3月15日から新潟市で開催される第2回新潟国際アニメーション映画祭のレトロスペクティブ部門で、高畑勲監督の特集が開催される。スタジオジブリ作品のほか、長編デビュー作「太陽の王子 ホルスの大冒険」をはじめとした高畑監督のすべての長編アニメーション作品が上映される。
「かぐや姫の物語」「火垂るの墓」などの傑作で、2018年の逝去後も世界のアニメーション界に大きな影響を与え続ける高畑監督。スタジオジブリ時代だけでなく、東映動画(現東映アニメーション)での長編デビュー作「太陽の王子 ホルスの大冒険」をはじめ全長編アニメーション監督作品を上映するほか、TVアニメの監督デビュー作となる「狼少年ケン(第14話)」「母をたずねて三千里(第1話、第2話)」などの上映や、長年高畑作品に関わってきたプロデューサーをはじめ、関係者トークも交えてそのキャリアを検証する。
昨年3月の第1回映画祭は、世界で初の長編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、世界で大きな注目を集め、長編コンペティション部門の審査委員長に押井守氏、大友克洋監督も来場したレトロスペクティブ上映、さらには片渕須直監督、りんたろう監督、渡辺信一郎監督やメカニック・デザイナーで漫画家の永野護氏ら、名だたるアニメ関係者が集まった。
先日第2回の長編コンペティション部門のノミネート作品も発表され、世界29の国と地域から昨年の2.5倍となる49作品の応募があり、12作品が選出。日本からは塚原重義監督「クラユカバ」、岡田麿里監督「アリスとテレスのまぼろし工場」が選ばれている。新潟市にて3月15日~20日開催。
<高畑勲監督作品関連トーク>
◆3月17日(日) 「高畑勲と『セロ弾きのゴーシュ』を巡って」
登壇:なみきたかし(アニメーションプロデューサー)×才田俊次(アニメーター)
◆3月17日(日) 「(高畑勲)の『かぐや姫の物語』とそれ以後」
登壇:高橋望(MC) ×西村義明(スタジオポノック代表取締役)×櫻井大樹(サラマンダーピクチャーズ代表取締役)
◆3月19日(火) 「高畑勲という作家のこれまで語られていなかった作家性」
登壇:片渕須直(アニメーション映画監督)×横田正夫(日本大学文理学部心理学科特任教授)
<上映作品一覧>
「太陽の王子 ホルスの大冒険」英題:Little Norse Prince Valiant
制作年:1968年 作品時間:82分
海辺に父と二人で住むホルスは、岩男のモーグの肩に刺さっていた二本の剣を手に入れた。その剣は太陽の剣と呼ばれる名剣で、その剣を鍛え上げ使いこなせるようになった時、ホルスは太陽の王子と呼ばれようとモーグは言う。父を失ったホルスは、一切を焼き払うと、父の遺言に従い人々のいる北の村に向かってコロとともに舟出した 。再びこの地に帰ることはない。途中ホルスは悪魔グルンワルドに弟になるよう誘われるが断ったため、崖から落とされてしまう。ホルスは、倒れたまま流氷にのって村に流れ着いた。村の一員として受入れられたかに思われたホルスだが、グルンワルドのたくらみで村に送り込まれた一人の少女ヒルダのために村人たちの不信を買い、とうとう村を追い出されてしまう。悪魔が勝つかに見えたが、ヒルダの心の奥底には密かに人間らしさへの憧れが兆していた。そして悪魔の攻撃が始まった…。
「パンダコパンダ」
英題:The Adventure of Panda and Friends
制作年:1972年 作品時間:35分
ミミ子ちゃんは、竹林の中にあるお家でひとりで暮らしています。
法事のために遠くに出かけてしまったおばあちゃんの留守をしっかり守っているのです。そんなミミ子ちゃんのもとに、小さなパンダの子パンちゃんとそのお父さんパパンダがやってきます。ひとりでもへっちゃらなミミ子ちゃんだけど、優しいお父さんとかわいい子どもがいたらもっとステキでしょう! 3人は一緒に暮らし始めるのでした。
しかし、ある日動物園の園長さんが、パパンダ親子を探しにやってきてしまいます。
「パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」
英題:The Adventure of Panda and Friends: The Circus in the Rain
