巨匠マーティン・スコセッシが製作総指揮に名乗りをあげ、2020年のサンダンス映画祭でUSドラマ部門審査員特別賞を受賞した『Shirley シャーリイ』が7月5日(金)より公開。このたび、翻訳家の柴田元幸、ブックデザイナーの名久井直子、文筆家・イラストレーターのはらだ有彩、Youtuberの好事家ジェネら、総勢10名の著名人から絶賛コメントおよびイラストが到着した。あわせてシャーリイとスタンリー夫妻の秘密を覗き込むような本編動画が解禁された。
本作は、スティーヴン・キングも影響も受けたと言われ、“魔女”と呼ばれたゴシック作家シャーリイ・ジャクスンの伝記に、現代的で斬新な解釈を加えて練り上げられた心理サスペンス。監督はA24とApple TV+が共同制作した『空はどこにでも』(2022)などで知られ、いま最も注目を集めている奇才ジョセフィン・デッカー。シャーリイを演じたのは『透明人間』『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』などで知られるエリザベス・モス。
このたび本作をいち早く鑑賞した計10名の著名人からコメントが寄せられた。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザーら現代アメリカ文学の翻を多数行う翻訳家の柴田元幸は「手持ちカメラを多用した不安定な映像と、傷つける者傷つけられる者、護る者護られる者が容易に反転する不安定な関係とが地続きになっている――という図式にも安定しないところがまたよい」、俵万智の歌集『アボカドの種』や川上未映子の『黄色い家』など数多くのブックデザインを手がけるブックデザイナーの名久井直子は、「シャーリイの放つ妖しく強い光と影。観ているこちらも、嫌悪を愛に変えられてしまった。小説家ってこわい!(周りの小説家たちを思い浮かべつつ)」、「暗く悪しく美しいカルチャー」を紹介するYoutuberの好事家ジェネは「シャーリイという作家の日々を傍観していたつもりが、いつの間にか彼女の悪夢のような創作世界に取り込まれてしまった」、日本の昔話に登場する女の子が現代の女の子たちに打ち明けるように語りかけるエッセイ『日本のヤバい女の子』が話題を呼んだ文筆家・イラストレーターのはらだ有彩は「次に何が起こるかまったく分からず、画面は美しくスリリングで、まるで魔術の過程を見せられているかのようでした」、CDジャケットのアートワークや書籍装丁など少女や超能力をモチーフにした漫画や作品をお発表するイラストレーターのいとうひでみは「シャーリイについて、全てを語ることはできない。放っておくことも、人生を託すこともできない。ただ読んで、見て、鏡に自分を映してみることしかできない」とそれぞれにコメント。あわせて『Shirley シャーリイ』の幻想的な世界観にインスパイアされたイラストも到着した。コメント全文・一覧、イラストは以下にて。
あわせて解禁された本編映像は、長く執筆スランプ中のシャーリイを切り取ったもの。朝になってもベッドから離れる気にならないシャーリイに対して「1日中寝てる気か?」「僕の仕事の邪魔をする気か?」と夫スタンリーは、はっきりと非難を浴びせる。「そのうち元気になる」と渋々ベッドから起き上がるシャーリイだったが、それは2人にしかわからない戯れの時間でもあった。作家シャーリイと大学教授の夫のスタンリー、史実同様、絶妙なバランス感覚で保たれた夫婦の「秘密の時間」を覗き込むようなシーンとなっている。
『Shirley シャーリイ』は7月5日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
★いとうひでみ|イラストレーター
次に何が起こるかまったく分からず、画面は美しくスリリングで、まるで魔術の過程を見せられているかのようでした。
★小川公代|英文学者
シャーリイの魔女性は、彼女がローズに「わたしは魔女なのよ」と言ったり、タロットカードを引かせたりする場面でも暗示されている。シャーリーが「なぜ逃げないの?」とローズに尋ねる場面も、「なぜ主婦であることから逃げないの?」という挑発的な問いとして捉えられる。ローズにとって、シャーリイの家父長制への反逆的思考は魅惑的なのだ。
★春日武彦|精神科医・作家
これが執筆中のシャーリイの姿だったのか。驚きと納得のキメラに打ちのめされたよ。やはりシャーリイは魔女だね。そしてラスト・シーンでのエリザベス・モスの演技。あれこそ役者冥利に尽きるだろうなあ。
★川野芽生|歌人・小説家
「シャーリイ」の名を持つのは、主人公だけではない。この映画こそが「シャーリイ」であることの意味を、観終わったあと、噛みしめることになるだろう。
★好事家ジェネ|YouTuber
夢か現(うつつ)か、彼女の笑みは正気か狂気か。シャーリイという作家の日々を傍観していたつもりが、いつの間にか彼女の悪夢のような創作世界に取り込まれてしまった。その悪夢は私を社会という足枷からも自由にする。ローズがシャーリーとの共犯生活を経て、従順な妻という抑圧から解き放たれたように。シャーリイ、それは恐ろしい非日常の作家。そして悪夢を操る魔性の女───大いなる魔女。
★児玉美月|映画文筆家
「この世界は女の子には残酷すぎる」と口にしながら、
それでも時代が許す限りの紐帯を引き連れて生きてゆく女たち。
芸術創作の過程を通じて交わされるその欲望と解放は、
『燃ゆる女の肖像』をいみじくも再演するだろう。
★柴田元幸|翻訳家
手持ちカメラを多用した不安定な映像と、傷つける者傷つけられる者、護る者護られる者が容易に反転する不安定な関係とが地続きになっている――という図式にも安定しないところがまたよい。
★冨安由真|現代美術作家
生み出すことの苦しみ。現実と虚構の境目が混沌とする中で、周囲を消費しながら創作するシャーリイの姿。そして恋愛とも違う、家族愛とも違う、きっと名前のついていない愛のかたち。圧倒的な才能を圧倒的たらしめていたのは、そんな愛も憎しみも、現実も虚構も、全てを創作のために取り込めてしまうところにあったのかも知れない。
日常の隙間に立ち現れる白昼夢のように、ずっと心に残り続ける映画だと思いました。
★名久井直子|ブックデザイナー
シャーリイの放つ妖しく強い光と影。
観ているこちらも、嫌悪を愛に変えられてしまった。
小説家ってこわい!(周りの小説家たちを思い浮かべつつ)
★はらだ有彩|文筆家・イラストレーター
シャーリイについて、全てを語ることはできない。放っておくことも、人生を託すこともできない。ただ読んで、見て、鏡に自分を映してみることしかできない。
Shirley シャーリイ
2024年7月5日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:ジョセフィン・デッカー
脚本:サラ・ガビンズ 原作:スーザン・スカーフ・メレル(『Shirley』未邦訳) 撮影:シュトゥルラ・ブラント・グロヴレン
美術:スー・チャン 編集:デヴィッド・バーカー 衣装:アメラ・バクシッチ 音楽:タマール=カリ
音楽監:ブルース・ギルバート、ローレン・マリー・ミカス キャスティング:ケリー・バーデン、ポール・シュニー
キャスト
エリザベス・モス(『ハースメル』『透明人間』『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』)/マイケル・スタールバーグ(『ボーンズ アンド オール』『君の名前で僕を呼んで』)/ローガン・ラーマン(『ブレット・トレイン』『ウォールフラワー』/オデッサ・ヤング『帰らない日曜日』『グッバイ、リチャード!』)
2019年|アメリカ|英語|107分|アメリカン・ビスタ|原題:Shirley|字幕翻訳:橋本裕充
配給・宣伝:サンリスフィルム
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