映画

リリー・フランキー登壇!お母さんが一緒』公開記念イベント

「ひと」を描く映画監督 橋口亮輔作品 特別上映
日付:7月1日(月)
場所:ユーロスペース
登壇:リリー・フランキー、橋口亮輔監督

映画監督橋口亮輔が、江口のりこ、内田慈、古川琴音、青山フォール勝ち(ネルソンズ)をキャストに迎え、家族のわずらわしさといとおしさをユーモラスに描いたホームドラマ、映画『お母さんが一緒』が7月12日に公開となります。

デビュー以降、徹底して「人間」を、「ひと」を描きつづけ、時代の先駆者でありつづける橋口亮輔監督。本作の公開を記念し、改めてその魅力を探るべく、橋口監督の作品群の中から『ぐるりのこと。』『二十才の微熱』『渚のシンドバッド』の3作品を<「ひと」を描く映画監督 橋口亮輔作品 特別上映>と題し、7月1日(月)から3夜連続でユーロスペース(渋谷)にて特別上映、各回上映終了後には橋口監督が登壇する本企画。初日を飾る『ぐるりのこと。』(2008)から、俳優、文筆家、画家など多種多彩に活躍、本作で映画初主演を務めたリリー・フランキーがスペシャルゲストとして登壇し橋口監督とともに上映後トークショーを行いました。

チケットが全席完売となり満員となった場内に、映画の余韻も冷めやらぬなか現れた『ぐるりのこと。』主演のリリー・フランキーと橋口亮輔監督、そしてMCを務めたライター/編集者の門間雄介を、観客は大きな拍手で迎えた。超満員の客席を見渡しながら、驚きと感動をもって「来てくださって本当にありがとうございます」と満面の笑みでしみじみと感謝を述べる橋口監督に対して、「えー、いま『ハッシュ!』をご覧いただきましたが・・・」と、橋口監督の別作品のタイトルを上げ、冒頭から飄々とボケをかますリリー・フランキー。トークはなごやかに始まった。
『ぐるりのこと。』が公開されたのは2008年6月。今や俳優として引っ張りだこのリリー・フランキーだが、当時はまだ演技経験が少なく『ぐるりのこと。』が本格的な初主演作。リリー・フランキーを抜擢した理由を聞かれた橋口監督は、「ちょうど『ぐるりのこと。』の脚本を書き終えたとき、当時ベストセラーになったリリーさんの『東京タワー』を読んで、『あ、ここに(『ぐるりのこと。』の)カナオがいる!』と思い、リリーさんと心中するつもりです!と(出演を)お願いしたんですけど、リリーさんは一言『それはない』って(笑)。2月にオファーして、4ヶ月も一切返事がなかった」と語った。そんな橋口監督の暴露にリリーは「役作りしてたんですよ」と笑いながら「俳優さんはみんな橋口さんの映画に出たいけど出られないんです、めったに撮らないから(笑)。俺でいいんですか? というのがあって、役者でもないのに即答できないじゃないですか。『ぐるりのこと。』を撮ったあと、4年以内に撮ってくださいと言ったけど、『恋人たち』(15)まで7年かかり、『恋人たち』から最新作の『お母さんが一緒』まで9年。オリンピックだったら2回、冬季までやって来ますよ(笑)。寡作というか、本数を撮らない監督なので責任を感じますよね」と、俳優たちがこぞって出演を切望する橋口監督から直々にオファーを受けながらも4ヶ月返答しなかった理由を答えた。
橋口亮輔作品特別上映

橋口監督といえば、撮影前に行う独自のリハーサルが有名で、最新作『お母さんが一緒』でも江口のりこら出演者がリハーサルでの経験が印象的だったと口々に語っている。『ぐるりのこと。』のリハーサルについて聞かれたリリーは、「撮影前に1週間のリハーサルがあって、朝9時から夜9時まで。後にも先にもあんなにリハーサルをしたことはなくて、あれが最初で最後です。ただ台本はほぼやらないんですよ。僕が演じたカナオと木村多江さんが演じた翔子の夫婦は10年付き合って結婚した設定で、映画は二人が結婚したところから始まるんですけど、リハーサルでは二人が出会ってから結婚するまでの10年間、いわゆる“『ぐるりのこと。』エピソード1”を延々やるんです(笑)。そうやって俺たちに嘘の記憶を刷り込むんですよ」と語る。しかも台本に書かれてあるシーンでリハーサルをやったのは前半と後半にある長回しのシーンだけだという。そんななか、「いまあらためて『リリーさんのこのシーンが良かった』と思う場面は?」と問われた橋口監督は、後半の、嵐の夜のカナオと翔子の13分に及ぶ長回しのシーンを挙げた。「泣きじゃくる翔子の鼻をカナオがなめるシーン、あそこはリリーさんの唯一のアドリブです」との橋口監督の言葉に、「台本ではキスをする設定だったんです。でもキスするよりも(鼻をなめるほうが)この夫婦っぽいなって」と笑うリリー。のちに橋口監督が『ノルウェイの森』(10)や『ポトフ 美食家と料理人』(23)などで知られる映画監督、トラン・アン・ユンと対談した際、トラン・アン・ユン監督はそのシーンについて「あの瞬間、二人は本当の夫婦になったんだ!」と熱く語ったのだという。名作と評される『ぐるりのこと。』の中でも特に印象的なシーンの一つとして、観客からの人気も高いこの名場面の裏話に、客席からは驚きと感嘆の声があがった。リリーは「こういう言い方はロマンチックすぎるかもしれないけど、撮影している2ヶ月間は魔法にかかっているみたいでした。橋口組の独特の空気感というか、映画の魔法にかかっているようで。リハーサル以上のことがみんなできてしまう」と撮影の日々をあらためて振り返り、感慨深げに語った。

また、橋口監督の最新作『お母さんが一緒』で主演を務める江口のりこが『ぐるりのこと。』にリリーたち夫婦のマンションの住人役として出演していることにも触れ、橋口監督は「当日のアドリブで、風邪をひいていることにしようと(江口に)マスクをつけさせたんです。台本では『静かにしてもらえません』って一言だけなんですが、木村さんが『お前のバイクがうるさいんだよ』って言うと、江口さんは『は? バイク関係ないですよね?』って(笑)」と当時を回顧。撮影が終わったあとジャージ姿でぼうっとしている江口に「どうだった?」と橋口監督が声をかけると「……難しかった!」と言って帰って行ったのが印象的だったという。また、『お母さんが一緒』で次女役を演じる内田慈は、『ぐるりのこと。』が映画デビュー作で、佐藤二朗と新婚夫婦の役を演じていた。その話の流れから、リリーが『お母さんが一緒』で三女・古川琴音の彼氏・タカヒロを演じた青山フォール勝ちのたたずまいがいいですねと褒めると、「さすがだね、私は(笑)」と青山をキャスティングした監督は嬉しそうに自画自賛。コロナ禍に中川家のYouTubeに出ていたネルソンズを見て彼を抜擢したという橋口監督に、リリーは会場を見渡しながら「皆さん、迂闊にYouTubeとかやっちゃうとこの人(橋口監督)に見つけられて映画に出させられるから気をつけてね」と話し、会場からは笑いが起こっていた。

『お母さんが一緒』作品情報

公開日 2024年7月12日公開予定
キャスト 監督:橋口亮輔
原作:ペヤンヌマキ
出演:江口のりこ 内田慈 古川琴音 青山フォール勝ち
配給 クロックワークス
制作国 日本(2024)
上映時間 106分
公式サイト http://www.okaasan-movie.com/

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