制作年:1973年 作品時間:39分
ミミ子ちゃんとパンちゃんとパパンダは、毎日楽しく暮らしていました。そんなある日、ミミ子ちゃんたちの留守に怪しい二人組が……。そこへ帰って来たミミ子ちゃんは「どろぼうさんを見るのは初めて!」と喜びますが、二人組は一目散に逃げ帰ってしまいました。
せっかくの面白そうなお客さんがいなくなって、ちょっとがっかりのミミ子ちゃんですが、パンちゃんは自分のご飯が食べられていることに気付きました。パンちゃんが鼻をクンクンさせて家中を探します。パンちゃんのベッドにもぐりこみ、スヤスヤと眠っていたのは……なんとトラの子供でした! 二人ともびっくりして家中を走り回って大騒ぎです……。
劇場版「赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道」
英題:Anne of Green Gables
制作年:2010年 作品時間:100分
1908年に出版されたモンゴメリ原作の「赤毛のアン」は100年余りの時を経て、いまなお衰えることのない人気を誇る小説です。日本では、1979年にテレビアニメ化され、原作を忠実に映像化した作品として、強い支持を受けています。本作「赤毛のアン~グリーンゲーブルズへの道~」は、全50話あるテレビシリーズの中の1~6話を、演出の高畑勲自らが監修して再編集した劇場版です。
「じゃりン子チエ」
英題:Chie the Brat: Downtown Story
制作年:1981年 作品時間:110分
日本一不幸な少女チエちゃん大活躍!明日はまた明日の太陽がピカピカやねん。
竹本チエは大阪の通天閣近くに住む小学5年生。バクチと喧嘩に明け暮れるヤクザな父親テツに代わって、夜はホルモン焼き屋を切り盛りする、大人顔負けのしっかりものの女の子である。
母親ヨシ江とは別居中だが、チエはテツに内緒でヨシ江と会うのを楽しみにしていた。母親に戻ってきてもらうためには、テツがまともに仕事に就かなければ…。
チエは父親の就職の面倒までみる働きぶり。心優しい人たちによる、抱腹絶倒の人情喜劇!
「セロ弾きのゴーシュ」
英題:Gauche the Cellist
制作年:1982年 作品時間:63分
受賞歴:1981年度 毎日映画コンクール大藤信郎賞受賞
映画がまだ、活動写真と呼ばれていた頃、あるいなか町のはずれに、ゴーシュという、青年が住んでいました。
ゴーシュはセロ(チェロ)の演奏者です。近づいた市民音楽会のために毎日、小学校の教室を借りて、楽団員たちは練習にはげんでいます。一生懸命やっているゴーシュですが、何故かうまく演奏できません。家に帰ってからも夜遅くまで練習しています。すると誰かが戸をたたく音。あけて入って来たのは、二本足で歩くネコでした。ゴーシュは困惑しながらも相手をして練習を続けました。その翌日はかっこうが訪れてきて、ゴーシュと合奏しました。そしてその翌日はたぬきがやってきました。いつしかゴーシュは…。
「火垂るの墓」
英題:Grave of the Fireflies
制作年:1988年 作品時間:88分
<受賞歴:日本カトリック映画賞/文化庁優秀映画/国際児童青少年映画センター賞/ブルーリボン賞特別賞/シカゴ国際児童映画祭 長編アニメ映画部門最優秀賞/モスクワ児童青少年国際映画祭 グランプリ/日本アニメ大賞/シカゴ国際児童映画祭 児童権利部門最優秀賞>
清太14歳、節子4歳。焼け野原に、はかなく光る命がふたつ。
太平洋戦争末期。神戸に暮らす清太と節子の兄妹は、空襲で親も家も失ってしまう。親戚の家に身をよせたものの、邪魔者扱いされた二人は、大人の力を借りずに防空壕で暮らすことを決めた。夢見たのは、自由気ままな二人だけの暮らし。しかし幼い兄妹を待っていたものは、想像以上に厳しくつらい日々の始まりだった…。
「おもひでぽろぽろ」
英題:Only Yesterday
制作年:1991年 作品時間:119分
<受賞歴:第42回芸術選奨文部科学大臣賞>
