お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリこと照屋年之監督の長編最新作『かなさんどー』が、来年2025年新春に沖縄先行、そして全国順次公開される。
2018年に制作した照屋監督作『洗骨』は、モスクワ国際映画祭、上海国際映画祭など各国の映画祭に出品され、日本映画監督協会新人賞をはじめとする映画賞を多数受賞している。そんな照屋監督6年ぶりの長編最新作である映画『かなさんどー』は、最愛の母を亡くした娘の美花と、その父の悟と再生を丁寧に描いている。
主人公の赤嶺美花役は「仮面ライダーエグゼイド」のヒロイン役、ドラマ「賭ケグルイ」でも演技が原作の再現度が高いと話題となり、その後NHK朝ドラからミュージカルまで幅広く活躍している松田るか。美花の母親・赤嶺町子役は、ドラマ・映画、舞台など数多くの作品に出演する名バイプレイヤーの堀内敬子。妻の死を受け入れずにいる美花の父親・赤嶺悟役に、国内外のさまざまな作品に出演し、現在配信中の「SHOGUN」(ディズニープラス)でも話題となっている名優・浅野忠信が務めた。
この度、4月21日(日)、「島ぜんぶでおーきな祭 第16回沖縄国際映画祭」にて『かなさんどー』チームが参加し、さらに本作の製作発表会が開催された。舞台には照屋年之監督、主演の松田るか、母親役の堀内敬子、父親役の浅野忠信らが登壇し、『かなさんどー』の魅力や撮影時のエピソードなどを語った。
レッドカーペット
4月21日(日)、国際通りにて、お笑いコンビ・ガレッジセールのゴリこと照屋年之監督の6年ぶりの最新作『かなさんどー』に出演する松田るか、堀内敬子、浅野忠信、照屋監督ほかキャストの面々がレッドカーペットに登場。沖縄らしい色合いのワンピースの松田るかと堀内敬子とタキシードに身を包んだ照屋監督と浅野忠信ほか『かなさんどー』に出演しているキャスト計11名。当日は、晴天に恵まれるとともに、現地やファンの人々に温かく向かい入れられ、大きな歓声の中、すがすがしく笑顔で練り歩き、サインや写真撮影に応じた。
製作発表/照屋年之監督・特集イベント
登壇者:松田るか、堀内敬子、浅野忠信、福田 淳(プロデューサー)、Kジャージ、前川守賢、照屋年之監督ほか
続いて同日16:10より那覇文化芸術劇場なはーと大スタジオにて映画『かなさんどー』製作発表/照屋年之監督・特集イベントが実施され、前半は、「沖縄映画祭と照屋監督の軌跡」と題して照屋監督の今までの作品について、相方の川田がMCを務め、トークが実施。
続いてその他多くの短編作品の中でも2019年第11回沖縄国際映画祭上映作品)『NAGISA』を選び、江口のりこが泣くシーンについて語る。江口は、子どもを堕すシーンで、カメラに向いてなかなか泣けなかったとのこと。粘り強く5分待ち続け、「あー、江口さん泣けないかー。カット! 江口さん気持ち入らないですか?」と近寄ると「え! 泣いている!? びしょびしょ!」と驚き。実際は、照明の反射によるものでカメラに映らず実際には号泣しており、謝罪したエピソードを紹介。
次に2016年第8回沖縄国際映画祭上映作品『born、born、墓音』を原案に日本映画監督協会新人賞をはじめとする映画賞を多数受賞した長編作品2作品目の2019年第11回沖縄国際映画祭上映作品『洗骨』では、実際に今でも沖縄で残っている「洗骨」という文化を知り、映画化を決めたという。
そして最後2021年第13回沖縄国際映画祭上映作品で、今回の『かなさんどー』の前身となった短編『演じる女』については、『洗骨』で主演だった奥田瑛二が照屋監督と同郷である満島ひかりに引き受けたほうがいいと伝えたとのこと。大女優が短編に、そして低いギャラで出演していただけるのかと思っていた照屋監督だったが、それでも引き受けてもらったことについて感謝の意を表した。
そんな短編を今回長編として蘇らせた『かなさんどー』について、相方の川田は俳優陣がすごいと感心する。特に若い頃から見てきた浅野忠信は、今では海外で活躍する名俳優。そんな浅野に緊張していた照屋監督だったが「とても腰が低い」と浅野の低姿勢に驚いたというエピソードで、前半は終了。
続いて16:30〜『かなさんどー』出演者が登壇する製作発表会を実施。キャストの登壇前にはMCから、本作がトロント日本映画祭への出品が決定したことが発表された会場では、大きな拍手に包まれた。MCの呼び込みによりステージにキャストの面々が登壇すると、自身の出身地沖縄でのイベントなのに「(自分一人の時と)全然盛り上がりが違うな」とジョークを述べ、ましたても会場は笑いに包まれた。
そして主演の松田るかは「本日はお越しいただきありがとうございます」と元気に挨拶し、登壇者の面々が順番に挨拶。そんな中プロデューサーの福田は、「皆さんのあくが強すぎてなにも言うことないです」というと「福田さん、あなたが一番あくが強いよ」と照屋監督がツッコむと挨拶から大盛り上がりとなった。
