映画

『セッションマン:ニッキー・ホプキンズ』トークイベント

大ヒット御礼トークイベント
会場:池袋シネマ・ロサ
登壇:ピーター・バラカン(本作字幕監修)
MC:汐月しゅう

『セッションマン:ニッキー・ホプキンズ ローリング・ストーンズに愛された男』は、伝説のセッション・ピアニスト、ニッキー・ホプキンズの軌跡を、時代とともに振り返る音楽ドキュメンタリー。本作では、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・ビートルズ、ザ・フーなど60~70年代のロック・シーンを牽引した伝説のバンドや、ジョン・レノン、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックらがこぞってニッキーを指名してきた理由を改めて検証する。

本作はニッキー・ホプキンズの30回忌となる9月6日(金)より公開。今も音楽ファンを中心に、口コミが広がっている。9月17日(火)には、本作の字幕監修を務め、自身が監修・作品選定を担当する【Peter Barakan’s Music Film Festival 2024】でも本作を上映したピーター・バラカンが、上映後トークイベントに登壇した。

冒頭ピーター・バラカンは、ニッキー・ホプキンズのドキュメンタリー映画が作られると聞いた時のことを聞かれ、「びっくりしました。ロック好きの間では最高のスタジオ・ミュージシャンという評判は昔からあるんですけれど、一般の人は全く知らない人ですから、こういう人のドキュメンタリー映画を誰かが作るとは想像もしなかったです」と回答。

「映画を観ると、60年代から70年代にかけて、一緒にレコードに参加していない人はほとんどいないくらいの引っ張りだこのミュージシャンだったから、その活動が、こういう形で記憶されるのはファンとして嬉しいです」と本作の意義を語った。

本作について、「一つのインタビューだけれど、実際本人がしゃべっているところがあるのが魅力的」と魅力を話した。

また、劇中に登場した人の中で気になった人について聞かれ、「知っている人が多いですが、キンクスとザ・フーのプロデューサーをしていたシェル・タルミーのしゃべっている姿は、この映画を観るまでは見たことがなかったと思います。キンクスとザ・フーの初期の作品を全部プロデュースしていた、イギリスの60年代のロック・シーンでは重要な人物の一人」と本作の貴重な点を挙げた。

本作の面白い点については、「この映画でニッキーが弾いているシーンもあるけれど、彼のピアノのどこが面白いかをモーガン(・フィッシャー)だったり、他のピアニストが弾いて聞かせるシーンがあるのがかなり面白かったです」と指摘。具体的には、「劇中、ローリング・ストーンズの『モンキー・マン』という曲のイントロのフレーズがなぜ面白いかを説明していました。自分がピアノを弾く人間だったら、そういうフレーズのちょっとした特徴にすぐに気づくかもしれないけれど、僕はピアノを弾かない人間だから、分からなかったです」と話した。また、「ニッキーみたいにゴスペル・タッチやブルージーなピアノが上手だったりする人は必ずしも多くない。彼は、ゴリゴリのブギーやブルースの正確さが違う。この映画で一番面白いのはその辺の説明」と語った。

当時のイギリスのセッションマンのギャラについて、「スタジオのレコード・セッションというのは1セッション3時間なんです。その3時間のセッションで3曲弾いて、ギャラは9ポンド。72年当時の1ポンドは1000円弱なので、1万円以下。スタジオ・ミュージシャンってそんなもんだったんだと僕も驚きました。アメリカでは70年代で少なくとも2倍は稼げたはずです」と解説。

現在のセッションマンについては、「力がある組合(ユニオン)があるんです。プロでミュージシャンとしてやっていくには組合に入らなくてはいけない。ユニオンは、最低条件は幾らというのがあって、メンバーは守られています。とはいえ、ミュージシャンはほとんどフリーランスだから、病気になったら大変です。イギリスは医療が基本的に無料なんですが、世界一医療費が高いアメリカでミュージシャンが病気になると大変なことになります」と現在の問題点を指摘した。

字幕監修をする上でこだわった点について聞かれた際には、「個人名やカタカナ表記がおかしいところを、本当の英語の発音に直させていただきます。嫌がられることもあるんですけれど、日本で長年通用している表記の仕方が間違っていることがすごく多いので、全部修正するんです」と、本作のタイトルで、「ニッキー・ホプキンス」でなく、「ニッキー・ホプキンズ」という表記とした理由を説明。「僕としては、これから洋楽に初めて触れる人たちに、正しい方から知ってほしいという気持ちで直している」と、字幕に込めた熱いメッセージについて語った。

物語
ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フー、ザ・キンクス、ジェフ・ベックをはじめとする60年代~70年代に数多くのアーティストのレコーディングに参加した伝説のセッション・ピアニスト、ニッキー・ホプキンズ。ザ・ビートルズのメンバー全員のソロアルバムにも参加した稀有な存在である彼は、素晴らしいピアノリフと音楽センスで多くのミュージャンを魅了し、250枚を超えるアルバムと膨大な数のシングル・リリースに貢献した。しかし、この若き天才ピアニストの活躍は病との闘いでもあった。1963年、病院に緊急搬送されたニッキーはクローン病と診断される。闘病生活を送りながらも、30年以上にわたるロック人生において数々のミュージャンと共演し愛された“最高のセッション・マン”の物語を、彼を知る仲間たちが語る。
ニッキー・ホプキンズ

出演:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ビル・ワイマン(ザ・ローリング・ストーンズ)、ピーター・フランプトン、ピート・タウンゼント(声/ザ・フー)、デイヴ・デイヴィス(ザ・キンクス)、ニルス・ロフグレン、グリン・ジョンズ、ベンモント・テンチ(トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ)、チャック・リーヴェル、モーガン・フィッシャー、テリー・リード、グレアム・パーカー、P.P.アーノルド、ハリー・シアラー、モイラ・ホプキンズ
(アーカイブ映像)ニッキー・ホプキンズ、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、アート・ガーファンクル
監督・脚本・製作:マイケル・トゥーリン
字幕監修:ピーター・バラカン/朝日順子
配給:NEGA
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