『エスパーX 探偵社 さよならのさがしもの』、『サイキッカーZ』、『つむぎのラジオ』などを手掛けた木場明義監督の最新作・映画『タイムマシンガール』が池袋シネマ・ロサにて 1 月 25 日(土)より、宇都宮ヒカリ座にて 2 月 7 日(金)より公開となる。
公開に先駆け木場明義監督のオフィシャルインタビューが到着した。本作への想いやドラマ「パリピ孔明」や「さっちゃん、僕は。」に出演していた葵うたのとバレリーナであり、人気恋愛リアリティショー番組『オオカミちゃんとオオカミくんには騙されない』で話題を呼び、俳優やアイドルとしても活躍している高鶴桃羽のオーディション時の話、そして編集から音楽、さらには DCP 化まで、すべてを手掛ける木場監督自身の事を深く掘り下げたインタビューとなっている。
さらに、本作と同じくタイムリープ作品であり池袋シネマ・ロサで上映中の「侍タイムスリッパ―」への想いなど、余すことなく語っている。
さらに1 月 18 日(土)からは木場監督が自らセレクトした過去の選りすぐりの作品を集めた木場明義特集上映も実施。インディーズ映画界で今もっとも注目の監督のひとりとなるので この機会に木場ワールドを堪能ください。
― 昨今、「侍タイムストリッパー」などタイムスリップモノが流行っていますが、本作「タイムマシンガール」はいつごろから構想されたのでしょうか?
前作『エスパーX 探偵社 さよならのさがしもの』(2023 年 4 月公開)が一通り終わり、2023 年 5 月ぐらいから、次回作を考え始めました。別の脚本を書いていたいのですが、途中で「タイムスリップモノをやりたい!」と思い立ち、一気に書き始めました。
僕は 30 歳になったころ、自主映画を作ったり友達の MV(ミュージックビデオ)を 作ったりと、ほとんどバイト生活だったんですが、なかなか評価されず…次の映画を撮ってどこの映画祭にも引っかからなかったら「映画監督を辞めよう」と思っていたんです。
― それは、大きな覚悟ですね。
その時、自分が最後にやりたいことを詰め込んだのが“タイムスリップモノ”だったんです。『タイムスリップ×3』。というタイトルで、この作品に出てきたアイディアも一部は『タイムマシンガール』にも入っています。主人公も誰もタイムスリップしたことに気づいてない状態が続く話で、少しだけタイムスリップすると過去の自分がいて過去の自分に「あいつ下着泥棒だから捕まえろ!」とか言われて、それを追いかけて自分で自分を追いかけるというめちゃくちゃ意味が分からない作品です(笑)その作品で初めて映画祭に招待いただきました。「蓼科高原映画祭」や大阪の映画祭などで上映していただき、観客に笑ってもらえました。この作品が映画祭に受からなかったら、映画監督を辞めようと思っていたんですとスタッフや関係者の方に話したところ、励ましていただき、ああ、、まだ映画監督をやっていていいのかな…と思い今に繋がります。そんなこともあって自分としては“タイムスリップモノ”には思い入れのあるテーマだったのでまたいつかやりたいなと思っていました。
― タイムスリップと深い縁があったんですね。今回の作品もとても面白かったです。
今回もなにかアイディアはないか、とまずは思い付く単語をノートにひたすら書き出しました。その中で、【タイムマシン】と【マシンガン】という言葉が浮かんできて、それをかけて【タイムマシンガン】はどうかと思ったときに、【タイムマシンガール】という言葉が閃きました!何かいい言葉だなと思って、女の子がタイムマシンになってびっくりしたらタイムスリップするのはどうかなって思って、そうしたらタイムマシンなので誰かを乗せなきゃいけないから、びっくりさせる人も一緒に乗せてバディものみたいな二人の話にしようと思いました。それで作っていたら女の子の友情みたいなところが、結構強めに出たかなって感じています。
― たまたま浮かんだ言葉から着想されたのですね。撮影はいつ頃されていましたか?
撮影が 2024 年の 5 月末の 1 週間ですね。
撮影する前は“タイムスリップモノ”は、同じロケ地での撮影が繰り返されるので、特殊効果もそんなにいらないし予算的にも時間的にも割と凝縮できてタイトでスムーズに進むと思っていました。ただ、現実はそんな思い通りはいかなかったんです。例えば、ロケ地の使用時間が急遽変更となったり、(タイムスリップの)繰り返しのシーンで天候が変わってしまったり、エキストラさんも同じように動いてもらうよう指示をしなければならないなどめちゃくちゃ大変でした。
― 映像だけ見ていると本当に同じシーンだと思っていたのですが、そんな苦労があるんですね。そうなるとキャストさんもきっと撮影が過酷なものになっていましたか?
