでしょうか?」と問いかけると、会場からは大きな拍手が送られた。

コマ撮りで制作された『男と鳥』で監督を務めた浅野は、「阿部さんとはカナダで『SHOGUN 将軍』というドラマを一緒に撮っていたんですが、僕の部屋のちょうど真上が阿部さんで。それでふたりでよく食事をしたり、お茶を飲んだりしていたんです。そこで阿部さんの短編を見せていただいたり、僕が撮ったものを見せていただいたりしているうちに、短編を撮らないかと言っていただいて。撮らせていただきました」と本作に参加した経緯を説明。

もともと浅野は『男と鳥』とは違うアイデアを考えていたとのことで、「最初に送っていただいたものも好きだったんですけど、僕のLINEの返信がそっけなかったみたいで(笑)」と明かした阿部。「僕としては面白いなと思って書いたんですが、ちょっとだけタイムスリップする人の話でした」と浅野が続けると、そこに補足するように阿部が「タイムスリップするじゃないですか。そして戻ってくるじゃないですか。何も起きないんですよ。今日もまた一日が終わったね、みたいな。タイムスリップはどこに行った?みたいな。そういう浅野さんのテイストが好きなんですよね」と“幻の企画”について説明するひと幕があった。

本作のきっかけは、阿部と浅野が『SHOGUN 将軍』の続編について語り合っていたところからはじまった。「戦闘シーンで亡くなった侍さんもいるわけで。そういう人たちがゾンビ侍として蘇ったらいいじゃないか、といった話をしていました」と振り返った浅野。阿部も「そしたら次の日の浅野さんのInstagramに、ゾンビ侍の絵を描いて載せていたんですよ。めっちゃ気に入ってるじゃんと思って。帰国してから短編の話をした時に、男をゾンビ侍にしようということで、そこから派生したキャラです」と明かした。

そしてその“ゾンビ侍”を演じた田中は、「浅野監督の現場は最高に楽しくて。本当に夢のような時間だった。浅野さんは映画の楽しさをみんなに教えてくれた」と笑顔で振り返った。

本作は、浅野にとって15年ぶりの監督作となるが、「阿部さんからは、シーズン7、シーズン8も続けていこうと……」と勝手に(?)ぶちまけると、阿部はあわてた様子で「もう違う人たちが監督をすると発表しているんですよ」と訂正。「あ、そうだっけ?」ととぼけた様子で返事をした浅野。「この間の秋田の 上映会から、なぜか浅野さんはシーズン7、シーズン8をやろうとしているんですけど、もう発表済みなんで。もうないんで、お断りします(笑)」と阿部から正式に断られると、観客に向けて「もうないみたいです」と笑いながら報告する浅野だった。

だが監督業は楽しかったようで、「ぜひもう一度チャレンジしたいなと思っているんです。実は先日、占いで『僕は転職したほうがいいですかね』と聞いたんですけど、その方は僕のことには気づいていない様子で、『あなたは今の仕事と結婚しているような人だから。今のままでいなさい』というんです。だから監督とかもやらなくていいなと思っています」と報告した浅野。その言葉に「でも分からないですよ。仕事というのは“俳優”のことではなくて、“映画全般”のことかもしれない」とフォローを入れた阿部だったが、「だったらシーズン7を」とまだまだ次回作を諦めきれない様子の浅野の姿に会場はドッと沸いた。

この日は公募作品から『サン・アンド・ムーン』の岡本多緒監督、『FAAAWWW!!!』の鬼木幸治監督、『カフネの祈り』の増田彩来監督、そして主演の伊礼姫奈も来場。岡本監督は「わたしはアメリカで俳優として活動していたんですが、2023年から日本に住むようになって。こっちで俳優としてやっていきたいなという目標ができました。その時に皆さんに観ていただく資料として、日本語でお芝居をしているものがないことに気づいて。それを先につくろうというアイデアから始まった映画。でもいざつくってみたら映画づくりの楽しさに気づいてしまい、のめり込んでしまった。だからもともとはお客さまに観ていただくつもりでつくったものではなかったんですけど、こういう形で劇場で公開していただくことになって。本当に夢のように思っています」としみじみ語る。

そして『FAAAWWW!!!』の鬼木監督は、「この映画は本当に手づくりというか。撮影も編集も監督もVFXなども全部ひとりでやっていて。まさか河原で撮影した作品がこんな立派な場所で 上映されるとは思っていなかったので、本当にうれしいですし、驚いています」と感激の表情。

さらに『カフネの祈り』の増田監督は「この作品はわたしにとって初監督作で、自分の経験をもとにはじまった作品です。死を描くのではなく、どう生きるのかを見つめてつくった、祈りのような作品です。皆さんに届いたらうれしいなと思います」とメッセージ。そして主演の伊礼は「彩来さんの映像作品にかかわることができてうれしかったです。井浦 新さんをはじめ、すてきなキャストの皆さんと一緒にお芝居をすることができて幸せでした。この作品は別れの悲しさだけを描いた作品ではないなと思っていて。だからこそ、観終わった後にやさしい何かで包み込んでくれるような温かい作品だなと思っていて。彩来さんが祈りをこめてつくったこの作品が、皆さまのものになったらいいなと思っています」と付け加えた。

この日は井浦 新も登壇予定となっていたが、体調不良のため残念ながら欠席。そんな井浦との共演を振り返った伊礼は「すごく静かに、やさしいひとことをくださる方で。わたしが台本を見ながら座っていたときに話しかけてくださって。音を聞いてみてという言葉をくださったんです。その言葉で実感が沸いたというか……それですてきなシーンが撮ることができて。すてきな方だなと思いました」と述懐。

そしてそんな現場は非常に刺激的だったようで、「わたしもいつか監督として作品をつくってみたいなという夢があるので、今回はいろいろと勉強になりましたし、話を聞くことができて楽しかった」と笑顔。さらに「わたしは日常を切り取った作品が好きなので、日常を描きつつも、大切なものを得られるような作品をつくってみたいと思います」とのことで、司会者からは、浅野から伊礼に向けて「何かアドバイスを」と促されるひと幕も。それに浅野が「僕の映画はまったく日常を切り取ったものではないので。まったく生かされることはないと思います」と返して会場は大笑い。伊礼も「いつかコマ撮りもやってみたいと思います」と笑顔で返した。

『MIRRORLIAR FILMS』のシーズン5とシーズン6は、企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)を活用し、秋田で撮影。そしてこのたび、内閣府が主催する「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰式」において、MIRRORLIAR FILMS PROJECTと連携した秋田県秋田市との取り組みが評価され、大臣表彰された。

そのことを踏まえ、「この映画は企業版ふるさと納税という制度を利用して、地方都市で撮っています。そこで映画をつくる過程の中で、たとえばワークショップを学生の皆さんと一緒にやってみたり、初めて映画を撮ってみたり。浅野さんや小栗さんの映画の撮影現場に見学に来ていただいたり。映画ってこうやってつくっているんだよということを体感していただくことを通じて、地域を活気づけることをやっています」と説明する阿部プロデューサー。「学生さんがそこで、新しい夢を見つけたと。将来わたしは映画のプロデューサーになりますとおっしゃってくださる方もいらっしゃって。そういう過程もふくめて、映画づくりというものは、人の活力になって、絆を生んで、人生を変えるものだと思います。そういう活動を各地方都市にどんどん広げていきますので、その活動にもぜひ注目していただけたら嬉しいです」とメッセージを送った。

『MIRRORLIAR FILMS』小栗旬監督、「秋田文化祭」に登壇決定!©2024 MIRRORLIAR FILMS PROJECT