1982年、夏。東京での生活になんとなく物足りなさを感じているタエ子は27歳のOL。彼女は10日間の休暇を取り、姉の結婚で出来た山形の親戚を訪ねて旅立つことにしました。東京生まれ東京育ちのタエ子にとって“田舎”は憧れの場所です。そんな彼女には奇妙な連れがいました。ふとしたきっかけで思い出した小学5年生の頃のワタシがどうしても脳裏から離れないのです。タエ子は思い出と共に山形行きの夜行列車に揺られていきます。小学5年生。それは女の子が一つの階段を上っていく、さなぎの季節なのかもしれません。そして今、自分にまたさなぎの時期がめぐってきたのだろうかと、タエ子は思いをはせていきます。
「平成狸合戦ぽんぽこ」
英題:Pom Poko
制作年:1994年 作品時間:119分
<受賞歴:1995年アヌシー国際アニメーション映画祭 長編部門グランプリ>
ニュータウンの開発が進む東京郊外の多摩丘陵。昔ながらの平和な暮らしをおびやかされたタヌキたちは、先祖伝来の「化け学」を復興させ、人間たちに戦いを挑むことを決意する。タヌキたちはあの手この手で人間撃退作戦を展開するが、そこはタヌキのすること、なかなか成果が上がらない。そこへ四国からタヌキの三長老が到着し、化け学の粋を凝らした「妖怪大作戦」の発動が宣言された。一生懸命だけどどこか抜けているタヌキたち、彼らが繰り広げる大作戦の顛末は…。
「ホーホケキョ となりの山田くん」
英題:My Neighbors the Yamadas
制作年:1999年 作品時間:104分
<受賞歴:第3回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門優秀賞>
「腹へった、なんかないか」と酔って帰宅したたかしに、まつ子はどらやきとバナナを持ってくる。こんなもん食えるか、と怒る亭主に平然と背を向け、妻はテレビを見続ける。だが、妻は栄養を考えてバナナとミルクを夫のために持ってきてやったのだ。やがて、たかしはそのバナナをうまそうに食う。このほか、原作の四コマ漫画を元にしたエピソードが集まって一つの作品を形成している。
「かぐや姫の物語」
英題:The Tale of The Princess Kaguya
制作年:2013年 作品時間:137分
<受賞歴:2014年 毎日映画コンクール アニメーション映画賞>
この地で、ひとりの女性が生きた。笑い、泣き、喜び、怒り、その短い生の一瞬一瞬にいのちの輝きを求めて。
数ある星の中から、彼女はなぜ地球を選んだのか。この地で何を思い、なぜ月へ去らねばならなかったのか。姫が犯した罪とは、その罰とはなんだったのか――。日本最古の物語文学「竹取物語」に隠された人間・かぐや姫の真実の物語。姫の犯した罪と罰。製作期間8年、製作費50億円の娯楽超大作。ジブリヒロイン史上、最高の“絶世の美女”が誕生。
<TVアニメ特集>
「狼少年ケン」
英題:KEN, THE WILD BOY
演出:月岡貞夫、高畑勲、矢吹公郎 ほか
第14話「ジャングル最大の作戦」 演出:高畑勲
制作年 :1963年 作品時間:25分
舞台はヒマラヤ山脈を望むドカール地方のジャングル。
人間であるケンが、狼族の一員としてジャングルの平和を守る為に活躍する。白いライオンに授かった「王者の剣」を牙とし、双子の子狼、チッチとポッポをお供に今日もジャングルを駆け回るケン。
彼を見守る仲間・片目のジャックや長老のボスと共に、ジャングルに厄介ごとを持ち込む人間たちや、大熊や虎の三日月キズを相手にして、「二本足の狼」として生きるケンが見せる、野性味溢れる自由奔放な爽快アクション!
「母をたずねて三千里」
英題:From the Apennines to the Andes (Marco)
第1話「いかないでおかあさん」 / 第2話「ジェノバの少年マルコ」 演出:高畑勲
制作年:1976年 作品時間:各30分
イタリアの港町ジェノバに住む少年マルコは、両親と鉄道学校に通う兄とともに慎ましく暮らしていたが、生活は日増しに苦しくなり、とうとう母がアルゼンチンへと出稼ぎに行くことになる。寂しさをこらえ見送るマルコだったが、やがて母アンナからの便りが途絶えてしまう。母を捜しに行きたいというマルコの固い決意に父もとうとう旅立ちを許し、マルコの長く苦しい旅が始まるのだった。マルコは持ち前の明るく元気な性格でアルゼンチンでの様々な人との出会いや出来事を乗り越え、ついにトゥクマンの町で母アンナと再会する。