かなさんどーについて話しが進んでいくと完成したことについて照屋監督は、「コロナの時期に映画が撮れなくて苦しい時期の中、プロデューサーの福田さんが「『洗骨』に感銘を受けたから制作費を出すよ、と言ってくれたのがきっかけでした」と製作のきっかけについて振り返る。福田は、「面識もないのに照屋監督とお会いして、映画撮りましょうよと伝えると暗い感じだったんです。そして昨日お会いしたら信頼していなかったっていうんです(笑)」と語ると、すかさず「このビジュアルで、しゃべり方も軽いから、絶対にIT詐欺だと思った(笑)」と暗かった当日の理由を語り、本作が完成するまでを笑いを織り交ぜなら説明した。
完成した作品について浅野は「台本を読んで、演じて、知っているつもりだったけど、出来上がりを観た時に、もうなんかなんとも言えない気持ちになりました。そして1番は、美花役の松田さんに本当に助けられてるんだなっていうのを実感して。最後はもうすごい切ない気持ちになり、とても感動しました」。
そして堀内は「自分の映画を観て、客観的に観られるかなと思ってたんですけど、ほんとに両目から、太い涙がばーっと出て。どうしてこんな私泣いているんだろうって分からないぐらい熱い涙が流れてしまいました。本当に感動的な作品です」、松田も「いつももっとこうすればよかったとか反省の目線で観るタイプなんですけど、それでもばーっと出てくる涙を抑えられないくて」と3人とも改めて観たときは、感動し新鮮な気持ちであったと感想を述べた。
Kジャージは、「どっちかといえば、自分は客席の立場だったと思っていたし、キャストの皆様見て自分が出演する実感がわかず、気づいたら終わっていて。ただ改めて観ると出ていたんだなと感慨深いです」と自身が映画に出演したことを完成した映画を観て改めて知った。
主題歌を担当した前川は「かなさんどーを21歳に時にレコーディングして、かれこれ40年は歌ってきたのですが、今回は生で演奏させてほしい」と監督に直談判し、撮影時は、実際に役者さんが歌っている横で生で演奏。その様子を観て「かなさんどーって本来はこういう歌だったんだな、涙も出るんだなっていうのは40年も経てわかりました」と切実に撮影の際に感じた。
福田は、「条件反射のように堀内さんを見たら涙が出てしまうという怪現象が起きるほど感動しました」と本作も絶賛。
そして脚本について福田は「監督と一緒に脚本をなんども直して。この映画の中だけで3、4本の映画のエッセンスが入ってるぐらいの分量やり取りしたんで、その成果が十分出た映画だと思います」とさらに褒めた。
そんな照屋監督は「最初はダメなんです。直してくれ直してくれっていうから、例えば、女性とかでも、この鼻が気に入らないからって整形でちょっと高くするとか、まぶたが気にいらないとか、ほっぺをもうちょっと上げてみたいな。それで最終的に誰?だから脚本書いたの美容外科の人です」何度もやり直したことについて、ジョークを入れながら大変さについて振り返る。
主演の松田るかのキャスティングについて照屋監督は、元々出演されている作品を観ている中で決めたと語る。そして「悪女のシーンでは、騙されて本当に那覇でマンションを買っちゃうと思うぐらい。でも少女の役をする時は、本当に可愛くて。そのときにこの子今年のTHE Wに出るな」とふざけるも、「短編を満島ひかりさんが演じられていたのは、プレッシャーが凄かったです。ただ照屋監督は、演出でも“俺らはずっと待てるし、そのためにやってるから”と言ってくださって、演じれました」と照屋監督について語った。
浅野は、照屋監督について「(監督は)出る側の人でもあるじゃないですか。だから、ほんとに我々俳優の細かい、ちょっと心情とかもとても理解してくれますし、僕自身が役になるために時間をかけさせてくれたりとか、必要な分だけの時間をかけて、必要な分だけエネルギーを出させてくれるよう、本当にサポートしてくれました」と言いつつも、「僕が勝手で海で泳いだりして……」というエピソードを暴露すると、すかさず照屋監督は、「大迷惑だよ、病気している役なのに海で日焼けしているんだから!!」と盛大にツッコみ、キャストも会場も爆笑。
堀内は「撮るものを明確に頭の中にあるので無駄がないし、すごいテキパキとした現場でスタッフの皆さん含めすごく心地よかったです」と振り返った。
撮影時のエピソードについて松田は、「浅野さんが入院していているシーンを撮影していて、近隣のスーパーに入院着のまま行ったんです。だから浅野忠信が沖縄で入院していると思われたんじゃないかと」と会場を爆笑させ、しかも買いたいものはTシャツで、堀内も購入したということでエピソードでも夫婦のようなほのぼのする話も。
そして本作の終盤では、前川の三線による主題歌「かなさんどー」を生で披露した後、照屋監督は、「リハーサルは以上」!と締め、またまた会場は笑いの渦に包まれた。
最後のメッセージとして松田は、「とにかく伝えたいことがたくさん出てくるような映画で、観終わったら身近な方にかなさんどーって愛しているよと、1番大切な人に伝えたくなるような映画です」。堀内は「みんなで短い期間一生懸命作った作品で本当に愛溢れる作品となりました。ぜひ劇場で観てほしい」。浅野は「今聞いた主題歌を聞くだけで泣きそうです。この“かなさんどー”という言葉が僕の中に染み込んできますし、それはきっと多分観た方にも伝わると思うんで、ぜひ楽しみにしてください」と本作がとても感動できて、そして愛について描かれているということを伝えて終了となった。