映画

『化け猫あんずちゃん』ティーチイン@日本大学芸術学部

ティーチイン付き大学生試写会
日時:7月11日(木)
場所:日本大学芸術学部
登壇:久野遥子監督、山下敦弘監督
MC:奥野邦利教授(映画学科)

熱狂的ファンを持ついましろたかし氏による漫画「化け猫あんずちゃん」がアニメーション映画化!久野遥子・山下敦弘がW監督を務め、俳優の森山未來が主人公の化け猫の声と動きを担当し、第77回カンヌ国際映画祭「監督週間」にて公式上映され、アヌシー国際アニメーション映画祭2024 長編コンペティション部門へ正式出品された、世界中から注目を集める映画『化け猫あんずちゃん』が7月19日(金)より全国公開となります。

この度、7月11日(木)に日本大学芸術学部にて久野遥子監督・山下敦弘監督のティーチイン付き大学生試写会が行われました。

日本大学芸術学部の学生向けに実施された試写会後。
映画学科の奥野教授により監督が呼び込まれ、大きな拍手のなか、久野遥子監督と山下敦弘監督が登壇。

役者たちの演技を実写で撮影したのち、それをトレースなどするロトスコープの手法でアニメ化された本作。元になった実写とアニメの比較映像を流すと、映像のシンクロに会場では驚きのどよめきが。撮影行程について山下監督は「実写はもうまんまですね。森山(未來)くんに猫の耳をつけてもらったくらいです。あとは久野さんが手書きで描いてくれました。よく見ると細かい仕草とかも拾ってくれています」とコメントし、続けて「実写の映像をアニメにするうえで、久野さんがもう一度演出をしているという印象です。どこを拾っていくかということで、より狙いが明確になっているような気がします。実写ってすごく情報量が多いのですが、それをアニメにしていくなかで、もう一度整理されていく感じです」と解説。また、久野監督は「山下さんはお芝居をすごく大切にする方でした。役者さんのお芝居が決まってから、全てのカット割などが決まっていくという流れが、アニメではできないところです。お芝居ファーストというか、お芝居の良さを元に色々なものができていくという過程がすごく面白かったです」とロトスコープならでわの制作について語った。
『化け猫あんずちゃん』ティーチイン@日本大学芸術学部
また、W監督であるが故の難しさもあるなかでの仕事の進め方について話が及ぶと、山下監督は「お互い自分の持ち場があって、僕は撮影現場のOK・NGを判断する、アニメ作業に関しては全ての判断は久野さんがする、というのがありました。共同監督ではあるのですが、作業内容が違うというのがあったので、うまく進めていけたのかと思います。アニメ作品なので、最後に仕上げるのは久野さんです。久野さんがまず目指したいところがあって、そこに関しては信頼して任せていました」、久野監督は「「任せてもらえるところは任せてもらっていたと思います。実写をアニメにしていくなかで、印象が変わってしまう部分もあったと思うのですが、その辺りは山下さんが尊重してくださいました」と信頼関係があったなかで作品が作り上げられていったことが語られます。奥野教授からは「お互いを信頼して共同で作品を作るということは聞いていると簡単に聞こえるが非常に難しいこと」と、驚いた様子。この作品が絶妙な奇跡のバランスのもとに成り立った作品であることが感じられた。

学生たちからの質問コーナーでは、あんずちゃんの声と動きを担当した森山未來と化け猫であるあんずちゃんのキャラクターデザインは等身からして全く違うので、その点の難しさについて質問が投げかけられると「等身だったりが全然違うという難しさはもちろんあったのですが、ただ森山さんのお芝居がとても素晴らしくて、絵に起こすうえで悩むところがなかったです。全部あんずちゃんとして演じてくれているので、無駄な動きがなくて。アニメーターさんたちも森山さんのお芝居のパートは描きやすかったと言っていて、それは特殊だったと思います」と久野監督は森山未來の芝居を絶賛。また、本作のなかでの山下監督の作家性についての質問が挙がると、山下監督は「僕は映画を作るうえで一番自分がやる意味があるパートは演出だと思っています。今回の作品でいうと、役者やキャラクターを魅力的に見せるというところです。そこは自分の意図が生かされていると思っていて、最終的なアニメの映像にも残っていると思います」と全編アニメ映画になったなかでも感じられる残る、山下作品らしさについてコメント。

また、普通の人生を送ってきた人間が面白い物語を書けるのかという学生の悩みに対し、山下監督は「絶対書けます。それこそコンプレックスであったり、そういったものをバネにすることができます。何もないから出てくるものもあると思うので大丈夫です!」、久野監督は「あんずちゃんも何でもない話といえば、何でもない話です。田舎に住んでいる人からしたらすごくありふれた風景だと思うのですが、それこそ海外の映画祭では、これってどういう意味なの?とすごく興味を持たれたりしました。自分がありふれていると感じているものが、本当にありふれているとは判断できないものです」と力強くエールを送り、温かい雰囲気のなかティーチインイベントは幕を閉じました。

2024年7月19日(金)全国公開

監督:久野遥子・山下敦弘
原作:いましろたかし『化け猫あんずちゃん』(講談社 KCデラックス 刊)
キャスト(声・動き):森山未來 五藤希愛
青木崇高 市川実和子 鈴木慶一 水澤紳吾 吉岡睦雄 澤部 渡 宇野祥平
制作プロダクション:シンエイ動画×Miyu Productions
脚本:いまおかしんじ 音楽:鈴木慶一 編集:小島俊彦
キャラクターデザイン:久野遥子 作画監督:石舘波子 中内友紀恵
美術監督& 色彩設計:Julien De Man コンポジット開発:Guillaume Cassuto
撮影監督:牧野真人 CG監督:飯塚智香 音響監督:滝野ますみ
実写撮影協力:マッチポイント
撮影:池内義浩 録音:弥栄裕樹 スタイリスト:伊賀大介
主題歌:「またたび」佐藤千亜妃(A.S.A.B)
プロデューサー:近藤慶一 Emmanuel-Alain Raynal Pierre Baussaron 根岸洋之
製作:化け猫あんずちゃん製作委員会
配給:TOHO NEXT

公式サイト:
https://ghostcat-anzu.jp