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映画『Cloud クラウド』菅田将暉が黒沢監督をお祝い!アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー受賞記念

第81回ヴェネチア国際映画祭で観客を熱狂の渦に巻き込んだワールドプレミアにつづき、第49回トロント国際映画祭への出品、そして第97回米国アカデミー賞®国際長編映画賞の日本代表作品にも決定! アジア最大級の映画祭の釜山国際映画祭では、同祭のメイン・プログラムでありその年の話題作や世界で影響力のある監督の新作を上映する「ガラ・プレゼンテーション部門」の上映に選出されるなど、ますます盛り上がりを見る映画『Cloud クラウド』が全国公開中。

10月15日(火)、第29回釜山国際映画祭にて、<アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞>を受賞した黒沢 清監督をお祝いすべく、主演・菅田将暉も駆けつけた受賞記念トークイベントを開催! 公開後の今だからこそ話せる裏話盛りだくさんのトークを繰り広げた。

<アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞>は、その年のアジア映画産業に大きく貢献した人物を表彰するもので、過去には是枝裕和監督や音楽家の坂本龍一氏も受賞した賞。菅田は冒頭の挨拶で「黒沢監督、おめでとうございます。世界中にファンの方がたくさんいて、今更かもしれませんけど、すごく嬉しい気持ちです」と祝福。その一言に黒沢監督は「がんばりました」と笑顔で応えた。

続けて、釜山国際映画祭での思い出として、映画『新感染』シリーズや、菅田も出演した Netflixドラマ「寄生獣 -ザ・グレイ-」でも知られる韓国のヨン・サンホ監督との現地で交わしたやりとりについて披露。ヨン・サンホ監督は『Cloud クラウド』公開に際して本作を絶賛し、「主演の菅田将暉は本作で、黒沢 清監督の独創的で明確な映画の色を完璧に表現している。それは単に『芝居が上手い』ということではなく、それ以上の意味として、映画を俳優が支配していると言える」と菅田の存在感を称賛していたが、黒沢監督はこの「菅田将暉が映画を支配している」という表現がいたく気に入り現地でヨン・サンホ監督本人にこの表現を「使わせてもらいたい」とお願いしたというエピソードを明かす。そして、黒沢監督は「あまりに良い表現なので、それ以来、取材を受けると、そのように言うことにしています(笑)」「何人もの人から『脚本で最初から菅田将暉を当て込んで書いたのか?『(菅田さんを)イメージして書いたのか?』と聞かれたんですよね。『いやいや、最初は誰とも決めずに書いたんだ』と言ったけど、菅田さんのためにつくった映画みたいに見える――それは、何となく映画のテイストを菅田さんが全部コントロールしているような雰囲気を最初から持ってしまっているってことなのかなと」と満足そうに語った。

「寄生獣」に出演した際のヨン・サンホ監督との思い出について聞かれた菅田は「日本のカルチャーに詳しいし、リスペクトがすごくあるので、当然、黒沢監督の作品も大好きなのもわかる。特にホラーとかスリラー、怖い作品がタイプでそこを熱弁されていました」と述懐。さらに、怖い映画を撮る監督ながら「人柄はすごく柔らかくてフランク。『仕事が終わったら、すぐ帰ってお父さんをやってるんだ』と言っていました」と明かし「僕が一時期、韓国のチキンム(韓国風の大根ピクルス)にハマって作ってたんですが、その話をしたら『僕も毎日、家で作ってるよ』と言ってて<おいしそうなチキンムをつくりそうな人だな>と思いました」とそのパーソナリティについても親しみを込めて語ってくれた。

続いてこの日は、事前に募集した質問に黒沢監督と菅田が回答! 「この映画で、もらった一番嬉しい感想は?」という最初の質問に菅田は「同業ではない普通の友達から『めっちゃ面白かった』『次に会う時、話聞かせて』と。このテンションでの『面白い』という感想をもらったのは初めてかも。いわゆる『食らった』『泣いた』というテンションの『面白かった』ではなく『すごく良い時間だった』というテンションの『面白かった』は初めてでした」と身近なところからの嬉しい感想を明かし、黒沢監督は、事前の予備知識なしで観たという観客からの感想として「僕も『びっくりした』とか『いまの日本映画で、こんなのありなんですね』という感想は嬉しかったですね」と答えた。そして菅田は、黒沢監督の言葉にうなずきつつ「“語彙力失ってる系”の感想も嬉しいですね。ヤバいもの体験した――何て言葉にすればいいか分からないけど、なんか楽しかった、みたいな言葉も多かったですね」と、これまでにない映画体験ができる本作ならではの感想が多く寄せられていると報告し、笑顔を見せた。

