今、観るべき“本気”のドキュメンタリーをスクリーンで届ける「TBSドキュメンタリー映画祭」。2021年からスタートし、これまで東京・大阪・名古屋・京都・福岡・札幌の6都市で着実にファンを拡大。
テレビやSNSでは伝えきれない“声なき声”を届ける場として、各地で熱い反響を巻き起こしてきました。今年の映画祭では、「ソーシャル・セレクション」「ライフ・セレクション」「カルチャー・セレクション」の3部門に加え、戦後80年という節目に合わせた「戦後80年企画」も実施。
歴史的事件から市井の人々の日常まで、あらゆる現実にカメラを向け続けてきた制作者たちの熱量が詰まった全17作品を上映しております。
『劇場版 クマと民主主義』【@シアターキノ/札幌】
【登壇者】幾島奈央監督、佐藤喜和酪農学園大学教授
【司会】 波多野裕太アナウンサー

幾島監督は、クマによる被害で大切な人を失った方々が、「同じことを繰り返してほしくないからと取材に応じてくださいました。映画で知ってもらうことで、防げるはずのクマの出没や被害を無くしていけたら」と取材を続ける思いを明かしていました。
クマ対策は、現れた時の駆除だけでは効果は期待できません。地域の実態に合わせた周到な計画こそが大切だと主張するのは、ヒグマ生態研究の第一人者、佐藤喜和教授(酪農学園大学)。佐藤教授は、ヒグマの暮らす森林で調査を続け、集落に通い、足で成果を出す研究者です。「研究を始めた30年前には、クマ問題が映画になるとは想像できなかった。温暖化などでクマが変わっていくので、人間社会も変わらなければならない。行政や猟友会に任せるだけではなく、自分ごととして対処することでクマとの共存につなげたい」と信念を語っていました。
映画とイベントを通して、クマ対策は環境保護と生活といった単純なものでもなく、合意形成、歴史、人々の役割、感情などの要素が複雑に、幾層にも重なり合うものだと理解できます。同時に、クマがヒトに、民主主義への問いを投げかけているのでは?と考えてしまう意味深さも感じます。
イベント終了後、幾島監督のもとには「クマ注意‥の看板が家のそばにあるのできちんと知らなければと映画を観に来た、とても考えさせられた」、「クマへの対応に苦労しているので応援になりました。ありがとう」と声をかけるお客さんもいらっしゃいました。
様々なクマ情報を発信する幾島監督が編集長をつとめるWEBマガジン「Sitakke したっけ!」にはクマに関する連載記事「くまさん、ここまでよ」が掲載されています。また「クマここ」はクマ情報に特化したサイトです。幾島監督は「北海道以外の全国の方にも、映画やネット情報を通してクマとの共生を理解してもらいたい」と呼びかけています。
Sitakke したっけ! https://sitakke.jp/
連載記事「クマさん、ここまでよ」 https://sitakke.jp/tag/285/
HBC北海道放送「クマここ」 https://www.hbc.co.jp/contents/kumacoco/
〈『劇場版 クマと民主主義』作品情報&上映スケジュール〉
4/07(月)18:30 @シアターキノ
4/09(水)18:40 @シアターキノ
『労組と弾圧』【@アップリンク京都/京都】
【登壇者】伊佐治整(ディレクター、MBS)、望月衣塑子(東京新聞記者)


満席の会場に拍手で迎えられ登壇。ゲストの望月さんが「逮捕者数自体にも驚きましたが、これほど多くの人が無罪となった労働弾圧の事件を東京のマスメディアが報じてこなかったことを恥じた。そしてこの歴史を伝える作品を自分と同世代の伊佐治さんが作られた、こういう作品こそ全国展開となってくれたらいいなと思ってみていた。」と映画本編の感想を語ると、伊佐治ディレクターは「関生の事件に当初から強い関心があったわけではない、正直、むしろつい後回しにしてしまう事件だったと思う。自分は竹信三恵子さんの発信をきっかけに一気にスイッチが入った形だが、取材し始めるとこれほどの事件を取り上げてこなかったことに忸怩たる思いがした」と思いを綴った。
望月さんは「ただ、だからこそ事件の顛末、ここまでの無罪を出しているという重い事実も捉えることになった」とし、これまで見過ごしてきてしまった事実を悔いつつ“ここから”改めて労働者の権利を考え、取り戻すときが来たのではないかと結んだ。
〈『労組と弾圧』作品情報&上映スケジュール〉
4/9(水)12:15 @テアトル梅田
『誰のための公共事業~ギロチンが宝の海を壊した〜』【@キノシネマ天神/福岡】
【登壇者】里山千恵美監督、平方宣清(出演者)

