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映画『愛に乱暴』ティーチイン試写会&カルロヴィ・ヴァリ映画祭特別映像解禁

悪人』『怒り』で知られる吉田修一の傑作小説『愛に乱暴』が江口のりこ主演、森ガキ侑大監督でヒューマンサスペンスとして映画化、8月30日(金)より全国公開となる。

8月8日(木)に都内でティーチイン付き試写会が開催され、上映後には森ガキ侑大監督が登壇、観客からの質問に答えながら、本作への思いや作品に散りばめられたさまざまな意図を明かした。
合わせて7月にチェコで開催されたカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭での、海外の観客たちの感想を、森ガキ監督との交流の様子を交えて特別動画として解禁。ヨーロッパの観客の生の声と日本の観客の視点の共通点と相違点をレポート!

『愛に乱暴』を観終えたばかりの観客の前に登場した森ガキ監督は「楽しい時間を紡げたらと思います」とにこやかに挨拶。

MCからこれまでの森ガキ監督作品の共通点を聞かれると「社会から意図せず弾き飛ばされてしまった人々の物語に惹かれます。僕自身、たまにふと『孤独だなぁ』と思うことがありますし、生きにくい社会になっていることも感じます。主人公の桃子の身に降りかかる出来事は、女性のみならず男性も共感できると思い映画化しました」と明かした。さらにMCより『別れる決心』のパク・チャヌク監督が「人を好きになるということは、すべからくサスペンスである」と語ったことを引き合いに、本作も完全なサスペンス映画ですね、と水を向けられると「同感です。本作は『愛に乱暴』というタイトルですが、愛するが故に乱暴さが生じるのです。すべての物事は表裏一体だということをこの作品を通してよく考えるようになりました」と人間の感情が一番複雑でスリリングな題材となる所以を語った。

桃子を演じた江口のりこについては「カメラは全編ほぼずっと桃子の姿を捉えているんですが、実はそんなに桃子の台詞は多くないんです。昨今は説明過多な映像が多いなと感じていたので、なるべく省きたかった。台詞はできるだけ少なく表情と佇まいだけで語りたくて、そんな要望を江口さんは見事に成し遂げてくれました」とその演技力について太鼓判。チェコのカルロヴィ・ヴァリ映画祭でも『義母とけんか腰に話しているシーンで、夫が入ってきた瞬間に表情が少し変わる。ちょっと乙女になるのが分かった。彼女は素晴らしい女優ですね』という声をいただきました」と海外でも江口の演技に称賛が集まったことを披露した。

質疑応答の時間に移ると、映画を観終えたばかりの観客席からは多くの質問があがった。「桃子が夫の不倫相手の家を訪れるシーンでスイカを持っていたのはなぜ?」と聞かれると、「桃子は日本的なマナーが染みついた女性。不倫相手に対して憎しみはあるけれど、家を訪問する際はなにか手土産を持っていかなくてはいけないと思っているんです。また夫の真守を尾行した際、真守がカット・スイカを愛人宅に持って帰るのを目撃します。それが桃子の心に残っているのです」と解説。さらに「庭でのシーンは僕も大好きで、最初に桃子はキュウリを触るんです。でもすぐに『これでは申し訳ないな』と手放してスイカを選ぶんですが、これは江口さんのアドリブでカメラを回しながら思わず笑ってしまいました」と知られざるエピソードも明かした。

次に「スクリーン・サイズをスタンダード・サイズにした理由は?」との質問には「本作は桃子の一人称で語る物語だったので、彼女の姿に焦点をあてるために4:3のスタンダード・サイズにしました」と回答。フィルムでの撮影についても「この人間の生々しい物語をデジタルでは撮りきれないと考え、フィルムでやりたいと製作陣にわがままを言いました(笑)。通常の映画より画角が狭いので、演技の動線を計算しつくし、奥行きが感じられる画作りにこだわりました」と解説。

