映画

『大いなる不在』公開記念舞台挨拶

公開記念舞台挨拶
日付:7月13日(土)
場所:テアトル新宿
登壇:藤竜也、真木よう子、原日出子、近浦啓監督

各国の映画祭で絶賛の嵐となった映画『大いなる不在』がついに公開! 公開初日の翌日、7月13日(土)に都内映画館で公開記念舞台挨拶が実施され、藤 竜也、真木よう子、原日出子、そして近浦啓監督が登壇した。

満員の客席から拍手喝采で迎えられたキャストと監督。卓の認知症の父、陽二を演じた藤は、「私の人生の黄昏時にこのような素晴らしい仕事に関わらせていただき、感謝しております」と挨拶し、再び拍手喝采が起きました。上映終了後の観客からの拍手に対して近浦監督は、「楽屋の方まで場内の拍手が聞こえてきて……ジーンとしました」と感激の様子を見せました。

藤は「人生のたそがれ時に素晴らしい仕事をさせていただいた」と感謝の意を述べ、日本より先に海外で高く評価されたことについて触れました。昨年9月にスペイン・サンセバスチャン映画祭で最優秀俳優賞を受賞し、今月下旬には米ニューヨークで開催されるジャパン・カッツ映画祭に出品されることも明かしました。さらに、米国、台湾、インドネシアなどでの配給も決まり、広がりを見せています。

藤は、疎遠になっていた息子(森山未來)と認知症で変わり果てた姿で再会する元大学教授を演じ、「(監督の)近浦さんのようなインディペンデントで映画を作る方が世界でチャンスをつかんでいく。このような素晴らしい時代にまだ現役で仕事できることに感謝しています。この映画をかわいがってください」と述べ、自身の演技についてよりも監督をたたえる言葉がほとんどでした。

真木は脚本を読んだときのことを振り返り、「絶対に参加したいと思いました。しかし、良い作品だからこそ『自分である必要があるのか』とも考えました。すると監督から手紙をいただいたんです」と述べました。一方、近浦監督は「読みづらい手紙を書きました」と明かし、卓と夕希が施設から帰る坂道でのシーンを挙げて「真木さんの後ろ姿を見て『風が吹きそう』と思い、『あそこで立ち止まって夕陽を見上げてください』と言いました。すると1テイク目に光がぱっと差し込んだ後、ワンテンポおいて強い風が吹きました。海外では風の演出にヘリコプターを使ったりしますが、それでも難しいくらい奥の木まで揺れる“奇跡の風”でした。真木さんでなければ吹かなかったですね」と語りました。

原は「藤さんが出演すると聞いて、ぜひ出演したいと思いました」とオファー時を振り返り、「演じたという記憶があまりなく、自然にその場にいられた感覚でした」と述べました。さらに「その環境を、藤さんをはじめ皆さんが作ってくださったので、あまり考えず、演技プランもほとんどなく“そのまんま”でいられました」と笑顔で述べました。

イベントの中盤には、別の仕事で海外にいる森山からのビデオメッセージが上映され、「力強い映画になっていますので、皆さんに楽しんでいただけるとうれしいです。ぜひご友人やSNSなどでこの映画を多くの人に伝えてください」とメッセージが贈られました。藤は森山との共演について「俳優同士って言葉を交わさなくてもカチンコが鳴るとインターアクションを始めます。その中でやっぱり良い俳優だなと思いました」と称賛しました。さらに、真木は「芝居をしているというよりは本当に妻になったようで、ダメなところにもそのまんま怒っている気持ち。ストレスなくいられたなと」と振り返りました。

藤は、森山との初共演について「俳優同士は言葉を交わさずとも、カチンコが鳴った瞬間に強いインターアクションが生まれます。その中で森山未來さんは素晴らしい俳優だと思いました。親子関係を演じながら、これは上手くいくなと感じました」と評価しました。夫婦役を演じた真木も「芝居をしているというより、未來さんの妻になったような感覚で、ストレスなく自然に演じることができました」と述べました。近浦監督は森山のキャスティングについて「藤さんと森山さんを一緒にフレームに収めることで、日本の映画史に残る作品になるのではないかと思いました。それが成功していると感じています」と語りました。

本作は北米で開催される第17回JAPAN CUTSに出品され、藤に特別生涯功労賞が授与されることが決定しています。ニューヨークやロサンゼルスでの劇場公開も予定されており、近浦監督は「本作は自主制作で作った映画です。インディペンデントの製作陣はみんな『海外でも観てもらいたい』と思っていて、僕もその1人。海を越えたいと思っていたので、徐々に実現しているのが本当にうれしいです」と喜びを表現しました。

最後に、原は「素晴らしい作品が完成したと自負しています」とコメント。真木は「題材からしていろいろな国で受け入れられる映画だと思っているので、大勢の方々に観ていただきたいです」と述べました。藤は「近浦監督は世界に自分の作品を広げて素晴らしいチャンスを掴んでいく。そんな素晴らしい時代に現役で仕事をさせていただくのは本当に素晴らしいことです。皆さん、この映画を広めてください」とアピールしました。

近浦監督も「皆さんのチケットの一枚一枚が僕ら表現者の糧になります。この映画を観ていただいた皆さんに良い風が吹くよう祈っております」と述べ、さらなるヒットを祈願しました。

『大いなる不在』(英題:Great Absence)

卓(森山未來)は、ある日、小さい頃に自分と母を捨てた父(藤竜也)が警察に捕まったという連絡を受ける。妻(真木よう子)と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義理の母(原日出子)は行方不明になっていた。卓は、父と義母の生活を調べ始めるが──。

監督・脚本・編集:近浦啓
共同脚本:熊野桂太
プロデューサー:近浦啓、堀池みほ
出演:森山未來、真木よう子、原日出子、藤竜也
製作・制作プロダクション:クレイテプス
2023年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/133分

日本公開:2024年7月12日(金)よりテアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
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(取材編集作成 酒井 修)