Q1:監督が感じた魅力とは?
戦後80年の節目に広島の平和をテーマにした作品を作ろうと決めていたので、主人公はぜひ広島にゆかりのある俳優さんで、脚本の主人公のイメージに近い若者を探していて、曽田陵介さんにお願いすることになりました。
曽田さんは島根のご出身で、広島工業大学を卒業されていて、広島に住んでいたからこそ肌で街を知っている感じがあり、それがうまく作品に生きたと思います。それは、単に広島弁ができるということではなく、広島の街の雰囲気を知っていて、広島の人たちが平和をどう見ているかとか、若者の目線で感じ取っているところが良かったと思います。その上で、曽田くんが楽しく街を歩く姿や、彼が変化していく様があり、等身大の大学生を自分の中に見つけて表現してくれていたと思います。主人公のモッチはどこにでもいる様な明るい学生で、人生の不安と迷いが入り混じっていて、普段は表に出さない心の奥にある広島の街についての思いがあり、それが時に溢れ出てくる、というデリケートなシーンがいくつかあります。それを曽田さんはうまく表現してくれたと思います。それができたのは、彼なりに平和のテーマに真摯に向き合ってくれたからだと思います。
Q2:作品の中で印象に残るシーンとは?
水族館で曽田陵介さん演じるモッチに、秋田汐梨さん演じるアヤカがアメリカ留学を考えていることを告げるシーン。恋愛関係にまだ発展していない二人の雰囲気がよく出ているのと、この物語の始まりが描かれています。そして、もう今はないマリーナホップのマリホ水族館がとても切ない雰囲気を醸し出します。
Q3:撮影中のエピソードをお聞かせください。
撮影前に、ジョン役のアメリカ人俳優のチェイスを曽田さんに紹介すると、ほとんど英語が話せないのにその日から一緒に食事をしたり、曽田さんの部屋でチェイスと二人で脚本を読み合っていて「どうやってコミュニケーションしてるの?」と僕らは驚いていました。その甲斐あって曽田さんとチェイスのシーンはどれもとても楽しいものになりましたし、日本語と英語でやり取りする複雑なシーンを二人は見事に演じてくれたと思います。そんな曽田さんの積極的な行動がいろんな溝を埋めてくれ、彼のオープンな姿勢、明るい性格がこの作品全体を主役として引っ張ってくれたと思います。
▼監督の語る曽田の印象に残る「水族館での二人」のシーン
秋田汐梨(アヤカ役)

Q1:監督が感じた魅力とは?
奔放なヒロインのアヤカを目まぐるしく変わる表情で演じてくれた秋田汐梨さんは、とても耳が良いのだと思います。台詞を発音するコントロールが天才的で、若い人の広島弁は独特で、広島に馴染みのない人が真似るのはかなりハードルが高いのですが、それをいとも容易にやってのけ、更に、アヤカはそれなりの英語力が求められるややこしい役だったはずですが、普通に英語で芝居をされていました。後で聞くと、英語は全く話せないということで、耳の良さと芝居カンの良さでここまでできるのかと驚きました。
秋田さんはどんなシーンでも役柄の個性を膨らまして何かを足してくる。それはキャラクターを豊かにしてくれるので僕はそれをあまり邪魔しないように彼女に自由にさせてじっと見守るということが多かったような気がします。何かの状況を与えると、それに自在に反応していく。その様がとても面白い女優さんで、彼女の個性が、モッチを振り回しながらこの物語の大きな原動力になりました。
Q2:作品の中で印象に残るシーンとは?
アヤカが何度か平和について語るシーンがあります。
素直に平和を語れない主人公モッチと違い、アヤカは平和についてにまっすぐに自分の思いを語れる子で、そのアヤカの純真さは、広島の人が持っている平和への思いを彼女なりに形にしてくれたと思います。その彼女の涙は、撮影してる時のスタッフにも響きました。
Q3、撮影中のエピソードについてお聞かせください。
一度秋田さんが体調を壊されたことがあって、そのタイミングで夜中から朝までの撮影があった時に、スタッフもとても心配をしたのですが、彼女は全くそれを感じさせない芝居の様子で、難しいシーンを普通にこなしていました。そのプロ意識にも感心しましたし、周りに気を遣わせないようなさっぱりしたところもあるので大人だなあと感心しました。でも撮影最終日が秋田さんの誕生日で、最後のロケーションとなった朝日が照らす屋上でバースデーケーキをプレゼントしてみんなでお祝いしました。その日、21歳になったと聞いてその若さに改めて驚きました。
▼監督の語る秋田汐梨の印象に残る「平和の街について語る」シーン
八嶋智人(UFO博士役)

Q1:監督が感じた魅力とは?
八嶋さんは、前作の「鯉のはなシアター」という映画でご一緒させていただいていたので、八嶋さんが不思議な博士を演じるイメージが脚本を書いている時からありました。八嶋さんにどんなボールを投げても打ち返してくださるという安心感もあり、かなり無茶ぶりを今回もさせていただきましたが、どのボールも見事に打ち返してくださいました。時には英語のセリフがあったり、時には脚本にないシーンで即興芝居をしていただくというようなこともありました。八嶋さんなら問題なくやってくださるだろうという奇妙な安心感があり、僕も自由に提案させていただきました。それは僕にとってとてもありがたいことで、八嶋さんの自由さが僕らの作品を大きく広げてくださるからです。また、撮影現場で僕が演出で困った時に、八嶋さんが助け舟を出していただいたり、それによってシーンが良くなると言う事も何度かありました。監督として難しい作品に挑んでいる時に、同じ方向で作品を考えていただけるのは本当に助かりました。
Q2:作品の中で印象に残るシーンとは?
撮影の中盤で、八嶋さんが演じる「UFO博士が大きな学会で講演している」ところを撮影したい!と思いつき、実際に大きなホールで本当の集会をしている平和団体のイベントに突然お邪魔して、八嶋さんにステージにご登壇いただき撮影させていただきました。会場にいる平和団体の方々は突然映画の撮影が始まり理由もわからず、ぽかんとされていましたが、八嶋さんが即興で、宇宙と平和のつながりについてスピーチを始められ、八嶋さんが腕を上げ大きな声で「U・F・O!」というと、会場の方々もつられて「U・F・O!」と言いながら腕を上げておられ、とてもユニークなシーンになりました。
Q3、撮影中のエピソードについてお聞かせください。
僕は撮影中、いろんな準備もあるので、夜に俳優やスタッフたちと食事には行かないようにしているというか…、撮影中はあまり自分に余裕がありません。そんな時に、八嶋さんが若い俳優たちを束ねて、食事に何度か連れて行ってくださり、撮影のことを話したり、芝居について話し合ってくださり、撮影の外でもこのチームを支えてくださいました。特に秋田汐梨さんは、以前八嶋さんと舞台で親子役をやられていたことがあるそうで、本作で八嶋さんとまた共演できたことをとても喜んでいました。
▼監督の語る八嶋智人の印象に残る「UFO博士の講演」シーン
『惑星ラブソング』
出演:曽田陵介、秋田汐梨、Chase Ziegler、八嶋智人、西川諄、Raimu、谷村美月、佐藤大樹(友情出演)、川平慈英、さいねい龍二、塚本恋乃葉、西村瑞樹、キコ・ウィルソン、松本裕見子、田口智也、HIPPY
監督・脚本・編集:時川英之
プロデューサー:時川英之 横山雄二
配給:ラビットハウス
(C)『惑星ラブソング』製作委員会
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