作家・橋本治×画家・岡田嘉夫による“本というものの可能性”を追求した8年間の記録を収めた映画『狂熱のふたり~豪華本「マルメロ草紙」はこうして生まれた~』が、12月7日(土)より東京・ポレポレ東中野ほかにて全国順次公開決定。
桁違いの知性と独自の語り口で、エッセイ、文芸評論、小説、戯曲、古典の現代語訳、日本美術論など、膨大な作品を遺した作家・橋本治。その橋本がデビュー当時から共創を切望し、ダイナミックな構図と煌びやかな色彩表現で“現代の浮世絵師”とも称される異能の画家・岡田嘉夫。2人のクリエイターが既成概念を打ち壊して挑んだ前代未聞の豪華本『マルメロ草紙』の制作過程をつぶさに記録した秘蔵映像がついに公開となります。
『マルメロ草紙』は、20世紀初頭の仏・パリを舞台にした橋本の耽美小説。岡田流アール・デコの挿絵が濃艶に彩る豪華本で、2013年に集英社から限定150部で刊行されました。
「美しければ、文字なんか読めなくてもいい」。『マルメロ草紙』の制作が始まった日、橋本は、文章を読ませることが本業にも関わらず、毅然と言い放ちました。橋本と岡田が目指したのは、アールデコの優美さに貫かれた途轍もなく美しい本。ふたりは互いを挑発しながらアイデアを出し合い、それが叩かれ揉まれ、変化し、定着していき、そこに装丁家・編集者・製版オペレーター・印刷技術者・製本職人たちが加わって、それぞれのクリエイティヴ魂全開で表現を深めてゆく――。驚くべき繊細さで目標に向かっていくヴィジュアルの鬼たち。その現場は、いい歳をした大人たちが本気で遊んでいるカッコ良さに溢れるものでした。
監督の浦谷年良はこれまでに伊丹十三、宮崎駿、深作欣二らのドキュメンタリーを制作。本ドキュメンタリーは、そんな浦谷にとって永年の宿題でした。橋本と岡田、そしてこの記録を浦谷にすすめた刈部謙一も、もはやこの世にはいませんが、本作は亡き3人の男たちへ、敬愛とともに捧げられています。