本作は、デジタル化が進んだ近未来を舞台とする。急逝した母・秋子が”自由死”を望んでいたことを知った石川朔也が、本心を知るためにAI技術を利用して仮想空間に彼女をよみがえらせる物語である。
朔也を池松、秋子の親友・三好彩花を三吉、朔也の幼なじみ・岸谷を水上が演じ、AI技術者・野崎役で妻夫木、秋子役で田中が出演した。
主要な登場人物を演じるキャストには、池松、三吉、水上、妻夫木、田中といった実力派俳優が集結している。
これらの俳優陣が、デジタル化が進む近未来を舞台に、人間の感情や存在意義を掘り下げていくことが期待される。
池松は2020年に新聞で連載されていた原作を読んでいたと明かし、「アフターコロナのことがすべて書かれていた気がしました。自分たちが暗闇の中からどこに向かうのかであったり、あらゆる問題が拡張した世界から強いインパクトを受けて、これは同時代を生きる私たち自身の話だと感じました」と振り返った。
そして池松から原作を薦められたという石井は、「AIや、それに対面する人間の心の問題は比喩ではなく人類にとって喫緊の問題。AIが人類の知性を超えるかどうかばかりにフォーカスされていて、人間の尊厳がどう保たれるかという問いはほとんど議論されていないと思います。その潜在的にある不安や恐怖が小説として見事に描かれていたので、映像作家として今すぐに立ち向かわなければいけない。目を付けた池松くんもさすがだなと」と人工知能と人間の関係性について深い共感を示した。
また、池松が先駆けて原作に着目したことについて、石井から高い評価を受けている。
そして妻夫木は、池松について「(池松は)役に向き合うときは、役と同化するぐらい突き進む。感情の手綱をしっかり握れているなと思うし、監督が繊細なコントロールを現場でやっているのを目の当たりにして、やっぱりすごいなと思いました」と回想した。
妻夫木は石井監督との再タッグに安心感を覚えつつ、池松の演技力と監督の手腕に高い評価を与えている。
田中は、「AIとかVF(ヴァーチャルフィギュア)の仕組みはよくわからなかったけれど、監督のおっしゃることをそのまま受け取り、シンプルに演じられたらなと」と述懐した。
また、「池松さんとはセリフ以外ほとんど話していなくて……目があってもちょっとぎこちない(笑)」と思い返していた。
一方の石井は、「レジェンドである田中さんにVFの役で出ていただけたのはありがたかった。それによってほかの俳優にもいいムードや緊張感が生まれていましたし、最高のチームだったと思います」と自信をのぞかせた。
一方の石井は、田中の出演が他の俳優にも良い影響を与えたと評価しており、チーム全体としての高い士気を感じ取れる。
そのイベントの中盤、水上がリアルアバターとしてステージ上を自撮り棒で撮影する一幕があった。
一方の池松は、自身のエピソードとして「韓国に行ったときにサムゲタンが食べたくてスタッフにお店へ連れて行ってもらったら、僕が食べたいのはサムゲタンでないことに気付いて……。でも言えなかった」と打ち明けた。
そして「今なら聞いてみたいという本心はあるか?」という質問には「優れた俳優ほど本心ってわからなくて……」と切り出し、「三吉さんはプロフェッショナルだけど何を考えているかわからないし、水上くんもピエロに見えてくるときがある」と告白した。
最後に石井は、「AIやVFを題材したことで新しいエモーションを表現できた一方、人間がずっと大事にしてきた普遍的な感情も浮き彫りになる。情熱のある俳優が真摯に役と向き合ったことで神々しいものが生まれて、きっとお客さんにも届くと信じています。ぜひ楽しんでください」と挨拶した。
そして池松は、「堅苦しい映画でも難しい映画でもなく、私たちの周りにある世界共通のトピックが入った作品です。登場人物が”いかにして生きるか”という映画になっています」とアピールし、イベントを締めくくった。