作家として活躍しつつ映像のフィールドでも短編作品を送り出してきた桜井亜美監督の初長編となる『パーフェクト・シェアハウス』が3月15日より東京の新宿K’s cinemaで公開されるのを前に、作品のミステリアスな空気を伝える予告編が解禁。また、メインキャストの佐々木ありささん、濱田龍臣さん、平井亜門さん、於保佐代子さんのコメントが公開されました。
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1996年に小説「イノセントワールド」で鮮烈な作家デビューを果たして以降、作家として小説や詩集など50冊以上の著作を送り出すだけでなく、3人の監督によるオムニバス『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』(2015年/安達寛高監督・桜井亜美監督・舞城王太郎監督)や短編『シチュエーション ラヴ』(2021年)など、映画監督としても精力的に活動してきた桜井亜美監督。
その初の長編監督作となる『パーフェクト・シェアハウス』は、どこにあるのかわからないシェアハウスで「疑似カップル」として動画配信をおこなっている4人の男女の関係が、ある事件をきっかけに大きく変化していくというストーリー。
シェアハウスで暮らす4人のひとりで全盲の女優・藤野凛を大河ドラマ「いだてん」(2019年)で注目を集めた佐々木ありささんが、凛の疑似カップルの相手で吃音障害を持つ元・介護士の佐野遣都を子役時代から活躍する濱田龍臣さんが、それぞれ演じてダブル主演。
そして、もうひと組のカップルのふたり、人気アイドル配信者の天王寺翔を映画やテレビドラマで話題作への出演が続く平井亜門さん、エリート医師の朝霧芽衣を桜井監督の『Girl recruits her “God”』(2017年)で主演をつとめた於保佐代子さんが演じるのに加え、物語の鍵を握る男・黒須を日本映画界に欠かせない俳優・津田寛治さんが演じています。
このほど解禁された予告編は、凛と遣都が浜辺に立つ十字架に向かって歩くカットで幕を開け、楽しいはずの疑似カップル生活もつかの間、凛、遣都、翔、芽衣それぞれが抱えるものを感じさせるセリフや、誰に向かって放たれているのかも気になる黒須のセリフなどがベートベンのピアノソナタ「月光」に乗せて映し出され、観る者の想像力を刺激するミステリアスな映像となっています。
また、佐々木ありささん、濱田龍臣さん、平井亜門さん、於保佐代子さんの、メインキャスト4人が、次のようにコメントを発表しています。
藤野凛役:佐々木ありささんコメント
この役をやるにあたって「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」という視覚障害者の方が案内してくださる純度100%の暗闇を体験 し、全盲の方々にもいろいろ生活について教えていただく体験をしました。見えない世界が実はすごく豊かだということを全身で感じましたし、ガイドのみなさんもとても明るい素敵な方ばかりでお話できたことがとても嬉しかったです。この役と誠実に向き合いたいと強く思いました。
この作品の台詞回しは桜井監督ならではの世界観に包まれていて、他の映画ではみたことがないものが多く、そういうところが私は好きですし、皆さんにどう受け取ってもらえるかが楽しみです。
佐野遣都役:濱田龍臣さんコメント
映画の中で凛が遣都に「人間は生きるために人であることをやめる瞬間がある」という言うシーンがあり、この言葉に僕自身はっとさせられました。自分を守るために自分を変える。その「変える」には色々な変え方があります。攻撃してくる人がいるからカラにこもったり、逆に放置されているからもっと表現をする方向に変わっていったり…。僕も役者として存在するために自分は 色々形を変えているんだなと、この言葉で気付けました。
この作品名には「パーフェクト」という言葉がついていますが、「完璧なシェアハウスって何だろう?」と考えさせられますよね。完璧なんて無理ですし、完璧な人なんて世の中にはいません。けど、なぜこのタイトルがついているのか…、ということも、この映画を観る人に考えてほしいと思います。
天王寺翔役:平井亜門さんコメント
翔という役は、自分本来のキャラクターや今まで頂いた役とは全く違い、かなり影が濃いキャラクターです。これまではいい人の役が8、9割で、そろそろ影のある役柄もやりたいと思っていたので嬉しかったです。リーダー的立ち位置の動画ライブシーンと、徹底してネガキャラとなるシェアハウスでの日常シーンの落差をつけることによって、影と仮面の違いを生み出せるように意識して演じました。
この映画は桜井亜美さんの書いた数少ないSFであり、同時にすごくピュアな恋愛ストーリーでもある、というところが大きな魅力になっていると思います。SFと純愛がしっかり溶け合っている物語に注目してほしいです。
朝霧芽衣役:於保佐代子さんコメント
芽衣と私は同世代で、仕事での人との向き合い方とは違う恋愛の向き合い方とのバランスに悩む感覚にとても共感しました。芽衣は医者を目指して子供の頃から勉強一筋に打ち込んできた女性で、恋愛に溺れる経験は初めてです。そういう意味でもシェアハウスに今まで経験したことのない恋愛への期待を抱いていて。だから初めて人を好きになった時に、どうしたらいいか分からな い、けれどでも止められない芽衣の気持ちを、演じながらひしひしと感じて、辛いと思いました。ハウスのドクターとして診察をこなす自立した強いエリート女性としての部分と、恋愛で見せる依存的ですごく感情的な弱い部分の対比を監督とその都度相談してすり合わせしながらお芝居をしていきました。
シェアハウスでの動画配信という、現在の社会ではリアリティを持って受け止められるモチーフを用いて桜井監督が現代に向けて放つ『パーフェクト・シェアハウス』は、すでにイギリスのレインダンス映画祭(Raindance Film Festival)認定映画祭である第5回ジャパンインディーズフィルムフェスティバル(Japan Indies Film Festival)で審査員特別賞を受賞。高い評価を得て3月15日より東京の新宿K’s cinemaで公開されます。
『パーフェクト・シェアハウス』ストーリー
所在地も明かされていない謎の埋立地のシェアハウスで、オーディションに受かった4人の男女が擬似カップルライフの動画配信をしている。全盲の女優、凛と吃音障害を持つ元介護士の遣都、人気アイドル配信者の翔とエリート女医の芽衣の2カップルは、今だけの嘘の恋愛を疑いながらも楽しい生活を演出していた。しかし、ある夜の事件で凛に対する性加害事件の疑惑が勃発し、4人のリアルな関係は少しずつひび割れていく。それと同時にハウスの本来の目的だった実験も予測不能な結末を迎えることに……。
パーフェクト・シェアハウス
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- 佐々木ありさ 濱田龍臣
平井亜門 於保佐代子
三輪隆 葛堂里奈 園山敬介 / 津田寛治
- 佐々木ありさ 濱田龍臣
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- 企画・制作・脚本・監督:桜井亜美
- 制作プロデューサー(機材):岩井俊二
- プロデューサー:越川道夫/篠崎真哉/土井美奈子
- 撮影監督:SHAUN NEO
- 照明:鳩宿くれた/高木秀樹
- 録音:臼井勝/色川翔太
- 編集・グレーディング:桜井亜美/菊井貴繁
- 製作・配給:Eternal Wind Factory
- 配給協力:フルモテルモ
- 2024年/カラー&モノクロ/シネマスコープ/5.1ch/DCP/107分|PG12
2025年3月15日(土)より 新宿K’s cinema にて公開