真正面から丹念に、長期に亘り取材を続けた里山千恵美監督は、「RKBに残っている豊かだった時代の有明海の映像を見て、この問題に対して黙っていることは出来ないと思いました」と取材を始めた動機を熱く語りました。映画の視点について「取材現場で感じたこと、確信した思いのまま、あからさまに漁業者側に立って、この事業は本当に正当なものなのか、大きな声で問いたいと思い制作しました」と、タイトル「誰のための公共事業」にも繋がる問いかけを説明し観客を頷かせました。
ゲストで映画にも登場し、かつて"宝の海"の象徴、二枚貝「タイラギ」を採っていた佐賀県太良町の漁師の平方宣清さんは、巨大な国や県などとの訴訟に翻弄される当事者にもなってしまいました。現在の境遇を「有明海の漁業が大変厳しい状況を多くの方に知っていただきたい」と説明し、「干拓事業は、漁業者だけでなく、地域に暮らす様々な人たちの生活、地域の産業を潰してしまったら、人は生活することが出来ない」、「事業を行った国の無責任な姿勢には本当に憤りを感じる」と訴えました。
全国ニュースで、過去幾度も取り上げられた干拓問題は、法的には「一応の」決着をみたかたちです。しかし、そこに生きる人の生活が終わったわけではありません。
平方さんが「宝の海を取り戻すためにこれからも闘っていきたい」と決意を示すと、里山監督は「今回このような形で〝有明海の今”’を伝える機会があり、本当にありがたい。いつか漁業者が望む潮受け堤防の開門が叶った時に、この映画の映像が役に立ってくれたら嬉しい」と遠くを見つめました。
有明海の堤防問題は決して終わったわけではないと再認識する場になりました。
〈『誰のための公共事業~ギロチンが宝の海を壊した〜』作品情報&上映スケジュール〉
4/10(木)13:35 @キノシネマ天神
『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~』【@テアトル梅田/大阪】
【登壇者】津村有紀監督、
古川流唯、國村諒河、高垣博之、関優樹、永遠、加藤青空
【司会】 寺本晃輔さん(TBSコンテンツ戦略室)
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本映画祭7回目となる舞台挨拶は大阪で行われ、その1回目の舞台挨拶。沖縄旅行のシーンの際、足を負傷していた古川さんは「乗りたいものも乗れなくて悔しかった」と本音を吐露していました。沖縄に行けなかったチームは寮でピザパーティーだったのですが、普段頼めないものも注文出来て大満足だったそう。映画でここに注目して欲しいという話の中で、出てきたのが永遠さんの髪型問題。今日はばっちり髪型が決まってるという永遠さんですが、映画の中では髪型がシーンごとに変わっており、「強風に合った後のシンガーのVaundy(バウンディ)さんみたいだった」と古川さん。小辻さんが映画の中で細かい”コボケ”をしている箇所が随所にあるので、ぜひ、注目してほしいと話していました。
大阪がめちゃめちゃ好きだというリーダーの國村さんは「人柄がいいなーって。大阪にいるだけで明るくなれる街」だと語っていました。最後に、大阪が10回目の舞台挨拶だという津村監督は「うわべだけの付き合いが多い中、一歩踏み込んだ付き合いも大切だということを映画を通じて届けられたら嬉しいな」と語っていました。
本映画祭8回目、大阪2回目の舞台挨拶では、國村さんが数週間前に京都でイベントをしたときに出会った警備員さんが前作も観てくれており、今回もチケットを購入したと言ってくれたことを報告。「おじさんにも僕らの映画が刺さって嬉しかった」とファンが広がっている喜びを語ってくれました。
大阪で行きたいところや食べたいものが数えきれないくらいあるようなのですが、みんなでこれはおいしいと盛り上がったのが大阪のミックスジュースでした。関さんは自販機のミックスジュールを鞄に入るだけ買ったそう。
最後に津村監督は「みんなと過ごす時間が多くなればなるほど、みんなすごく優しいんだなって感じました。そんなみんなのやさしさが映画を通じて伝われば嬉しいです」と締めくくり、大きな拍手で舞台挨拶が終了しました。最後の写真撮影会では、会場からの連続シャッター音が響き渡りました。
〈『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~』作品情報&上映スケジュール〉
4/09(水)13:55 @アップリンク京都
4/10(木)13:10 @センチュリーシネマ
〈4月6日(日)実施舞台挨拶〉
『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~』【@キノシネマ天神/福岡】
【登壇者】津村有紀監督、
古川流唯、小辻庵、國村諒河、関優樹
【司会】 寺本晃輔(TBSコンテンツ戦略室)

