2025年2月21日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開の映画『奇麗な、悪』の予告編が到着しましたので、ご紹介。
古い洋館に入っていくひとりの女性(瀧内公美)。精神科の医者らしき人物に話し始める。
「トラウマって何ですか、人はそんなに簡単に出来ているのでしょうか?」
そこから、一気に悲惨な人生を語りだす圧巻のひとり芝居が展開する。
日本映画史上、初となる 1 時間以上のワンカットで撮影されたというこの映画。
そのためか異様な迫力の演技。それとはかけ離れた美しく、どこが呑気な口笛のメロディー。
通常の映画という既成概念を打ち破る予告編が完成。
原作・中村文則 コメント
「前」を向く
この『奇麗な、悪』の原作の「火」は、様々な人から、演じてみたい、という声を聞いていた。
『火 Hee』として桃井かおりさん監督・脚本・主演で映画化され、「業火」として三木美智代さんによって舞台化されている。「火 Hee」でプロデューサーを務めた奥山和由さんから、「火」をもう一度映画にしたいと言われた時は、しかし驚いた。映画化としては、二回目になるから。
出来上がったものを観て、さらに驚くことになる。原作の通りではあるけど、これは一人の女性が、話しているだけの映画。なのに、これほどまでに、引き込まれる。
主演の、というか、お一人しか出演していないのだが、瀧内さんは実に見事だった。多方面から大きな注目を浴びている俳優とは知っていたが、従来の映画には見られない、ここでしか味わえない独特の言語空間をつくり出していた。一人の女性が、自分の内面の奥の奥を、誰もいない場所で、独白する。通常の言葉だけが、連なるはずがない。他者に言う自然な言葉もあれば、反対に内面の奥を探るような、社会化されていない観念的な言葉もある。そして構える言葉、吐き出す言葉、攻撃、防御、揺れ――、あらゆる種類の言葉が解き放たれ、映画空間に言葉の「場」がつくり出されていた。その演技力、存在感。すさまじかった。
映画は、小説よりもどこか「前」を向いている印象がある。瀧内さんによる、奥に芯の見える主人公像もそうだった。この映画はこのように完成したことで、「火」の主人公を救ったのかもしれない。
あらゆる文化が平均化していく中で、このような作品が日本映画にあることが、嬉しい。
音楽(口笛奏者) 加藤万里奈 コメント
混沌と平穏、暴力と愛情、そして嘘と本当。
世界は曖昧なことが多い。
おぼろげな旋律に、口笛でぴゅ~っと。
原作:中村文則 「火」(河出文庫『銃』収録)
出演:瀧内公美
脚本・監督:奥山和由
製作:チームオクヤマ よしもと総合ファンド シー・アンド・アール RON ナカチカ
プロデューサー:豊里泰宏 音楽:加藤万里奈 撮影監督:戸田義久 照明:中村晋平 録音:伊藤裕規
美術:部谷京子 編集:陳詩䆾 音響効果:大塚智子 衣裳デザイン:ミハイル ギニス アオヤマ ヘアメイク:董氷
劇中絵画「真実」後藤又兵衛
制作協力:シンクイ 制作プロダクション:チームオクヤマ
配給:NAKACHIKA PICTURES
2024年:カラー:日本:78分
©2024 チームオクヤマ
レイティング:G