キャストの皆さんはとても優秀な方々ばかりだったのでスムーズに進められたので本当にありがたかったです。同じことを繰り返しているように感じますが莫大なセリフ量があるんです。特に主演の葵うたの(可子役)さんとバディになる高鶴桃羽さん(千鶴役)はとにかくセリフを噛まないんですよ。本当に助かりました。
― お二人とも魅力的なキャラクターでした。キャスティングはどのように決まりましたか?
ふたりともオーディションです。何名かの方に来ていただき可子役と千鶴役のセットでいろいろ組み合わせを変えました。葵さんと高鶴さんにも可子と千鶴どちらの役も演じてもらいました。葵さんは、資料に主人公の可子という役柄が地味って書いていたからなのかガッツリ地味な服を着てきたんですよ(笑)でも、僕の中ですぐに一番いいなと思いました。
高鶴さんは、アイドルもされているので僕の大変な現場だけど大丈夫かなとか色々考えてしまったのですが、カメラマンの長谷川朋史さんとキャスティング会社の方々からもこのふたりの組み合わせが良いと満場一致となってキャスティングが決まりました。
― ほかのキャスティングはどうですか?遠山景織子さんは役も含めてびっくりしました。
遠山景織子さんは、今回の駿河というキャラクターを面白いと感じて下さり応募をしてきてくださいました。遠山さんはかつてコント番組にも出演されてたこともあり、コメディが元々お好きな方なので現場もすごく楽しんでくださりノリノリでアイディアもどんどん出してくださってキャラクターを分かってくださっていると実感しました。ちなみに、遠山さんが劇中で来ているヒョウ柄の衣装は、(衣装部も兼ねている)僕が用意しました(笑)
木ノ本嶺浩さんが演じた井手という男は、頭が良すぎるちょっと変わったキャラクターです。木ノ本さんはセリフの量も膨大でやや早口で喋ってるシーンがあるんですが、あのシーンは特に凄いです。
一人二役で、同じ場面にふたりの井手が登場し台本が 6 ページに渡る長いセリフを話すシーンがあるのですが、木ノ本さんが全く間違いないでやってくれました。本当に凄いです。感謝しかありません。
―これも見どころの一つになりますね。ほかにも撮影中の思い出などありますか?
実は、以前からお世話になっている清水崇監督にゲスト出演していただいています。撮影が難航する中、現場で清水監督に「あまり寝れてないんですよね」と伝えたところ、「僕も寝てないんだよ」と普通におしゃっていて、元気な感じでご出演いただきました。やっぱり映画監督って超人だなと、改めて実感して、僕も頑張ろうと思いました。
それから撮影の最終日に、どうしてもスタッフの人でが必要となってしまい下山天監督に相談したところ現場に助っ人に来てくださいました。カメラマンやドライバーに入っていただきました。
その時に残り2カットで撮影が終わる時に、なぜか涙が止まらなくなってしまったんですよね。撮影が終わる寂しさなのか今までの想いが溢れてしまってラストのシーンを撮った時には、恥ずかしいのですが…嗚咽するぐらい泣いてしまいました。
― 清水監督と下山監督が参加されている!?普通なかなかないですよね。そもそも清水崇監督とは、どこでお知り合いになったんですか?
劇場でチラシ配りをしていた時に、たまたま舞台挨拶で僕の作品の前の監督のゲストで清水崇監督がいらしたので、そこで初めてご挨拶をさせていただき、『つむぎのラジオ』(2019 年 6 月)のチケットをお渡ししたところ、実際に見に来て下さり気に入っていただいたことから交流が始まりました。そこから、ご飯に行ったりカラオケに行ったりしていて、僕の映画に出演をオファーしたところ出て下さいました。実は、僕も『ミンナのウタ』(23 年 8 月公開)『あのコはだぁれ?』(24 年 7 月公開)に少し出演しているんです。そんな感じでお互いの作品に出演し合ったりしています(笑)。
― ちなみに、本作で出演されたアクトレスガールズの皆さんについてお聞かせ下さい。木場監督はそもそもプロレスがお好きなんでしょうか?