桃子たちが暮らす家について「母屋とはなれがあり、おばあちゃんの家みたいで懐かしかったのですが、セットではないとのことで、どうやって見つけたのでしょうか?」という質問が飛ぶと、「桃子の家の条件として、周りにコンビニがなく、ゴミ捨て場が近くにあって、母屋とはなれはL字型に配置されていて、はなれは平屋で、なおかつ床下が自由に掘れて、最後は〇〇できる(ネタバレなので伏字)ところ……というものだったのですが、チームみんなから『絶対無理だろ』と思われていたんじゃないかな(笑)。それでも諦めず一丸となって探してくれて、1年ぐらいかかりましたが理想どおりのあの家が見つかりました。海外でもロケ地が一番の話題で、『セットだと思っていた、クレイジーすぎる!』と言われました」と笑った。

最後に「細かな伏線が散りばめられているので、二度三度と楽しめる作品だと思います。映画を制作するときにはいろいろな条件があり、なかなか思い通りには作れないことも多いのですが『愛に乱暴』はやりたいことが叶った作品。気に入っていただけていたら、ぜひ宣伝に力を貸していただけると嬉しいです。いろんな人に勧めてください!」と力強くアピールし締めくくった。

大熱狂のカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭での観客の生の声を集めた特別映像が到着!

合わせて海外の反応として、森ガキ監督が7月3日から6日まで参加したチェコのカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭にて、ワールドプレミア上映された『愛に乱暴』への観客の生の声を集めた特別映像を解禁! ヨーロッパ中の映画好きが集まる映画祭では、本作を観た観客から「強烈なストーリー」「力強い」とまずはインパクトが強かったというコメント。「でも主人公の夫婦や家族への葛藤は世界共通のもので共感できた」「ラストは心温まる映画でした」「心に沁みました」と映画のメッセージをポジティブに捉えた感想があがった。また、「私の知らない日本文化が興味深かった」「日本の文化は独特だ」「主人公が夫の実感に住まわせてもらっているというのは非常に日本的」と日本の文化に触れる機会としても有意義を感じた様子。そして「私が知るアジア映画は大抵男性が主人公だったので、女性が主人公の映画は新しい体験だった」「このようなリアルな女性を描く映画がもっと増えて欲しい」と、主人公桃子の芯の強い女性像に寄り添った声が多く寄せられた。

映像には、上映後に監督が観客に取り囲まれサインを求められたり、質問を投げかけられたりする様子など、現地での観客の熱い反応がうかがえる映像となっている。日本でもチェコでも、老若男女問わず熱狂させた『愛に乱暴』の公開にご期待いただきたい。

夫の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす桃子は、「丁寧な暮らし」に勤しみ毎日を充実させていた。そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。桃子の平穏な日常は、少しずつ乱れ始める・・・。
人間の複雑な感情とその裏に隠された本質を鋭く炙り出してきた吉田修一の同名小説を、『おじいちゃん、死んじゃったって。』の森ガキ侑大監督が映画化。主演は唯一無二の存在感とユニークで高い演技力を持つ江口のりこ。共演には小泉孝太郎、風吹ジュン、馬場ふみから個性豊かな俳優陣が名を連ね、江口扮する主人公を追い詰めていく。江口のりこの振り切った怪演により、息もつかせぬ緊迫感に包まれたヒューマンサスペンスが誕生した。物語・・・
夫の実家の敷地内に建つ“はなれ”で暮らす桃子は、義母から受ける微量のストレスや夫の無関心を振り払うように、センスのある装い、手の込んだ献立などいわゆる「丁寧な暮らし」に勤しみ毎日を充実させていた。
そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。近隣のゴミ捨て場で相次ぐ不審火、失踪した愛猫、度々表示される不気味な不倫アカウント…。桃子の平穏な日常は、少しずつ乱れ始める。
愛に乱暴

『愛に乱暴』作品情報

公開日 2024年8月ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
キャスト 監督:森ガキ侑大
原作:吉田修一
出演:江口のりこ 小泉孝太郎 馬場ふみか 風吹ジュン
配給 東京テアトル
制作国 日本(2024)
公式サイト https://www.ainiranbou.com/

(C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024『愛に乱暴』製作委員会