テレンス・マリック監督作『天国の日々』の4Kレストア版が、4月4日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開されることが決定した。
1978年に製作された本作は、20世紀初頭のテキサスの壮大な農場を舞台に、人間の弱さともろさを美しい映像で描いたマリックの監督第2作。第32回カンヌ国際映画祭では監督賞、第51回アカデミー賞では撮影賞を受賞した。日本では、約5年後の1983年に劇場公開された。
監督を務めたのは、『バッドランズ(地獄の逃避行)』で初メガホンを取り、『シン・レッド・ライン』や『ツリー・オブ・ライフ』などで数々の賞を受賞し続けているマリック。この作品に全てを注いだマリック監督は、次回作の『シン・レッド・ライン』までの20年間、1本も映画を撮らなかった。
また、本編の夕暮れ時のシーンは全て、“マジック・アワー”と呼ばれる、1日にわずか20分しかない日没間近の柔らかい光の中で撮られ、本編のほとんどをこの時間に費やすという極めて異例の方法で撮影された。撮影を手がけたのは、エリック・ロメール監督作品に多数参画し、フランソワ・トリュフォーらヌーヴェルヴァーグの作品でも撮影監督を務めたネストール・アルメンドロス。2人の狙い通り、絵画のような美しい画作りに成功したが、その極度なこだわりのため、スケジュールや予算は大幅に超過。プロデューサーのバート・シュナイダーは自宅を抵当に入れたという。アルメンドロスは、次回作が控えていたため、ハスケル・ウェクスラーに撮影監督を引き継ぎ完成させた執念の一作となった。
今回の4Kレストア版は、マリック監督本人監修のもと4Kレストア化。ここ数年の間で劇場公開が急増した4Kと、これまでの2K素材の違いについて、国立映画アーカイブの主任研究員・岡田秀則は「画面の肌理が違う。デジタルスキャンによる解像度は、4Kでようやく化学分子からなる35mmフィルムのレベルに達する」とコメント。加えて、従来のフィルム映写機とDCP(現在主に使用されるデジタル上映素材)の違いについて、「劇場の暗い環境で鑑賞することで、グラデーションの違いがよく分かる」と解説している。画面の中にある繊細さを遺憾なく発揮し、逆光を巧みに扱うことで“ヨーロッパの光”をアメリカ映画に持ち込んだとされるアルメンドロス。本作の魅力が一番発揮されるのは、設備が整った劇場のみだという。
あわせて公開されたティザービジュアルでは、本作を象徴するマジック・アワーを背景に、農場主の家と逆光に照らされた人々が描かれている。また場面写真では、リチャード・ギア演じる主人公のビル、ブルック・アダムス演じる恋人のアビーなど登場人物たちのカットのほか、美しい風景が切り取られている。
『天国の日々 4K』
4月4日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
出演:リチャード・ギア、ブルック・アダムス、リンダ・マンズ、サム・シェパード、ロバート・J・ウィルク、ステュアート・マーゴリン
監督・脚本:テレンス・マリック
製作:バート・シュナイダー、ハロルド・シュナイダー
撮影:ネストール・アルメンドロス、ハスケル・ウェクスラー
美術:ジャック・フィクス
音楽:エンニオ・モリコーネ
配給:アンプラグド
1978年/94分/アメリカ/原題:Days of heaven/カラー/5.1ch/1.85:1
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