プロレスは、実を言うと 2000 年くらいから好きになったんです。ジャイアント馬場さんが亡くなった時、好奇心として 2m もあるジャイアント馬場さんを生で生前見たかったと後悔したんです。あんなにもすごい人生をおくった方を見る機会はあったはずなのに生で見られなかった事を後悔しました。そこで、アントニオ猪木さんが引退していましたが、イベンで見れる機会があったので絶対に見に行こうと。僕は人見知りではあるのですが客席からみんなと一緒に【1、2、3、ダーッ!】をやったら、そこからプロレスが大好きになりました。
それで、今回の作品に関わってもらおうと思って「アクトレスガール」様にご挨拶させていただく機会をいただきました。その後、代表の方と一緒に飲みに行った際、安川結花/惡斗さんも同席いただきました。彼女は元々俳優で『がむしゃら』(2015 年 3 月公開)というドキュメンタリー映画に主演されているんですが、壮絶な人生を歩んでいる俳優でありプロレスラーなのでお話を伺うと役者がやりたいとのことで、すごく俳優魂があるんだろうなって感じていたため出演してほしいと依頼しました。そこで彼女がメンバーをまとめて協力してくれたのですごく感謝してます。
― 木場監督ご自身のことを伺いたいのですが、いつごろから映画監督を目指されたのでしょうか。
中学の頃は、全然映画は見ておらずバンドマンを目指していました。ギターの練習をしてましたがあまり上達しなくて、高校に入学してからもあんまり周囲と合わなくて友達もあまりできなかったのですが、その時に高校が大宮だったので当時はまだ映画館がいっぱいあって一人で映画を見るようになったんです。当時の自分には邦画はあまり刺さらず…洋画を見始めたところ『ミッドナイト・ラン』(88 年)、『ヤングガン』(88 年)、『ミザリー』(90 年)など、エンタメ性が素晴らしくアクションシーンがあり涙ありとすごく感動をした記憶があります。そこで漠然と映画監督になりたいと思って、大学選びも高校の図書館にあった【なるにはブックス】の「映画監督になるには」を読んで映画サークルのある文系の大学を探しました。大学で映画サークルに入り 1 年生に映画を教えるためにサークル内でお金を出し合って 8 ミリの短編映画を撮るという企画がありました。僕はやる気満々だったので 2 つ企画を出したところ、僕が出した 1 つの企画が選ばれて初めて自分の企画の映画を作ることになりました。
― 大学生ということは 18、19 歳くらいですか?どんな映画になりましたか?
19 歳の時です。そこで初めて気付くんですよね…あれ、映画監督って何すりゃいいの?って。何していいかわからなかったんですが、カットの割り当てとか意外と面白くできたんです。初めて撮ったのはアクション映画でした。
― どんなアクション映画でしたか?
主人公の男の子が、明日初めてのデートなのになぜかテロリストから追われながらデートに向かい結果的に世界は救われるお話です。
今は見せられたものではないですが…これが楽しくて、こんなにイメージしたことを現実化していく作業っていうのは楽しいのかと初めて実感しました。その辺がやっぱり原点で、未だに作風が変わってないかもしれません。
大学卒業後、僕は映画業界に入りたかったんですけど日本映画が斜陽ということもあって、まず映画業界の募集もなくコネもない状況だったのでどこにも入れず。それでも諦めきれずに 1 年間アルバイトでお金貯めて少しでもコネを作りたくて映像塾という映画学校に入学しました。そこで、学校で機材を借りて初めて 16 ミリで映画を撮ることができました。学校のコネで期限切れのフィルムを安く買えたりしました(笑)。
― そこから道が開けていったのですか?
コネが欲しくて入ったんですが、学校からは AD の派遣会社の紹介されました。自分で映画を撮るか、もしくはこれまでの全部を捨てて AD になるか…悩みましたが、映画を作り続ける道を選びました。そんな中、30 歳に近づき先ほどお話をしました最後の一本として撮った“タイムスリップモノ”が映画祭で評価いただくことになります。
― そこに繋がるんですね。ちなみ、本作でも木場監督は衣装もすべてご自身で準備してポスタービジュアルや予告などの宣伝周り、音楽の編集やさらにはDCPまですべてご自身でこなしたと聞いていますが、どこを目指されているのでしょうか?
そうなんです。キャストの衣装はほぼ全て自分のものなので衣装も担当しています。その他、ポスタービジュアルや予告編、DCP などの上映素材もすべて担当しました。他には音楽は AI ソフトを使い自分のイメージを音楽に作っています。 また、特殊効果や編集などポストプロダクションも全部担当しています。自主映画で、これまで自分でやってきたので、ソフトの使い方が分かるようになりました。でも、もちろんプロの方にお任せする方が絶対いいんですよ。やっぱりそういう専門家の方が持っている機材や知識の方が良いものです。
ただ予算が限られているため、独学で試行錯誤しながら自分でやるようになったら自然とできるようになりました。小道具も作りますし、脚本も勉強をしながら書き続け、本数を重ねるうちに書くスピードも上がりました。
― 何でもできるんですね!いろいろなことができたら、一番面白い作業って何なんですか?
