公開記念ティーチインイベント
日程:7月28日(日)
場所:TOHOシネマズ 日比谷
登壇:久野遥子監督、山下敦弘監督、鈴木慶一、澤部渡、滝野ますみ(音楽監督)
いましろたかしの同名マンガを原作とする本作は、人間のように暮らす化け猫のあんずちゃんを主人公とした物語。お寺で暮らす37歳のあんずちゃんを森山未來、和尚の息子に連れられた11歳の娘かりんを五藤希愛が演じた。
公開から1週間が経過し、山下は「業界の方もけっこう観てくれて、いい反応をもらえたのでうれしいです」と言葉を紡ぐ。久野は「ネットで反響を見ると、あんずちゃんのキーホルダーがカバンに入っていたり、窓辺にいたりいろんな旅をしているなと思っています」と笑顔を見せた。
実写で撮影した映像から芝居を抽出し、アニメーションにするロトスコープの手法で制作された本作。イベントでは実写とアニメーションの比較映像がスクリーンにかけられた。おしょーさんが登場するシーンを観た鈴木は「実写の動きがアニメーションに寄り添っている感じがしますね」と驚く。
山下が「おしょーさんは原作に近いフォルムなんだけど、なぜか慶一さんの雰囲気があるんですよね」と発言すると、鈴木は「(演じるときには)そこまでアニメになることは意識しませんでした。派手に動いたり、アニメっぽい動きをしようとは考えなかった」と回想。また鈴木は「体の動きが大事だから、袈裟を着る意味はあったんだね。暑くて『着る意味あるのかな?』と思ってたので(笑)」と本音をこぼし笑いを誘う。
続いて、たぬきたちがかりんの話に涙するシーンが上映。澤部は「泣く演技は実写映画にもありますが、(本作では)“アニメ・マンガ的”な涙の表現になるじゃないですか。その絶妙さがすごく奇妙で面白いですよね。それにしても、本当に暑かったことを思い出します」と述懐する。鈴木が「僕はたぬきが、ボーッと立ってるだけのシーンが一番好きだよ」と言及すると、澤部は「細かいところにいろんなものが詰まっていますよね。ディテールの世界がなんて豊かなんだろうと思います」と頷く。
本作では、実写撮影の現場で録音した音声をそのまま使用している。滝野は「実写の映像を最初に見て『この演技を残したほうがいいんじゃないか』と思いました。現場の雰囲気を残したほうが面白いアニメーションになるんじゃないかと感じたんです」とコメント。また彼女は「かりんちゃんは、セリフで自分の感情を語らないキャラクター。逆立ちの練習をしたり、お母さんの写真を見るベッドでのシーンに感情が表れていると思い、ベッドの軋み音などは時間をかけて作りました」と明かした。本作の音楽を手がけた鈴木は「てっきり出演だけかと思ってました」と切り出し「今回は音楽を作る段階で、実写の映像やセリフの音声があった。これが、イメージを膨らませるのに非常に効果的でした」と述べ、滝野と密にコミュニケーションを取りながら音楽を作り上げていったことを説明する。
イベントでは、4年前に制作されたパイロットフィルムが上映される一幕も。このフィルムで音楽を担当していた澤部は「最初は本当に驚いたんですよ。『あんずちゃんがアニメになんの!?』って驚きが……伝わりますかね?(笑) だからすごく気合いを入れて曲を作りましたし、このときは原作マンガをイメージしていましたね」と当時を振り返る。山下は「パイロットフィルムのほうが、森山さんの演技が生っぽいですね」、久野は「このときより、本編のほうはかわいらしい方向性でお芝居していただきましたね」と口にした。
物語
雷の鳴る豪雨の中。お寺の和尚さんは段ボールの中で鳴いている子猫をみつける。その子猫は「あんず」と名付けられ、それは大切に育てられた。
時は流れ、おかしなことにあんずちゃんはいつしか人間の言葉を話し、人間のように暮らす「化け猫」になっていた。
移動手段は原付。お仕事は按摩のアルバイト。現在37歳。そんなあんずちゃんの元へ、親子ゲンカの末ずっと行方知れずだった和尚さんの息子・哲也が11歳の娘「かりん」を連れて帰ってくる。しかしまた和尚さんとケンカし、彼女を置いて去ってしまう。
大人の前ではいつもとっても“いい子”のかりんだが、お世話を頼まれたあんずちゃんは、猫かぶりだと知り、次第にめんどくさくなっていく。
かりんは哲也が別れ際に言った「母さんの命日に戻ってくるから」という言葉を信じて待ち続けるも、一向に帰ってこない。母親のお墓に手を合わせたいというささやかな望みさえ叶わないかりんは、あんずにお願いをする。「母さんに会わせて」
たった一つの願いから、地獄をも巻き込んだ土俵際の逃走劇が始まるんだニャ。
監督:久野遥子・山下敦弘
原作:いましろたかし『化け猫あんずちゃん』(講談社 KCデラックス 刊)
キャスト(声・動き):森山未來 五藤希愛
青木崇高 市川実和子 鈴木慶一 水澤紳吾 吉岡睦雄 澤部 渡 宇野祥平
制作プロダクション:シンエイ動画×Miyu Productions
脚本:いまおかしんじ 音楽:鈴木慶一 編集:小島俊彦
キャラクターデザイン:久野遥子 作画監督:石舘波子 中内友紀恵
美術監督& 色彩設計:Julien De Man コンポジット開発:Guillaume Cassuto
撮影監督:牧野真人 CG監督:飯塚智香 音響監督:滝野ますみ
実写撮影協力:マッチポイント
撮影:池内義浩 録音:弥栄裕樹 スタイリスト:伊賀大介
主題歌:「またたび」佐藤千亜妃(A.S.A.B)
プロデューサー:近藤慶一 Emmanuel-Alain Raynal Pierre Baussaron 根岸洋之
製作:化け猫あんずちゃん製作委員会
配給:TOHO NEXT
公式サイト:
https://ghostcat-anzu.jp