本書は北海道東部の架空の地方都市を舞台に、主人公の女子高生・湊が、同級生の間で連鎖する死の真相を解き明かしていくミステリーです。陰惨な出来事が連続しながらも読者を離脱させない物語のテンポ感と、会話表現など現代の高校生の雰囲気を表す描写の巧みさが評価され出版に至りました。著者の上田春雨さんは現役の新聞記者で 、本書が作家デビュー作となります。
『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリー&エンターテインメント作家・作品の発掘・育成を目的に、2002年に創設した新人賞です。受賞作品だけでなく、編集部推薦の作品を改稿を重ね文庫刊行する「隠し玉」シリーズからも『死亡フラグが立ちました!』『珈琲店タレーランの事件簿』『スマホを落としただけなのに』など、映画やドラマなど映像化されるヒット作を生み出しています。
~あらすじ~
北海道のある町で暮らす女子高生の湊。継母と険悪な関係である彼女は、早く自立するためにパパ活をしている。 ある日、湊の友人・飛鳥のスマートフォンに、事故死した中学時代の友人・美保から「死ね」というメッセージが届く。それから間もなくして飛鳥は非業の死を遂げ……。彼女の死は、死んだ美保の呪いによって引き起こされたのか? 湊の周囲で連鎖する死の真相とは!?
- 孤高のダークヒロインが活躍するイヤミス系ハードボイルドの快作――大森 望(翻訳家・書評家)
作中でも言及される『着信アリ』のような超自然ホラーを思わせる展開だが、主人公の湊は徹底的な合理主義者であり冷徹なリアリスト。目的のためには手段を選ばず、いじめにも平気で加担し、SNSを使った裏工作も躊躇なく実行するが、超自然的な力は信じていない。
本書は、その彼女が持ち前の頭脳と人脈を駆使して女子高生連続不審死事件の謎を解く本格ミステリ――かと言う
と、そうでもない。たしかに謎解きの要素はあるが、小説の 後半になると、探偵役だったはずの湊がどんどん窮地に追い込まれていく。湊は絶体絶命の状況下でも動じることなく自分を貫き、(自分にとって)最善の解決策を模索する。(中略)どう考えても脱出ルートのなさそうな八方塞がりの状況を湊がどう切り抜けるか。事態の深刻さとは裏腹に、本書には一種のゲーム的な面白さがある。(本書解説より抜粋)
いつも頭の中は半分、空想に浸って生きてきました。
狂おしいほど活字が好きだったので、新聞記者になりました。
でも、現実にあったことしか書いてはいけないし、基本的に現実は痛いし辛い。
なので、小説を書くことにしました。家族が寝静まった真夜中に、ガリガリ妄想を綴る。そんな深夜の狂気が結実したのは感慨深いです。
主人公をこれでもかというほど酷い目にあわせましたが、彼女は地獄の歩き方を知っているので、きっとうまくやるでしょう。読み終わった時には、奇妙な解放感があると思います。
上田春雨(うえだ・はるさめ) ★著者取材・出演 相談可能です!
1986年、北海道帯広市生まれ。筑波大学社会学類卒業。現在は記者として新聞社に勤務。
二人の子を持つワーキング・マザー。第22回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉として本作でデビュー。
宝島社文庫『呪詛を受信しました』
発売日:2024年7月3日
定価:800円(税込)
https://tkj.jp/book/?cd=TD056696