本映画祭9回目の舞台挨拶は福岡で。この回でラストとなる舞台挨拶では各地でさまざまな出会いや再会があったと語る登壇メンバーたちですが、舞台挨拶冒頭、「イエーイ!」と喜びの声をあげたのは、福岡出身の小辻さん。「1年前にもこの場所に来たけれど、こうしてまた戻ってこられてうれしい」としみじみと語りました。
古川さん、國村さん、関さんからは博多名物を堪能した様子も語られ、「モツ鍋、串焼き、鯨も食べました!」とご当地グルメを大満喫。小辻さんおすすめのラーメンやクロワッサンを紹介する一幕もありました。
舞台挨拶中盤には、古川さんの“ホテル事件”が話題に。他のメンバーがベッド付きの部屋だった中、古川さんの部屋だけなぜか畳に布団。「俺だけお風呂もなくて、布団が真ん中に…しかもちょっと膨らんでいてホラー(笑)」と語ると、会場は爆笑に包まれました。「マジで怖くて、夜中4時に諒河(國村)くんの部屋に引っ越しました」と明かすと、國村さんも「夜中にガラガラってキャリーケースごと引っ越してきて(笑)」と振り返り、まさに“忘れられない福岡の夜”となった様子でした。
最後に、津村監督は会場を見渡しながら、次のようにメッセージを残しました。「本日はご来場いただきありがとうございました。(小辻)伊織くんがですね、10年後どうなっていたいですかって聞いた時に、『カラフルダイヤモンドとして生きていたいですし、誰1人欠けることなく』ということを言っているのですけれども。国とか状況とか環境とかっていうのは日々変わってはいきますが、そのとき、その瞬間の真実を映し出せていて良かったなと思っています。未来とか、明日とかってどうなるかわかんないんですけども、この今の瞬間、もうちょっと大切にしようとか全力で生きよう、みたいな。そんなきっかけになってもらえれば嬉しいです。本日はどうもありがとうございました。」
最後まで笑顔とあたたかさに包まれたキノシネマ天神での舞台挨拶。フォトセッションでは会場に大量のシャッター音が響き、名残惜しそうにマイクを握った國村さんの「これでラストだ!楽しかったっちゃんね。」という言葉で締め括られ、本作の“終着点”にぴったりのフィナーレとなりました。
〈『カラフルダイヤモンド~君と僕のドリーム2~』作品情報&上映スケジュール〉
4/09(水)13:55 @アップリンク京都
4/10(木)13:10 @センチュリーシネマ
『巣鴨日記 あるBC級戦犯の生涯』【@キノシネマ天神/福岡】
【登壇者】大村由紀子監督、冬至克也(出演者)

©︎TBS
『TBSドキュメンタリー映画祭 2025』
3月14日(金)〜4月3日(木) 東京・ヒューマントラストシネマ渋谷
3月28日(金)〜4月10日(木) 大阪・テアトル梅田
3月28日(金)〜4月10日(木) 愛知・名古屋センチュリーシネマ
3月28日(金)〜4月10日(木) 京都・アップリンク京都
3月28日(金)〜4月10日(木) 福岡・キノシネマ天神
4月5日(金)〜4月11日(金) 北海道・シアターキノ
公式サイト:https://tbs-docs.com/2025(外部サイト)
公式X:https://x.com/TBSDOCS_eigasai(外部サイト)