映画

『徒花 -ADABANA-』初日舞台挨拶

初日舞台挨拶
日付:10月18日(金)
場所:テアトル新宿
登壇:井浦新、水原希子、永瀬正敏、甲斐さやか監督

第37回東京国際映画祭にて新設部門となる「ウィメンズ・エンパワーメント部門」への出品も決定した注目作『徒花 -ADABANA-』がついに2024年10月18日(金)より全国順次公開中となりました。

『徒花-ADABANA-』初日舞台挨拶

本作の舞台は、ウイルスの蔓延により人口が激減し、延命措置として上層階級の人々だけが自身と同じ見た目を持つ“それ”を保有することが許された世界です。劇中では、主人公の新次が、外見は自分と同じだが内面が異なる“それ”に対して動揺する様子が描かれています。井浦が新次役を、水原が臨床心理士のまほろ役を、永瀬が新次の担当医役を演じました。

甲斐さやか

甲斐は「自分の中でも最も長い年月をかけ、キャストの才能とスタッフの協力を得て作り上げた大切な作品です。今日、満席の皆さんに届けられることを光栄に思います」と挨拶した。井浦は「多くの映画が公開される中で、この映画を選んでいただき、感謝しています」と述べた。

井浦新

新次と“それ”の2役を演じた井浦は、「それぞれのキャラクターの生まれ育った環境や生活を想像しながら撮影に臨みました。技術的に演じ分けるのではなく、それぞれが生きてきた姿を映したいと思って演じました」とコメントした。水原は、「セットの都合で新次のシーンをすべて撮り終えてから“それ”のパートを撮影するのではなく、役を行き来しながら撮影していた井浦さんの姿を見て、もし自分だったら泣いてしまうと思いました。素晴らしかったです」と井浦を称賛した。井浦は、「役を行き来するたびに、監督が楽しそうに笑ってくれていたので、自分も『やったー!』という気持ちでした」と振り返った。甲斐は、「想像を超える演技を見せていただいて、うれしくて思わず笑ってしまいました」と撮影時を回想し、「井浦さんが新次と“それ”の両方の夢を見たと聞き、本当に大変だったのだろうと感じました」と井浦の苦労をねぎらった。

水原希子
井浦は、初共演となった水原について「映画や他の分野での自己表現に妥協がなく、非常に多才な方という印象を持っていました」と評価。また、永瀬については「20代の頃から節目ごとに共演させていただき、そのたびに大きな刺激を受けてきました。永瀬さんから受けた影響や悔しさを、自分の糧にして新しい表現に挑戦したいと思わせてくれる存在です」と述べた。そして、「予測不可能な表現を見せる水原さんと、長いキャリアを積み重ねてきた永瀬さんと一緒に演技ができてとても嬉しかったです」と話した。これに対して、永瀬は「新くん、いいことを言ってくれますね。彼はずっと誠実な人です」と返答した。
永瀬正敏

永瀬は「なるべく目立たないように」と意識しながら撮影に臨んだ理由について、「初めて脚本を読んだとき、自分の役は『あまり前面に出る存在ではない』と感じました。遠くから見守るような立ち位置がふさわしいと思い、自分の役は新次の心の葛藤を表現する存在なのではないかと考えました」と語った。また、「何度も台本を読んだのに、新次の名前を“神”次だと思い込んでいたほど、新次という役はそれだけ崇高な存在に感じられたんです」と振り返った。

左から井浦新、永瀬正敏

井浦は、「昨日も恩師である若松孝二監督の13回忌特集上映で、ここテアトル新宿に立っていました。若松監督と甲斐監督は直接的な師弟関係ではなく、作風や人柄も異なりますが、作品作りに対する真摯な姿勢や、社会に向けた鋭いメッセージ性には共通するものを感じていました」と語った。さらに、「甲斐監督自身からは激しさや攻撃性を感じないものの、そのエネルギーは作品に表れています。しかし、それは観客を傷つける意図ではなく、問いかけを続けたいという思いからだと感じます。監督が作品を通じて試みている小さな革命を、皆さんに楽しみながら受け取ってほしいと思います」と述べ、イベントは幕を閉じた。

『徒花 –ADABANA-』
物語
裕福な家庭で育った新次(井浦新)は、妻との間に一人娘も生まれ、周りから見れば誰もが望むような理想的な家族を築いていた。しかし、死の危険も伴うような病気にむしばまれ、とある病院で療養している。手術を前にした新次には、臨床心理士のまほろ(水原希子)が心理状態を常にケアしていた。しかし毎日眠れず、食欲も湧かず、不安に苛まれている新次。
まほろから「普段、ためこんでいたことを話すと、手術に良い結果をもたらす」と言われ、過去の記憶を辿る。そこで新次は、海辺で知り合った謎の「海の女」(三浦透子)の記憶や、幼い頃の母親(斉藤由貴)からの「強くなりなさい、そうすれば守られるから」と言われた記憶を呼び起こすのだった。記憶がよみがえったことで、さらに不安がぬぐえなくなった新次は、まほろに「それ」という存在に会わせてほしいと懇願する。
「それ」とは、病気の人間に提供される、全く同じ見た目の“もう一人の自分(それ)”であった……。
「それ」を持つのは、一部の恵まれた上層階級の人間だけ。選ばれない人間たちには、「それ」を持つことすら許されなかった。新次は、「それ」と対面し、自分とまったく同じ姿をしながらも、今の自分とは異なる内面を持ち、また純粋で知的な「それ」に関心を持ちのめりこんでいく……徒花-ADABANA-
井浦 新 水原希子
三浦透子 甲田益也子 板谷由夏 原日出子/斉藤由貴 永瀬正敏脚本・監督:甲斐さやかプロデューサー:布川 均 宮田公夫 ビックァン・トラン 赤澤賢司 上野弘之 キャスティングディレクター:杉山麻衣
撮影:高木風太 照明:後閑健太 録音/音響効果:小川 武 美術:河島 康 編集:山崎 梓 ロラン・セネシャル VFX:菅原悦史
衣装デザイン:前田敬子(LOISIR) 劇中アートディレクション:小林和史 助監督:近藤有希 制作担当:久保田辰也
ラインプロデューサー:古賀奏一郎 音楽:長屋和哉 音楽プロデューサー:akiko
クリエイティブディレクター:佐倉康彦 タイトルロゴ/宣伝美術:日高英輝
制作プロダクション:ROBOT DISSIDENZ
配給・宣伝:NAKACHIKA PICTURES
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