初日舞台挨拶
日程:7月26日(金)
場所:テアトル新宿
登壇:松澤仁晶、三溝浩二、金谷真由美、田中聡監督
映画『ひどくくすんだ赤』初日舞台挨拶が7月26日(金)、東京・テアトル新宿で行われ、主演の松澤仁晶、共演の三溝浩二、金谷真由美、メガホンをとった田中 聡監督が登壇した。
本作は、国内外の映画祭で14冠を獲得し、劇場公開では衝撃的なラストに賛否両論が飛び交った短編映画『うまれる』の鬼才・田中 聡監督が放つ劇場最新作。停滞ムードから抜け出せず、ヒーロー不在の現代日本が抱える闇に切り込んだ問題作で、かつて自らが持つ特殊能力から、地球を守る戦隊ヒーローになり、栄光を受ける人生を送るはずだった男の転落した生き様を描く。
鑑賞後の観客から温かい拍手でステージに迎え入れられると、かつてはヒーロー史上最強と言われた「稲妻戦隊サンダーファイブ」のリーダー・サンダーレッドとして仲間と一緒に怪人から地球の平和を守っていたが、自ら犯した愚かな行いからすべてを失うことになった58歳の吉田を演じた松澤は「多くの方に支えられ、守られ、この作品はできました。ご覧の通り、年収120万のアルバイトの男を演じさせていただきましたが、さすがに今日はちゃんとしてこないといけないなと思って、頑張ってちゃんとしてきました」とコメントして笑いを誘い、この日着用していたスーツは5年前に購入したことを明かし「俳優ですから、こういうところに立ちたいって思うじゃないですか。当てがなかったんですけど、このスーツが売っているときに“これだ!”って思って、(清水の舞台から)飛び降りるつもりで買ったんです。で、ずっとしまってあったんですが、今朝、仕立て糸を抜いてきました」と晴れやかな表情を浮かべ、観客から温かい拍手を浴びた。
そして、大人になったサンダーイエローを演じた三溝は「カレーはまあまあ好きです」と本作の内容にかけて挨拶し、大人になったサンダーピンクを演じた金谷は「こんなにたくさんの方が観に来てくれると思っていなかったので本当に嬉しいです。私は戦隊モノも初めてなんですが、まさかのピンクで、しかもこの歳で(笑)、最初で最後のピンクだと思いますので、こんなにたくさんの方に観ていただいて嬉しいです」とにっこり。
田中監督は「最初は松澤さんと2人で(企画した)自主映画だった作品なんですけど、まさかここまで大きく育っていただけるとは思わず、自主映画の未来も明るいんじゃないかなと思いました」と目を輝かせ、「ちょっとひどいシーンもあったかと思いますが、自主映画だったということで溜飲を下げていただけると(笑)」とお願いした。
撮影は約3年前のコロナ禍真っ只中の時期に行ったそうで、三溝は「マスクをしてリハーサルをして、本番に外してというギリギリの中でやったんですけど、あのコロナ禍でスタッフ、キャストがあれだけ集まるって奇跡に近いですよね」と振り返り、「環境的には厳しい中で撮り終えた作品だったので、僕らも思い入れがありますし、ここまでステージが上がって、テアトル新宿さんで上映させていただけて感慨深いです」としみじみと語った。
また、本作での松澤のアクションを見て「本当に強く見えてすごかった」と目を丸くした金谷は、「以前、映画『シュシュシュの娘』で松澤さんと三溝さんとも共演したんですけど、アクションってほどではなかったけど、ちょっとやられるシーンがあって、あのときは結構NGを出していらっしゃったのに、“あんなに動けんるんだ、松澤さん”って思って」と感嘆。これに、松澤がたくさん練習したことを明かすと、三溝は「確かにゼーゼー言いながら稽古場でやっていましたよね」と振り返った。
続けて、田中監督は、その年の12月に撮影がほぼほぼ終了し、劇中の桜のシーンを撮影するために3月まで待っていたことを明かし「松澤さんがゼーゼー言ってるなと思って、年齢もあるのかなと思っていたんですけど、3月まで桜を待とうねと言っていたら、2月に松澤さんが心筋梗塞で倒れるという……」と振り返り、「さすがに撮影できないかなと思ったら、『大丈夫っすよ』ってケロッとしていて、麻痺とかないかすごく心配していたんですけど」と吐露。
これに松澤は「本当ですか? その割には重要なシーンで『全速力で』って(笑)。あれ、退院直後ですよ! 退院直後に『じゃあ走りましょうか』って言われて。コンプライアンスギリギリですよ」と口を尖らして観客を笑わせると、田中監督は「今そういう話をするとパワハラとか言われるから」と苦笑。松澤は「大丈夫です。了解のもとにやっていますから」とフォローした。加えて、田中監督が「よく生還されて、さすがヒーローだなって思いました」と舌を巻くと、松澤は「これを残したまま死ぬわけにはいかないという思いだけで帰ってきました。心停止をしまして、バインとやるやつ(電気ショック)を3回やって帰ってこられたので、完成を見られてここへ来られてよかったです」と感無量な様子だった。
さらに、「コロナ禍で暇だから映画を撮りたい」という松澤の提案を「暇だったのでいいっすよ」と軽く受けたという田中監督は、アメコミ原作でザック・スナイダー監督が映画化した『ウォッチメン』が好きで、ヒーローたちが実は悪いやつという設定が面白いと思っていたそうで「日本も意外とヒーローがいるなと思って、でもそんなに大人向けはないなと思っていたところ、『映画を作りましょう』って言われて、この企画を出させていただきました」と本作を制作した経緯を明かした。
そして、最後にコメントを求められた田中監督は「自主映画から始まって、いろんな映画祭をトボトボ周っていて、俺はこっちで褒められたいのに、『うまれる』『うまれる』って言われるから、もうちょっとこっちを見てくれよって思っていたところ、『うまれる』ブームが去り、やっと『ひどくくすんだ赤』が日を浴びるという嬉しい状況になりました」と笑顔を見せ、「みなさまSNSなどで呟いてください。賛否どっちでもいんです。書いていただければ『クソだった』でも全然いいので。僕ら監視しているので(笑)、かなり厳しくチェックしているので。引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします」と頭を下げた。
58歳になる吉田は、交通誘導員のアルバイトをしながら、独り目的もなく日々過ごしていた。彼はかつて、ヒーロー史上最強の「稲妻戦隊サンダーファイブ」リーダー、サンダーレッドとして仲間と一緒に怪人から地球の平和を守っていた。しかし自らの愚かな行動によりすべてを台無しにしてしまった過去があった。日々、後悔し続けていた吉田は、自分が犯した罪を許してもらうため、かつての仲間たちへの贖罪の旅に出る。サンダーファイブが解散した衝撃の真実とは、そしてこの旅に隠された驚愕の目的が明らかになる。 |
松澤仁晶
三溝浩二 金谷真由美
小島怜珠 末次寿樹 岡崎愛莉 大藤瑛史 東遥貴
監督・脚本:田中聡
撮影:松石洪介 照明:竹本勝幸 録音:ムラカミックス 美術:高橋努
アクション監督:ハヤテ 衣装・ヘアメイク:山崎照代 特殊メイク:石野大雅
編集:酒井よう VFX:北嶋順 グレーディング:長谷川将広 制作担当:大城立、二見尚孝
企画製作:棘棘<トゲトゲ> 配給:ニチホランド
2022/日本/46分/DCP/カラー/16:9/5.1ch
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