さらに「二回目以降の観客に向けて『ここに注目してほしい』というポイントは?」という質問に黒沢監督は「どこで、どんな音楽が入ってくるかを気にしていただくといいかもしれません。『こんなところで入ってくるの?』とか、普通は入りそうなところで、全然入ってないとか、『こんな曲が流れるかな』というところで、全くそうといえない曲が流れたり、それなりに考えて、凝って入れています」と音楽による仕掛けを明かし、菅田も「僕は、引っ越した時にかかる音楽がすごく好きです。『こんなオシャレなフランス映画に出られて……』という気持ちに。一瞬なれました(笑)」と本作での音楽が果たす役割の大きさについて言及した。

さらに質問は「ラスト・シーンで菅田さん演じる吉井が見せる“表情”について<笑い顔なのか? 修羅(怒り)の表情なのか? どんな感情を表現しようとしているのか?>」というものにも及び、菅田はネタバレを避けるために言葉を選びつつも「完成作を観て『こんな感じなんだ!』と驚きました」と振り返り、黒沢監督も「とても良い質問だと思います」と笑みを浮かべる。そして「撮っている時のことをよく覚えてます。脚本には『何となく笑ってしまう』と書いていました。僕は現場では何も言わず、菅田さんがどんな感じで演じるのか、笑うのか? 笑わないのか――?と見ていると『あぁ、なるほど。うまいなぁ。こう演じるのか』と納得しました。表情は笑っていないように見えるのですが、声で『フッ』という笑い声を一瞬いれたんですね。でも顔は笑ってないという絶妙なお芝居をされていて本当に感心しました」と菅田さんの表情、感情表現のさじ加減を絶賛した。
ちなみにこのシーン、順番的には後半のさまざまなアクション・シーンよりも以前に撮影されていたとのこと。そのため菅田は「『吉井はどうなるんだろう?』と。心身ともにボロボロになった先にスッキリするでもなく、乗り越えたわけではないけど、何か達成してしまった――不特定多数の者から、一線を越えて“何者”かになってしまった潔さみたいなものはイメージして演じました」とふり返った。

舞台挨拶の最後に菅田は、改めて黒沢監督の受賞を祝福し「嬉しい機会に一緒に登壇できて光栄です」と語り、黒沢監督は「まさにヨン・サンホ監督が言ったように、菅田将暉が支配する映画です。決してハッピーな映画ではないかもしれませんが、ダークな菅田将暉を存分に楽しんでいただければと思います」と呼びかけ、温かい拍手の中、舞台挨拶は幕を閉じた。

物語
吉井良介(菅田将暉)は、町工場に勤めながら“ラーテル”というハンドルネームを使い転売で日銭を稼いでいた。医療機器、バッグにフィギュア……売れるものなら何でもいい。安く仕入れて、高く売る、ただそれだけのこと。転売の仕事を教わった高専の先輩・村岡(窪田正孝)からの“デカい”儲け話にも耳を傾けず、真面目にコツコツと悪事を働いていく。吉井にとって、増えていく預金残高だけが信じられる存在だった。
そんな折、勤務先の社長・滝本(荒川良々)から管理職への昇進を打診された吉井は、「3年も働いたんだ。もう十分だろう」と固辞し、と、その足で辞職。郊外の湖畔に事務所兼自宅を借り、恋人・秋子(古川琴音)との新しい生活をスタートする。地元の若者・佐野(奥平大兼)を雇い、転売業が軌道に乗ってきた矢先、吉井の周りで不審な出来事が重なり始める。徘徊する怪しげな車、割られた窓ガラス、付きまとう影、インターネット上の悪意――。負のスパイラルによって増長された憎悪はやがて実体を獲得し、狂気を宿した不特定多数の集団へと変貌。その標的となった吉井の「日常」は急速に破壊されていく……。
『Cloud クラウド』

<映画『Cloud クラウド』作品概要>
無自覚な行動でネット社会に憎悪をばらまいた主人公・吉井は、知らない間に恨みを買い、匿名の集団による“狩りゲーム”の標的に。吉井の日常は急速に破壊されていく……。菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝ら豪華俳優陣が共演!見えない悪意と隣り合わせの恐怖を描く今年最大の注目作。

映画『Cloud クラウド
監督・脚本:黒沢 清
主演:菅田将暉
出演:古川琴音 奥平大兼 岡山天音 荒川良々 窪田正孝
赤堀雅秋 吉岡睦雄 三河悠冴 山田真歩 矢柴俊博 森下能幸 千葉哲也 松重豊
製作幹事:日活 東京テアトル
配給:東京テアトル 日活
©2024「Cloud」製作委員会
公式X/Instagram @cloudmovie2024
公式ハッシュタグ #映画クラウド