巨匠ペドロ・アルモドバル監督の初の長編英語作品で、第81回ヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』が、2025年1月31日(金)より全国公開となる。
アカデミー賞®外国語映画賞に輝いた『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)、アカデミー賞®脚本賞を受賞した『トーク・トゥ・ハー』(02)をはじめ映画界に偉大な足跡を残し続けるペドロ・アルモドバルの最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』。自身初の全編英語作品で、病に侵され安楽死を望む女性と彼女に寄り添う親友の最期の数日間を描き、第81回ヴェネチア国際映画祭で、最高賞である金獅子賞の栄冠に輝いた。ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアのふたりのオスカー女優が親友同士を演じ、繊細で美しい友情を体現する。第82回ゴールデングローブ賞では主演女優賞(ドラマ部門)にてティルダがノミネート、さらに監督の地元スペインの第39回ゴヤ賞では監督賞を含む10部門でのノミネートを果たし、アカデミー賞®へ向けて、賞レースの受賞ラッシュに期待がかかる。
この度、本作の公開に先駆けて一般客向けの試写会を実施。上映後のトークイベントに『ナミビアの砂漠』で第77回カンヌ国際映画祭、国際批評家連盟賞を女性監督として最年少で受賞した気鋭の映画監督、山中瑶子が登壇し、映画の魅力や巨匠監督の映画術について熱く語った。
ペドロ・アルモドバル監督の最新作『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』は、病に侵され安楽死を望む女性と彼女に寄り添う親友の最期の数日間を描いた物語。山中監督が生まれた時にはすでに国際的な監督として活躍していたアルモドバルだが、そんな大先輩について山中監督は「名前は皆聞いたことがあっても、作品を見たことがないという若い方も多いのでは?と思います。私がアルモドバル監督を知ったきっかけは『オール・アバウト・マイ・マザー』でしたが、毒気が魅力の監督だと思っていました。でもこの『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』はその毒気がなく、まっすぐに描かれた作品で意外でした。尊厳死を描く映画はいくつもありますが、本作はどのように最期を生きたいかについてポジティブなエネルギーで描かれた作品で、楽しく鑑賞しました」と感想を語った。
ふたりの女性の絆が描かれる本作に出演したティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアの演技について「ティルダは、性別や人間らしさを超越していて圧巻の存在感がありました。主人公マーサはティルダにしかできない役だと思います。そしてジュリアンは昨年日本でも公開された『メイ・ディセンバー ゆれる真実』が去年のトップ3に入るくらい好きだったのですが、重い病を抱えるマーサの話にとにかく耳を傾けるというイングリッドの役に完璧に寄り添っていました」と絶賛。「大親友ではなく、若い頃に知り合ったきり疎遠になっていたふたりが再び近づいていく関係性がとてもよかった。親友ではないからこそ、お互い素直に気持ちを打ち明けられることができたのだと思います。“親しい間柄の人よりも、精神的に遠い距離がある人の前のほうが素直になれる”という絶妙な人と人の距離感。実はこれ『ナミビアの砂漠』で描きたかったことでした」と自身の作品との共通点を明かした。
アルモドバル監督の映画術について話が及ぶと「アルモドバル作品は、いつもカラフルでポップだし、調度品がこだわり抜かれていて目が忙しくて楽しいです。昨年スペインに行きましたが、街中が実際にあの色使いで“本当だったんだ”と驚きました。そしてフレームの捉え方が素晴らしいです。登場人物の動きに適したさすがのフレームサイズ、ずっと2人でしゃべっているだけなのに同じような印象に陥らないフレームの作り方がすごかったです。さらっと見てしまうのですが、実はとても考え抜かれている。私はまだまだ緩慢だなと、尊敬します」と感嘆しきり。さらに物語の構成については「アルモドバル監督は人間のリアルな関係性を映画としてフィクショナルに構成する力が見事。“難病モノ”や“余命僅かモノ”の映画で良く描かれる、泣いて想いを伝えるシーンは全くない。危篤状態の時にギリギリ間に合って顔を見て涙ながらに和解した、というのは欺瞞であって、本当の和解ではないと私は思うので、手を握って看取るという嘘くさいことはしないというアルモドバル監督の冷静でいて暖かい眼差しが好きです」とうなった。一番好きなシーンについて聞かれると「ティルダが演じるマーサにあるハプニングが起きて激しく取り乱しているシーンですね。私は映画で、人が取り乱しているところを見たいので(笑)。マーサが取り乱してしまった原因はあまりにも日常のあるあるすぎる出来事で、逆に映画で描かれることはあまりないと思います。その点も含めよくできた脚本だなと思いました」と独特な視点から賞賛していた。
冒頭に述べた感想のとおり、“死”を描きながらも重苦しくなることなく軽やかに物語が進行していく映画について「アルモドバル監督の作品では、前作『パラレル・マザーズ』然り、よく人の死が描かれます。でも彼の映画から感じとれるのは、“人は亡くなったら終わり”ではないということ。今日もデヴィッド・リンチ監督の訃報があって、とても残念な気持ちでいるのですが、彼の素晴らしい作品が残っていると思うと不思議と悲しくはない。人は亡くなっても、それまで周囲に及ぼした影響だとかが何かしら継承され、残るものがある。そうやってこの映画も、死を前向きなものとして捉えているので、どんな人にもパワーと勇気をくれる映画に仕上がっているんじゃないかなと思います。大好きな映画なのでぜひ多くの方に観ていただきたいです」と熱く映画の魅力を伝えた。
ザ・ルーム・ネクスト・ドア
2025年1月31日(金) 公開
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
原作:シーグリッド・ヌーネス「What Are You Going Through」
出演:ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タートゥーロ、アレッサンドロ・ニボラ
配給:ワーナー ブラザース映画
原題:The Room Next Door|2024年|スペイン
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©El Deseo. Photo by Iglesias Más.
公式サイト room-next-door.jp
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