『SKIN 短編』(18)で第91回アカデミー賞短編実写映画賞を受賞し、A24配給の長編版も発表したイスラエル出身のガイ・ナッティヴと、『聖地には蜘蛛が巣を張る』(22/アリ・アッバシ監督)で第75回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞したザーラ・アミールが監督を務める本作は、実話をベースにした社会派ドラマ。スポーツ界への政治介入や中東の複雑な情勢、イラン社会における女性への抑圧を背景に、アスリートたちの不屈の“戦い”を臨場感溢れる映像で描き出す。
今回披露された予告編は、緊張の面持ちで試合に臨むイラン代表のレイラ・ホセイニ(アリエンヌ・マンディ)の緊張した表情をとらえる。第一戦で見事に一本勝ち、続いて「支え釣り込み足」で快勝、更に「腕ひしぎ十字固め」を決めて三連勝を果たす。実況アナウンサーも「優勝候補」と彼女の技を絶賛、テレビで観戦している夫のナデルも思わずガッポーズ。
その時、金メダルに向かって快進撃を続けるレイラと二人三脚で練習を続けてきた監督のマルヤム・ガンバリ(ザーラ・アミール)に突然の電話が掛かってくる。声の主はイラン柔道協会、敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるためレイラを「棄権させろ」という命令だった。「わざと負けたくない」と拒否するレイラに、マルヤムは「国の命令よ」と厳命する。さらにレイラの前に政府の工作員が現れ、拘束された父親を救いたければ「命令に従え」と迫る。
レイラとマルヤムの間で何かが起こっている。監視カメラでふたりの異変に気づいたのは、世界柔道協会(WJA)のステイシー・トラヴィス(ジェレミー・レイ・ニューマン)だ。彼女は迷うことなく「棄権しろと脅されています」と上司に進言する。観客席では政府が送り込んだ監視員が試合場を見つめている。
政府に服従するか、自由と尊厳のために闘うか。人生最大の選択を迫られたレイラは「最後まで戦う。監督はどうする?」と告げると協会が手配したセキュリティスタッフに先導されて試合会場へと向かう。
ラストは、阿部詩によるナレーションで「私ならどうするだろうとハラハラドキドキしながら観ました。ぜひ映画館で体感してください」と語りかけ、「歴史に刻まれる一本」と絶賛するVarietyのレビューで結ばれる。
同時に解禁されたポスターは、試合会場の扉を開くレイラの姿を真正面から捉えている。「ただ、勝ちたかった」というレイラの強い決意を代弁するキャッチコピーと、強靱な眼差しが胸を刺すビジュアルとなっている。
特別予告編では、ナレーションを担当した阿部が「感動があり、自分自身の心が動かされた映画で、すごく面白かったです。ぜひ皆さんもご覧になってください」と語るスペシャルメッセージが添えられている。
阿部詩 収録後のコメント
素晴らしい映画で、見入った作品のナレーションを担当させていただけて、ありがたく思っています。日本の選手である私たちにはあまり考えられないような出来事が実話として起きていたと知り、驚きました。「戦う」ということ自体は共通していますが、動機や戦う意味が全く違い、私自身の柔道人生に置き換えて深く考えさせられました。家族が犠牲になろうとも自分の意思を貫き、戦って自由を求めていく主人公の姿が印象に残りました。特に試合に臨む際の覚悟や強い思いには、私自身も強く共感しました。
阿部詩 プロフィール
2000年7月14日生まれ。兵庫県出身。三兄妹の末っ子として、5歳の時に兄二人に続き柔道を始める。16年、高校1年の時にグランドスラム・東京の女子52㎏級で準優勝。翌年のグランドスラム・東京では優勝を果たす。18年世界選手権で金メダルを獲得、兄・一二三選手とともに世界王者となる。21年東京2020オリンピック女子52㎏級で金メダルを獲得。パリ2024オリンピックでは女子52㎏級では2回戦敗退。混合団体初戦のスペイン戦で一本勝ちするなど2大会連続銀メダル獲得に貢献した。パーク24株式会社所属。
TATAMI
2025年2月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
監督:ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール 脚本:ガイ・ナッティヴ、エルハム・エルファニ 出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン
2023年/アメリカ、ジョージア/英語、ペルシア語/103分/モノクロ/1.78:1/5.1ch
原題:TATAMI 字幕:間渕康子 配給:ミモザフィルムズ
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