日本文学界の巨人・筒井康隆の同名小説を『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の監督・吉田大八が映画化した新作映画『敵』が、1月17日より全国公開される。
本作の主演には、『ザ・中学教師』(92)で初主演を飾り、『ひき逃げファミリー』(92)で第47回毎日映画コンクール男優主演賞、『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(97)で第21回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、1974年にフランスで俳優デビューしてから実に50年、名優として日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚京三。2013年公開の『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』以来、12年ぶりの主演映画となる。
“理想の上司像”の印象も強い長塚が、本作では元大学教授・渡辺儀助を演じ、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子には瀧内公美、亡くなってなお儀助の心を支配する妻役には黒沢あすか、バーで出会い儀助を翻弄する謎めいた大学生には河合優実。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩ら実力派俳優陣が脇を固める。今回解禁された本編映像では、77歳の儀助が祖父の代から続く日本家屋で、ひとり丁寧に淡々と暮らす毎日のある朝の一幕が映し出される。自ら高級ハムで朝食を作り、食す。杜仲茶のお茶漬けで締める。歯を磨き、洗濯をし、食器を洗い箒で掃除をする。食後のコーヒーは自家焙煎。その姿はいたってシンプルな日常のひとコマでありながら、モノクロの映像や静謐な中でのひとつひとつの音によって、観る者を没入させ魅了していく。また本作では、まるで儀助の分身のようにも感じられる、古風な日本家屋も見どころのひとつ。映画全体を読み解くのに重要な、吉田監督の解釈が込められている儀助の家は、ロケセットではなく、築100年以上の文化遺産レベルともいえる実際にお住まいのお宅。そんな日本家屋での撮影について吉田監督は「撮れば撮るほど豊かな“表情”を見せてくれるこの家が、もう一人の主人公のような存在感を出してくれたと思います」と話す。先んじて行われた一般試写でも「独特な雰囲気があって素晴らしかった」「陰影の中でこそ映える日本古来の建築が、息を呑むほどに美しい」と絶賛の声が上がってる。
『敵』
渡辺儀助、77歳。大学教授の職を辞して10年──妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋に暮らしている。料理は自分でつくり、晩酌を楽しみ、多くの友人たちとは疎遠になったが、気の置けない僅かな友人と酒を飲み交わし、時には教え子を招いてディナーを振る舞う。預貯金が後何年持つか、すなわち自身が後何年生きられるかを計算しながら、来るべき日に向かって日常は完璧に平和に過ぎていく。遺言書も書いてある。もうやり残したことはない。だがそんなある日、書斎のiMacの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。
出演:長塚京三、瀧内公美、河合優実、黒沢あすか、中島歩、カトウシンスケ、髙畑遊、二瓶鮫一、髙橋洋、唯野未歩子、戸田昌宏、松永大輔、松尾諭、松尾貴史
脚本・監督:吉田大八
原作:筒井康隆「敵」(新潮文庫刊)
企画・プロデュース:小澤祐治
プロデューサー:江守徹
制作プロデューサー:石塚正悟
企画・製作:ギークピクチュアズ
制作プロダクション:ギークサイト
日本公開:2025年1月17日(金)テアトル新宿ほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ、ギークピクチュアズ
製作:「敵」製作委員会
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