登壇者:門脇 麦/ヤンジュンメイ役、シャオ・ヤーチュエン監督
MC:奥浜レイラ
昨年の東京国際映画祭で本作のワールド・プレミア上映が行われた丸の内TOEIが、この日の会場となった。その後、台湾での公開を経て、再びこの劇場に戻ってきたことになる。シャオ監督は、「この映画館はワールドプレミアが行われた場所であり、自分の夢がかなった場所でもあります。だから再びここで上映できることはまさに祝福だと受け止めています。日本で成功することを願っています」と感激の表情を見せた。
門脇も、「日本で公開されることをうれしく思います。わたしも10代の頃から台湾映画に触れてきて、本当に台湾映画が大好きなので。今でも本当に自分が参加したのだろうかと思うくらい実感が沸かなくて。夢のまた夢だったので、本作に参加できたこと、本当にうれしく思います」と笑顔を見せた。シャオ監督は、門脇にオファーを出した理由について、「かつてホウ・シャオシェン監督の仕事をさせていただいていたんですけど、その頃に何度もホウ監督から『君も機会があったら日本の方と一緒に仕事したらいいよ』と言われていました。ホウ監督は日本の俳優と仕事をした経験があったので。彼から薦められたのがきっかけでしたね」と明かした。
また、シャオ監督は、プロデューサーの小坂さんと出演者について話している時に、たまたま日本の俳優で誰かいい人はいないか? という話になった際に、Netflixの『浅草キッド』を観たことがあり、門脇さんにお願いしたらどうかと提案したと述べた。「まなざしがすごい芝居をされているなと思ったので、今回ご一緒できて本当にラッキーでした」と述懐した。
門脇は、「台湾でもサブスクが流行っていて日本の作品を観てくださっている方も多くて。あれを観ましたとか、台湾ではこのドラマが流行っているんですよとか、共通の話題がもてる。やはりグローバル化というか、壁やハードルが、なくなっていくといいなと思っていましたね」と感じたと語った。
門脇は、台湾での撮影を振り返り、「しあわせでした」と述べた。彼女は中国語の勉強期間が短かったため、文法を勉強する時間がなく、セリフを丸暗記するしかなかったと語った。その結果、相手のセリフを聞いて、自分のセリフをしゃべる瞬間があったという。
彼女は80年代や90年代を生きた台湾の女性の役を演じたが、「役者というのはそういうもので、自分の想像だけでは越えられないもの」と述べた。それでも彼女は役の重要なエッセンスを抽出し、自分とリンクさせることで役を演じたと語った。役者の仕事はそこにあり、技術や撮影方法があるため、彼女はある程度の不安を感じなかったと述べた。
彼女はシャオ監督とのコミュニケーションが英語であったことを明かしたが、「不思議なことに、共通言語があるというか。目と目が合うだけで伝わるものがあって。言葉が伝わらないからこその、第五感、第六感でつながった感じがあるなと」と述べた。彼女は過去にヨーロッパ圏の監督とも仕事をしてきたが、言葉が通じないことでさえ、目や感覚を通じてコミュニケーションが可能であると感じたと述べた。
本作で主人公の父タイライを演じたのは、台湾の実力派俳優リウ・グァンティンである。門脇は、彼について、「顔合わせがコロナの関係でリモートだった」と述べ、「その中に1ミリも微動だにしない人がいて、そのお顔があまりにも美しくて、彫刻を映しているのかなと思うくらいだった。なんならその時のリモートを映すだけで映画が撮れるんじゃないかと思うくらいの存在感を感じた」と振り返った。
シャオ監督も、「皆さん初顔合わせなので、少し大人しくかしこまっていたが、麦さんはそんな中でも全然かしこまってなかった。その時から好きな人だなと思っていました」と述べている。
撮影スタイルの違いについて、門脇は、「ワンシーンにかけられる時間のかけ方が違う。食事にかける時間もしっかりとっていたし、ケータリングのごはんもあたたかかったので。そこが日本とまったく違っていて、驚いた」とコメントした。シャオ監督も、「自分としては正直、いつも通りに撮っていたので、わざと遅く撮ったわけではないんです。ただ出演者の麦さんが気持ち良く出てもらえたなら良かった」と述べ、安堵の表情を見せた。
本作の主人公であるリャオジエが11歳であることから、「11歳の時にはどんな風に過ごしていたか?」という質問が投げかけられた。門脇は、「いろんなことを考えていた11歳だったなと思いますね」と振り返り、「人生は何が大切なのか、何のために生きているのか」という漠然とした疑問を抱き、本を読んだり、偉人の名言集を読みあさる一方で、普通の子どもらしい遊びも楽しんでいたと語った。彼にとって、人生の意味や価値について考えることは、物心がついた時からの習慣であり、「アンパンマン」の歌詞や父親からの教えが影響を与えたという。
一方、シャオ監督も自身の11歳の頃について振り返り、「楽しく、シンプルな暮らしをしている子どもだった。貧しい家庭で育ったが、与えられた安心感を持ち、信じるものを信じる子どもだった」と語った。彼にとって、貧しさは身近なものであり、その中で生活していくことに対する思いを抱いていたと述べた。
また、本作がウーディネ・ファーイースト映画祭のコンペティション部門に出品されることが発表され、アジア圏からヨーロッパへの進出に期待が寄せられている。
終盤には、主演のバイ・ルンインとリウさんの魅力的な演技やまなざし、そして監督たちの掘り下げた視点が話題となった。登壇者たちは、映画とそのストーリーを支える深いまなざしや輝きについて言及し、その温かさや広がりに触れたことを感謝の意を表した。公開までの期間が少し残っているが、観客が映画を楽しんでくれることを願っていると述べ、日本の映画館での上映は貴重な機会であるため、多くの人々に観てもらいたいと呼びかけた。シャオ監督も、人々の気持ちを察する能力が失われないよう願い、この映画が選択に関するテーマを掲げていることから、観客が喜んでくれることを期待していると訴えた。
『オールド・フォックス 11歳の選択』作品情報
公開日 | 2024年6月14日公開予定 |
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キャスト | 監督:シャオ・ヤーチュエン 出演:バイ・ルンイン リウ・グァンティン アキオ・チェン ユージェニー・リウ 門脇麦 |
配給 | 東映ビデオ |
制作国 | 台湾=日本(2023) |
上映時間 | 112分 |
公式サイト | https://oldfox11.com/ |
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