没後25年となる本日、世界の映画作家たちに絶大なる影響を与え続けているフランスの巨匠ロベール・ブレッソンの幻の傑作『白夜』が、4Kレストアで美しく繊細によみがえり、2025年3月7日よりユーロスペース、角川シネマ有楽町ほか全国ロードショーされることが決定した。本作は、ポンヌフの橋で出会った若き男女が恋と愛にうつろう四夜の物語。
画家のジャックは、ある夜、ポンヌフで思い詰めた表情をしている美しい女性マルトに出会う。翌晩、お互いの素性を語り合うジャックとマルト。ジャックは孤独な青年で、理想の女性との出会いを妄想してはそれをテープレコーダーに吹き込んでいた。一方のマルトは恋した相手に「結婚できる身分になったら一年後に会おう」と去られていた。そして今日がちょうどその一年後。マルトに熱い気持ちを抱きながらも、彼と出会えるよう献身するジャック。だが三夜目になっても男は現れず、マルトの心もジャックに惹かれ始めていた。そして運命の第四夜……。
世界の映画作家たちに絶大なる影響を与え続けているフランスの巨匠ロベール・ブレッソン(1901-99)。そのブレッソンが残した珠玉の長篇映画13作品のうち、これまで最も見る機会の少なかった『白夜』。1971年カンヌ映画祭で初公開されたのち、近年ではフランスでさえ上映不可能であったが、その美しさとはかなさは多くの映画ファンの間で受け継がれ、心の中で大切にはぐくまれてきた。その幻の逸品が2012年に日本でのみ35mmニュープリントで上映され、そして2025年、ついに4Kレストアされいっそうの輝きを纏い、いまスクリーンに蘇る。
原作はドストエフスキーの短篇。19世紀のペテルブルクを舞台にしたこの物語は、1957年にルキノ・ヴィスコンティによっても映画化されているが、ブレッソンは撮影当時のパリに舞台を移し、セーヌ河畔とポンヌフを背景に若き二人の男女を見つめていく。ジャックとマルトを演じるのは、それまでまったく演技経験のなかったギヨーム・デ・フォレとイザベル・ヴェンガルテン。映画初出演の彼らが放つみずみずしさが、見る者をいつの間にかストーリーに引き込んでいく。70年代の美しいパリの街、今なお新鮮なマルトの装い、セーヌの恋人たちをうっとりさせる歌や音楽、漆黒の川面を行きかう観光船のまばゆいばかりの美しさ……全篇を軽やかな空気が吹き抜ける。一度観たら忘れられないシーンで胸がいっぱいになる恋の映画。
劇場公開決定に際し、ポスタービジュアルが解禁となる! 「なぜ、あなたをとても好きなのか分かる? 私に恋してないからよ」という印象的なマルトの言葉が添えられ、バスに揺られながらその言葉に思いを馳せるようなジャックの物憂げな表情が切り取られている。4Kレストアされたことで繊細で柔らかな光がジャックを照らし、当時のパリの澄んだ空気が蘇った。
併せて解禁となった場面写真は、マルトが恋に落ちる下宿人の愛読書、フランス詩人ルイ・アラゴンの『イレーヌ』を手に取りページをめくるシーンが収められている。