1967年に放送され、放送直後から抗議が殺到し、閣議でも偏向番組や日の丸への侮辱として問題視された作品が、半世紀の時を経て現代に蘇ります。『日の丸〜寺山修司40年目の挑発〜』は、2023年2月24日から全国で公開され、その公開を記念して、佐井大紀監督と外国人タレントのフィフィが招かれた公開記念舞台挨拶が行われました。
この作品は、作家・寺山修司が56年前にテレビを通じて行った「日の丸」という挑発的な実験番組を、佐井監督が現代にリブートさせたものです。街頭インタビューを通じて日本人の真実の姿を映し出すという手法が用いられており、日本や日本人が国旗掲揚に関して抱える問題に対してフィフィが率直にコメントしています。
公開記念舞台挨拶では、佐井監督が冗談めかして「こんないかがわしい映画に、こんなに多くの方に集まっていただきありがとうございます」と挨拶し、フィフィも興味深い人々が集まるのだろうと呼びかけました。
フィフィは作品について、「日の丸について描かれている作品ではない」と述べながらも、日本人が日の丸に対して持つさまざまな思いや、自分たちの思想を表現しにくいという日本人の本質について触れました。また、日本人が戦争責任のイメージを抱いていると指摘し、日本の教育や国旗に対するイメージについて言及しました。
また、舞台挨拶では、佐井監督がインタビューの過程について説明し、フィフィもインタビューされた人々の肯定的な意見が多かったことに触れつつ、否定的な意見もあったと話しました。
フィフィは日本人が国旗掲揚に対して否定的な意見を持つ背景について語り、日本の変化に対する疑問や残念な傾向に触れました。佐井監督も日本の国旗に対する感情が複雑であることを実感し、フィフィと共感しました。
フィフィは笑顔で言いながら、「私は『ここがヘンだよ日本人』に出ていたとよく言われますが、実は一度も出演していないんですよ」と述べました。それから彼女は、「ただこういう作品を観ていただいて。あらためて日の丸がうんぬんかんぬんじゃないけど、議論することってなんだろう、ディベートするって何だろうと思う作品でしたね。もう少し議論がうまくならないと。40年前から国際化といってるけど、なにが国際化が分かっていないでしょ。日本人はスポンジのように受け入れるのが国際化だと思っていて。それでどんどん日本人のアイデンティティーやスピリットが薄れていく。それは日本人のいいところでもありますけど、発信していく力が大事。日本とはこういう国だと発信する力がすごく弱くて。それは日本の教育ができてなかったこと。そこは日本人がうまくなってほしいなと思うところです」と述べ、訴えました。
佐井監督は、あるラジオ番組で日の丸についてのインタビューをした際に、質問を受けた人から「なんとか模範解答を言おうとする気持ちになって。それでいいのかなという気持ちが頭をよぎった」と言われたことがあったと語りました。そして、フィフィも同じように感じたのではないかと述べました。フィフィは、「具体的なものがないから模範解答になりがちというか。みんな迷ってたでしょ。それはやはり日の丸がシンプルなデザインだから。漠然としてるでしょ。ここがすごく日本的で。そこに意味を持たせないものにリスペクトがある。そういった文化が日本文化だと思うんです。あいまいとか、ちょっと前に流行ったファジーという言葉がありますけど、漠然とした中にわびさびというのは、外国人が分かるまでにはすごい長い時間がかかるし、それに近いものがある。何かひとつの答えを導き出すものでなくていいと。国旗というのは究極なんですよ。だからこそすごくかっこいいし、日本らしいと思っている方もいるだろうけど。『君が代』もそうですが、何か分からないでしょ。いろんな解釈ができますと、答えを求めない。確かに学校で戦争うんぬんというのは、政治的な意味で教えにくいだけでなくて、なんでこのデザインなのか分からないというところもあると思う。そこで答えを導き出さない日本人の美徳というか。スピリットや考え方を日の丸が象徴している気がしています」と指摘しました。
佐井監督は、そのために作品を20代や30代の同世代に観てもらいたいと考えていると述べました。「これがそうなるか分からないですが、それでも酒の肴になるような映画になってほしいなと思っているんです。お酒を飲みながら議論できるような。それが健全だと思うし、それを同世代としたい。そうやって社会がまわっていけばいいなと思います」とメッセージを送りました。
監督：佐井大紀
企画・エグゼクティブプロデューサー：大久保竜
チーフプロデューサー：松原由昌
プロデューサー：森嶋正也、樋江井彰敏、津村有紀
総合プロデューサー：秋山浩之、小池 博
TBS DOCS事務局：富岡裕一
協力プロデューサー：石山成人、塩沢葉子
出演：高木史子、村木眞寿美、金子怜史、安藤紘平、今野 勉
語り：堀井美香、喜入友浩（TBSアナウンサー）