面白いのは、アイディアを出してる時ですかね。1 番最初に愛用しているアイディアノートに向かってお話のスタート地点を考えてる時が面白いです。
―最初に“タイムスリップモノ”がお好きだと話もされていましたが、監督の中で一番好きなタイムスリップ作品は何ですか?
そもそも SF 小説がすごく好きです。そこが原点だったりします。やっぱり藤子不二雄先生ですね。藤子不二雄先生は、本当にすごいなと思った短編漫画があります。締め切りを過ぎても漫画を描けない主人公が、四畳半ぐらいの部屋で頭抱えて部屋をぐるぐる走っていたらタイムスリップして、過去の自分に会ってそれで手伝ってもらって漫画を描くみたいな話です。
時間は螺旋状に回っているからタイムスリップできるという、その理屈がすごいんです。そこが原点として強くあります。「ドラえもん」の幻の最終回にも影響を受けました。
―そうなんですね。 ちなみに“タイムスリップモノ”で、池袋シネマ・ロサからスタートした『侍タイムスリッパー』は見ましたか?
僕も一観客として話題になっていたので、見に行ったら、普通に面白ったです!やっぱり何がいいなって思ったのは、池袋シネマ・ロサさんの上映で、インディーズ業界の周りの X で感想が飛び交っててそこがすごかった!僕からはそこまで特別な宣伝をしていた印象もなかったので、お金をかけて宣伝してたわけじゃなく蓋を開けたら満席となっていた。ということに、シンプルに世の中がインディーズ映画だから無視してるわけじゃない、ちゃんと面白そうと思ったら、映画を見に来る気持ちを世間の人がまだ持ってるっていうのが、僕の中ですごく励みになりました。俺も頑張っているけど届いていないわけではないかもしれないっていう励みにもなりましたし希望にもなりました。まだまだ頑張んなきゃ、まだ俺もなくはないぞと思いました。
― この作品も話題になると思います。最後に本作の見どころをお願いします。
不意にタイムスリップしてしまう事で巻き起こる様々なエピソードや、肝心な時にタイムスリップできないもどかしさを楽しく見て頂ければうれしいです。観ていてきっと笑顔になっていただけると作品だと思います。そして個性的でとても魅力的なキャラクターたちと、見事に演じてくださったすばらしい俳優たちの演技にも注目してほしいです。たくさんの困難を乗り越えてようやく完成させたこの作品、とても楽しい映画になりました。多くの人に見てもらいたいです!地味で目立たない日常を送っていた可子という女性に起こった不思議な出来事を是非体験してください!映画を見終わった後、可子と千鶴のふたりの事を好きになってくれればうれしいです。
木場明義監督の特集上映も開始!
劇場公開決定に伴い、長年に渡りインディーズ映画界で活躍してきた木場明義(こばあきよし)監督の特集上映が 1 月 18 日(土)より7日間、池袋シネマ・ロサにて開催される。
低予算ながら独創的なアイデアに溢れた、過去15 年の木場明義が詰まったこの機会にしか観る事が出来ないバラエティに富んだ珠玉の作品群17本。
詳細はこちら
葵うたの 高鶴桃羽 木ノ本嶺浩 立川志の太郎 重岡サトル 遠山景織子(特別出演) 嶋村太一 安川結花/惡斗 鹿目凛(でんぱ組.inc) コウガシノブアレス 夏葵 武蔵 木村桜輔 汐月なぎさ 才原茉莉乃 キラ☆アン 茉莉 MAR 永井絵梨沙 蒼乃ありす 千夜ヒナタ みあ朝子 研菜々美 青葉ちい ほりかわひろき 清水崇 穂紫朋子 須賀由美子
監督・脚本・編集 木場明義/ 制作 杉山葉・前橋佑樹/ 助監督 茅嶋直大/ 撮影 長谷川朋史/ 撮影応援下山天/ 録音 中山昭彦・玉置太郎/ 助監督応援 山本晃大/ ヘアメイク 原早織(Kleuren)/ ヘアメイク助手 山中美礼乃・大石桃加(Kleuren) / 車両 石川祐羽/ キャスティング 石野美佳・戸髙彩希(SKALY)/
スチール 金田一元/ プロレスマスク制作 南由加/ 企画協力 小田憲明(株式会社清月エンターテイメント)/ 協力 アクトレスガールズ/ 川崎競輪/ 美粧協力 STAR OF THE COLOR・RICE FORCE / 宣伝協力 ブラウニー/ 製作・配給:イナズマ社
2025/日本/105 分/カラー/DCP/シネマスコープ/ステレオ
©2025 イナズマ社
1 月 25 日(土)公開