映画監督/写真家の奥山由之が自主制作でつくり出したオムニバス長編映画『アット・ザ・ベンチ』が11月15日より東京・大阪の3館で上映がスタート。メイン館のテアトル新宿では2024年の動員数No.1となり、年が明けて公開から2ヵ月以上が経った現在も全国各地で上映が続き、大ヒット公開中だ。
1月19日(日)、テアトル新宿での9週間にわたる異例のロングラン上映を記念して、都内では今年初となるトークイベントが開催! [第1編・第5編]脚本の生方美久、[第2編]脚本の蓮見 翔、[第3編]脚本の根本宗子、そして[第4編]脚本も手がけた監督の奥山由之が登壇。これまで数多くのトークイベントを行ってきた『アット・ザ・ベンチ』だが、脚本家の4人が勢ぞろいするのはこの日が初。この貴重な機会に、場内は期待に目を輝かせた観客で満員御礼。そんな熱気溢れる雰囲気の中、奥山監督を含めた4人がステージに登場すると大きな拍手が鳴り響いた。
「お三方とも脚本家として、つくり手として尊敬している大好きな方々なので。自主制作というイレギュラーな体制であるにも関わらず、オファーを受けていただけたということが、改めてとても幸せだなと実感しています」としみじみと語る奥山監督。
自主制作ということで、脚本家陣には奥山監督が自らオファーを出したということで、「根本さんは元々友人で、お話をする機会があったのですが、生方さんと蓮見さんはお会いしたことがなくて。SNSでいきなり連絡をさせていただいたんです」と振り返った奥山監督に向かって、蓮見と生方が口々に「いきなりだったから怖かった!」と正直な思いを述べて会場は大笑い。
「急に知らない人からDMで連絡があって。この人誰なんだろうと思ったけど、やけにフォロワーがたくさんいるなと思って。友だちに聞いたら、めっちゃすごい人じゃんと言われたんですけど、そこから半年くらい返事を無視しちゃいました」という蓮見の告白に、奥山監督も「昨日も広島で一日中一緒にいたんですが、その時はぜんぜんそんなことを言ってくれなくて。僕のことを知らなかったというのは今日初めて聞きました」とつぶやきはじめ、そんな姿に会場も大笑い。
この三人に全幅の信頼を寄せているという奥山監督。根本とは映像としてのリズムやスピード感、疾走感の大事さを共有したといい、生方とは登場人物の設定や背景を話し合い、さらに蓮見とはセンテンスやセリフの足し引きを重点的に話したと、それぞれとの制作過程の違いを述懐。そんな中、根本が「どの一編も空気感が違うし、役者さんが表現していることがたくさん映像に詰まっていると思うんですが、その中でも蓮見さんの脚本がやる役者によって一番変わってくると思う。あの役が荒川さんじゃなかった場合を想定してみると全然違いますよね」と質問すると、「そうですね。荒川さん以外で、ああいうふうに笑ってもらうようにするのは難しいかも」と振り返った蓮見。キャスティングが決まった上で脚本を書くことができたということで、「やりやすかったですね」と振り返る。
もともと本作は動画共有サイトのVimeoで1編と2編が配信されていて、劇場版を公開するにあたり、新作となる3編、4編、5編を追加して制作されたものとなる。そんな制作過程から、3編の脚本を書いた根本も「いつ公開されるか分からないまま脚本をお渡しして。いつ撮るんだろうと思っていたんですけど、撮影日も連絡なかったので(笑)」という話にビックリした様子の奥山監督。「きっとものすごく大変なんだろうなと思っていて触れなかったんです(笑)。だから完成品を観させてもらって良かった」と根本が続けると、「うわぁ、そうでしたっけ……」と自分自身に落ち込む奥山監督。
しかし、最初のオファーの時に、奥山監督から思いの込もった長文の手紙を受け取ったことを思い出した脚本家陣は、皆口々に「いやいや、そういえば丁寧でした!」となぐさめはじめて会場に笑いが続いた。
終始和やかなムードで進んだこの日のトークイベント。最後には奥山監督があらためて「今回、心からご一緒したいと思った方々に対して、”こういう理由で、他の誰でもない、あなたでなくてはならない”という想いを真摯に熱意を込めて伝え続けた結果、こんなにも作り手たちの愛情が宿る、温かな質感の作品が完成するんだということに自分でも驚きましたし、自信にもなった。この作品を一緒につくりあげてくださって、本当に心から感謝しています」と感謝の思いを述べていた。
監督:奥山由之
出演:広瀬すず(第1編・第5編)、仲野太賀(第1編・第5編)、岸井ゆきの(第2編)、岡山天音(第2編)、荒川良々(第2編)、今田美桜(第3編)、森七菜(第3編)、草彅剛(第4編)、吉岡里帆(第4編)、神木隆之介(第4編) 脚本:生方美久(第1編・第5編)、蓮見翔(第2編)、根本宗子(第3編)、奥山由之(第4編) 音楽:安部勇磨
企画・製作:奥山由之
プロデューサー:佐野大
撮影:今村圭佑 録音:佐藤雅之 美術:野田花子
衣裳:伊賀大介 ヘアメイク:小西神士/くどうあき
編集:平井健一/奥山由之
助監督:鈴木雄太 制作担当:神谷諒
カラリスト:小林千乃
オンライン編集:土屋瀬莉
グラフィックデザイン:矢後直規
配給宣伝協力:池田彩乃
制作・配給:SPOON
2024年/日本/86分/カラー/ビスタ/5.1ch/英題:AT THE BENCH
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