日時:11月4日(土)
会場:TOHOシネマズ六本木ヒルズ
登壇:深川麻衣、井浦新、松浦りょう、柳ゆり菜、大木亜希子(原作者)、穐山茉由監督
元SDN48の大木による実録私小説を、元乃木坂46の深川主演で映画化した本作は、メンタルを病み仕事も辞め、貯金も底をつきそうなアラサー女子の安希子が、友人からの勧めで56歳の一人暮らしサラリーマン“ササポン”と同居生活を送りながら、徐々に日常を取り戻していく姿を描いています。
深川が演じた安希子は、「自分自身にも突き刺さる言葉がありました。ササポンの『まあ、適当に』という言葉が大好きです」と語り、井浦が演じたササポンは「なにかを突きつけるというよりも、寄り添ってくれる作品です。
実体験に基づく本作を映画化する際、穐山監督は「丁寧に作ること」に重点を置いていました。「元アイドルという特殊な(職業だった)人たちというよりも、誰が観ても親近感が湧く等身大の人を描きたくて。壁にぶち当たった人が乗り越えていくところを丁寧に描きたいと思っていました」と制作を振り返り、「特に女性同士の会話は些細なところまで、リアルに拘って考えました」とその制作に対するこだわりを語っていました。
原作者の大木は、「劇中で深川さんが残高10万円の素敵な歌を歌ってくださっていましたが、実際は残高3万円だったんです」と告白し、大木の残高を不憫に思った姉がお金を貸してくれて残高を”かさ増し”してくれたことを明かしました。彼女は「月々3000円の返済で、つい先日返済が終わりました」とほっとした表情で報告し、会場から大きな拍手が沸き起こりました。
感動的な公開に出席した深川は、自身が演じたキャラクターである安希子に共感する部分が多く、安希子のセカンドキャリアの歩みと重ね合わせることができたと語りました。さらに、映画内でササポンが語る名言について尋ねられ、特に「まあ、適当に」という言葉に魅了されたと明かしました。彼女はこのフレーズがポジティブな方向転換や新たな取り組みへの意味を含むものだと感じており、その意味に共感していることを述べました。
井浦は、ササポン役を演じる際のアプローチについて話し、「つんドル」の魅力を探求しました。彼は作品が観客に寄り添うものであると述べ、さらに「ポップコーンを食べながら観るのが似合う、やさしくてゆるやかな作品であると思います」と述べ
一方、松浦と柳は、深川演じる安希子の友人役として出演し、彼女の物語を共に紡ぎました。実際に彼女たちにも共感を呼ぶセリフがあったようで、松浦は特に「ハワイ行きたいレベルのカジュアルさで死にたいって言うな」というセリフに心を打たれたと語りました。柳も、「幸せになれるより不幸になっても二人なら何とかなるかな、と思って決めた」というセリフに感銘を受け、恋愛だけでなく、仕事や友情にも適用できると述べました。
深川麻衣と大木亜希子は、アイドルとしての経験を経て、現在は異なる分野で活躍している仲間と言えます。しかし、今まで歩んできた道のりは必ずしも平坦なものではありませんでした。深川に、アイドル時代の思い出や葛藤を尋ねると、「卒業を決めたときは“えいや!”で勢いというか、何とかなると出て行ったんです。仕事を始めた前半、いろいろな壁にぶつかりました。看板グループの名前がなくなり、個人として勝負しなければならなくなったとき、それまで俳優として経験を積んできた方々と一緒に立つことがすごく恥ずかしく感じて…。どうしたらいいのかと本当に悩みました。本当にやっていけるのか不安でした」と葛藤を打ち明けました。
さらに、井浦新もモデルから俳優へとキャリアを築き、現在はファッションブランドのディレクターなど、さまざまな分野で活躍しています。MCからアドバイスを求められた際、「アドバイスと言っても恐れ多いですが、もし自分にとってのこととしたら、何を言われようが、否定されようが、自分が好きだと思うこと、ひたすら信じて続けることです。そうすれば、いつか誰かがあなたを見つけてくれるでしょう。そのとき、自分がずっと好きで続けてきてよかったと思えるはずです。その日が訪れたとき、少しでも報われることでしょう」と、好きなことを追求し続ける重要性を説きました。
また、この日(11月4日)は「イイ推しの日」。登壇者たちが互いにイイ推し(お気に入りの人やもの)について語り、会場を盛り上げました。穐山監督は深川麻衣に言及し、「深川麻衣さん!安希子が誕生日を一人で過ごそうと思ったら、友達がサプライズで訪ねてきたシーンなんですが、3人の仲の良さが感じられました。深川さんはその場面で感極まって涙ぐんでしまったんです。本当にピュアな人だなと感じました。彼女のまっすぐさが光っていましたね」と振り返りました。深川は照れくさそうに笑いながら、「本当にうれしくて、感極まってしまって…。テストのシーンで“おめでとう”と友達がサプライズを仕掛けてくれて、2人が隠れて待っているんです。でも、頭がちょっと見えていたんです。それがすごくかわいくて。こんな素敵な友達がいるなんて、安希子は本当に幸せだなと思って、うれしくて涙が出ちゃいました」と撮影裏話を語りました。
さらに井浦は「もう一人は、大木さん。すべてがちゃんとしている。そのちゃんとしていることはどこから生まれてきたんだろうと台本を読んで、作品を見たんです。こういう経験を経て、人とのコミットしてくる具合、話し方、礼節があって、話すたびにちゃんとしているなと。何より人として素晴らしいです」と絶賛しました。すると、大木が感極まった様子で、「ありがとうございます…」と涙をこぼす場面も。井浦は「何で泣いてるの!やめましょうよ!」と笑顔で言うと、大木は「全然ダメダメです。今日モデルになったみんなが来てくれたんですけど、皆さんに形づけてもらって。人によって人が作られるのはこの映画のテーマにもなっています。こんな自分でも立ち上がれたから、皆さまに悩みがあっても立ち上がれるんだよとお伝えできていたら嬉しいです」と、観客に向かってエールをおくりました。
舞台挨拶の終わりに、深川は「大木さんが生み出してくださって、映画になって関われたことをとても幸せに思っています。映画の中にはいろいろな愛の形が出てきます。生きていると、いろいろなしがらみや理不尽なこともありますけど、身近にある幸せを皆さんが改めて見つめるきっかけになったらうれしいです。“適当に”これからも頑張っていきましょう。本当にありがとうございました!」と、深川の大好きな本作の台詞“適当に”を用いて、最後に元気よく挨拶しました。
ギャラリ-
映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」作品情報
公開日 | 2023年11月3日公開 |
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キャスト | 監督:穐山茉由 原作:大木亜希子 出演:深川麻衣 井浦新、松浦りょう、柳ゆり菜 |
配給 | 日活=KDDI |
制作国 | 日本(2023) |
上映時間 | 114分 |
公式サイト | http://tsundoru-movie.jp/ |
(C)2023「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」製作委員会