映画

「ぼくの家族と祖国の戦争」本編映像

2024年8月16日より劇場公開される、デンマークのアカデミー賞(ロバート賞)の5部門にノミネートされた映画「ぼくの家族と祖国の戦争」から、本編映像の一部が公開された。

本編映像では、父・ヤコブ(ピルー・アスベック)が学長を務めるデンマークの市民大学に、敗北目前のドイツからの難民を受け入れる、本作の冒頭シーンが収められている。体育館に詰め込まれた難民たちの間では、飢えと感染症がまん延。幼い子供を抱くドイツ難民の女性は、「息子が病気なんです。医者を呼んでください」とヤコブに対して必死に懇願する。しかし、「ドイツ国防軍の管轄です」と、どうすることもできないヤコブ。それでも母は「ドイツ兵は1人もいません。食料も届きません」と訴える。

「ぼくの家族と祖国の戦争」は、第二次世界大戦下の極限状況の中、かけがえのない信念を貫こうとした家族の物語。1945年、デンマークの市民大学。ドイツからの難民の受け入れという突然の事態に見舞われた学長ヤコブと妻リスは、究極の選択を迫られていく。周囲の誰もが敵視するドイツ人を救うべきか否か。売国奴とののしられることを恐れ、飢えと病気に苦しむ子供を見過ごしてもいいのか。その葛藤を見つめ、戦争という巨大な暴力に脅かされながらも、家族が懸命に人間性を保とうとする姿を描き、人間が選択すべき“正しいこと”とは何なのかを問いかける作品となっている。

混乱に陥ったデンマークに敗色濃厚となったドイツを脱出した20万人以上もの難民が押し寄せて来たが、当時のデンマークはナチス・ドイツの占領下に置かれており、受け入れを拒否する選択肢はなかった。そんな知られざる歴史の1ページにインスパイアされ、映画として完成させたのは、「バーバラと心の巨人」のアンダース・ウォルター監督。7月13日から開催されるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭では、国際コンペティション部門に選出されている。

デンマークに逃れたドイツ難民 「子供を救って!!」母親の魂の訴え 「ぼくの家族と祖国の戦争」本編映像本作を一足先に鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■加藤登紀子(歌手)
「もしこの世に正義があるとしたら、唯一それは目の前の命を助けることだ」と言った中村哲さんの言葉を思い出します。
でも普通にその正義をつらぬこうとすることが、こんなにも危険なことになってしまうのか?戦争というものの恐ろしさに心が震えました。
私自身が日本の敗戦後、大陸で難民として生き延びたことがそのままこの映画と重なります。戦争は人が人らしく生きることを不可能にしてしまう‼︎その悲しい事実を、まざまざと突きつける素晴らしい映画でした。

■木村草太(憲法学者)
ただ、人道的であろうとしただけ。そんな当たり前が、こんなにも困難になってしまう世界に、息もできなくなる。そんな世界を繰り返さないために、私たちは何ができるだろう?何をすべきだろう?

■渋谷哲也(ドイツ映画研究/日本大学教授)
戦争末期。目の前にいるのは憎い「敵」なのか、居場所のない「避難民」なのか。問題はそのどちらでもあること。本来敵味方はないはずの人道支援を社会状況が許さない。主人公たちの果敢な行動はけっして美談ではなく命がけの選択なのだ。

【作品情報】
ぼくの家族と祖国の戦争
2024年8月16日全国公開 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA
配給:スターキャット
© thuànn Taiwan Film Corporation