公益財団法人松尾芸能振興財団は昭和54年3月に設立し、日本の伝統ある劇場芸能を助成し、振興し、もって我が国独自の文化、芸能の保存及び向上に寄与することを目的とし設立以来毎年、日本の文化・芸能の保存・向上に寄与した芸能出演者や演出・音楽・劇場芸能に高い技術を持つ方々を表彰する「松尾芸能賞」を実施してきた。
この度、第46回松尾芸能賞の受賞者が決定した。受賞者には、芸歴50周年を迎え、幅広い層から支持を得ている俳優・松平健が大賞を受賞。そして大阪の誇る歌手・天童よしみ、多くの挑戦を続ける歌舞伎役者・中村獅童ら、輝かしい皆様の受賞が決定した。
■本年の受賞者
大 賞 演 劇 松平健(まつだいら けん)
優秀賞 歌 謡 天童よしみ(てんどう よしみ)
優秀賞 邦 楽 川瀬露秋(かわせ ろしゅう)
優秀賞 演 劇 中村獅童(なかむら しどう)
優秀賞 舞 踊 尾上紫(おのえ ゆかり)
新人賞 演 劇 林佑樹(はやし ゆうき)
特別賞 邦 楽 堅田喜三代 (かただ きさよ)
功労賞 演 劇 大村崑(おおむら こん)
■第46回松尾芸能賞 贈賞理由
大賞 「松平健」
松平健が出演する劇場は実に広範な老若男女が心からその舞台を楽しんでいる。お馴染みの「暴れん坊将軍」「マツケンサンバ」は舞台から直に感じる躍動感と振付の鮮やかさは無類で、全身が反応して快楽を感じる。半世紀に渡り舞台・映画・テレビを通して良質な娯楽を提供してきた国民的俳優・歌手である松平健の存在は、二十一世紀の今日には実に稀で貴重でありその才能は賞賛に価する。
優秀賞 「天童よしみ」
スター歌手の地位を不動のものとし、天性の歌唱力と人々から愛される独特のキャラクターでCM・テレビ・映画等、数多くに出演。新歌舞伎座、明治座 等、全国主要都市の商業劇場では長期、短期の多数公演をこなし人気を博している。2024年は、2月にリリースした「昭和かたぎ」が全国のカラオケ歌唱年間1位を記録し月間記録を更新する等、めざましい活躍を見せている。
優秀賞 「川瀬露秋」
7歳から箏を学びその才能と根気、人柄から2009年に川瀬白秋の養女となる。活躍は目覚ましく白秋の母 前田白秋から受け継がれた歌舞伎黒御簾音楽への出演では絶大な信頼を得ている。「阿古屋」等、歌舞伎俳優が演奏する作品では三曲の演奏指導の他、新作歌舞伎の箏・胡弓の作曲、編曲、手付や演奏活動は多岐にわたる。九州系地歌を藤井泰和に学びリサイタルも開いて個人の演奏活動も積極的である。
優秀賞 「中村獅童」
2016年に「超歌舞伎 今昔饗宴千本桜」で若い観客の支持を集め、以後、数々の「超歌舞伎」を上演してきた。令和に入ってからは歌舞伎界を支える俳優の一人に大きく成長。古典から新作歌舞伎、舞踊まで多くの役で実力を発揮してきた。2024年は「釣女」の太郎冠者、「魚屋宗五郎」の宗五郎、「上州土産百両首」の正太郎、「権三と助十」の権三、「あらしのよるに」のガブで優れた演技を見せた。
優秀賞 「尾上紫」
父 尾上墨雪の薫陶を受けて芸を享受し今や芸歴およそ50年の成熟を遺憾なく見せている。2024年「第七回尾上紫リサイタル=花=」清元「熊野」と長唄「娘道成寺」は、近頃出色の舞台成果として多くの人の評価を高くした。特に「熊野」では、平宗盛と遊君熊野をしかと造形し、叙事と抒情の溶け合った世界を顕現するその妙は、能や歌舞伎の技とは異なる日本舞踊尾上流の美の表出と思われる感動があった。
新人賞 「林佑樹」
自主公演『林佑樹の會』で上演した「新説・雪之丞変化」における雪之丞とお初の二役、『若獅子会』に客演した「一本刀土俵入」のお蔦は伝統的な女方芸にシャープな感覚を加味し優れたものである。林佑樹の技芸は歌舞伎や新派の技法をベースとしながらも更にリアルな感覚がある。2024年、大衆演劇の一座に参加した「狐狸狐狸ばなし」の おきわ はそうした成果のひとつだった。新しい女方芸の開拓者として今後の活躍を大いに期待する。
特別賞 「堅田喜三代 」
長年に渡り新派の舞台を支える囃子方として黒御簾音楽を担当しているのは堅田喜三代だけである。祖父 中村兵藏、父 堅田喜代藏から三代に渡る囃子方の後継者でありその継承と人材発掘にも努めている。近年、他の邦楽演奏家との研究会「婀の会」を立ち上げ積極的にたゆまぬ努力で研鑽に励んでいる姿は新派という近代演劇の大きな側面を支える意味でも貴重であり特筆に価する。
功労賞 「大村崑」
“崑ちゃん”の愛称と“ロイド眼鏡“がトレードマークの大村崑は、テレビ黎明期に数々の作品に出演。「番頭はんと丁稚どん」「頓馬天狗」等で驚異的高視聴率を上げ更にCMも大ヒット。「劇団・笑いの王国」「劇団喜劇」の座長として喜劇役者のキャリアも重ねた。2024年は映画「お終活 再春!人生ラプソディ」に出演し93歳の現役役者。上方の笑いを全国区へ盛り上げた功績は大きい。