第69回べルリン国際映画祭で銀熊賞(アルフレード・バウアー賞)とベルリナー・モルゲンポスト紙読者審査員賞の2冠に輝いた「Systemsprenger(原題)」が、「システム・クラッシャー」の邦題で4月27日よりシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開されることが決定した。特報とティーザーポスターが披露された。
監督・脚本を手掛けたのは、Netflix映画「消えない罪」、「The Outrun(原題)」で注目を集めたノラ・フィングシャイトで、本作が長編映画デビュー作となる。邦題に使われた“システム・クラッシャー”とは、行く先々で問題を起こし、施設を転々とする制御不能で攻撃的な子供たちを指す言葉。フィングシャイト監督はホームレスのための避難所生活を描いたドキュメンタリーの撮影中に、その存在を知り、教育支援学校、緊急収容センター、児童精神科病棟などの関係者に取材を重ね、現場を体験しながら5年間のリサーチを経て映画化した。
9歳の少女ベニーは、幼少期に父親から受けたトラウマから、手の付けようのない暴れん坊と化し、里親、グループホーム、特別支援学校、どこに行っても問題を起こして追い出されてしまう。そんなベニーのたった1つの願いは、「ただ、ママのもとに帰りたい」というものだった。しかし、ベニーの母は娘に愛情はあるが、どう接すればいいのか見当がつかず、施設に押し付け続ける。そんな中、非暴力トレーナーのミヒャは、山小屋で3週間の隔離療法を受けさせることを提案。初めは文句を言っていたベニーだが、徐々にミヒャに心を開き始め、ある変化が起きる。
本作は、第69回べルリン国際映画祭でワールドプレミア上映され、10分間のスタンディング・オベーションを受け、2020年ドイツ映画賞では作品賞、監督賞、脚本賞、俳優賞、女優賞を含む8部門を受賞。第92回アカデミー国際長編映画賞ドイツ代表作品にも選出され、世界各国の映画賞で37冠に輝いた。ドイツ本国では19年9月に劇場公開され、観客動員数20万人を突破する大ヒットとなった。
ベニー役を演じたヘレナ・ゼンゲルは2008年生まれで、撮影当時10歳。全身全霊の慟哭で周囲を絶望に追い込む強烈な役どころを演じ切り、2020年ドイツ映画賞の主演女優賞を歴代最年少で受賞した。ゼンゲルは本作出演後、トム・ハンクス主演作「この茫漠たる荒野で」で第78回ゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネートされたほか、A24製作の「The Legend of Ochi(原題)」にも出演が決定している。
ミヒャ役は「西部戦線異状なし」で英国アカデミー賞にノミネートされたアルブレヒト・シュッフが担い、ベニーを担当するソーシャルワーカー役でガブリエラ=マリア・シュマイデが共演した。